【感想】風に吹かれて

樋口明雄 / ハルキ文庫
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.6
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ブクログレビュー

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  • ありんこゆういち

    ありんこゆういち

    スタンドバイミーっぽい話好きなので楽しみにしていましたが、予想以上に心打たれてしまって、読み終わった時胸苦しい気持ちになりました。
    時は1970年代、山口県は岩国。米軍基地のある街で、少年少女たちの成長を追う物語で、なんだかんだ色々な人たちが書いている題材と何ら変わらないのに、どれもこれも胸をぐさぐさ刺してくるのかなあ。そういうお年頃になったという事なのでしょうか。

    小説家を目指す主人公モリケン、漫画家を目指すノッポ、エキセントリックなムラマサ、ミュージシャンを目指す転校生ミッキー。中学校2年生という多感な時期を駆け抜ける1年間が濃密でとても眩しいです。トラブルも山盛り有るけれど、信じられる友達がいるっていうのは本当に羨ましい。

    読み終わる頃、失われた自分の時間を思い返して胸がちくちくします。彼らが40年の年を経たように、僕らも過去を過ぎ去って今に立っています。別に昔に戻りたい事なんて一切ないのですが、それでも胸が疼く事は変わりないですね。思えば遠くに来たもんだと思う本です。
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    投稿日:2021.04.12

  • tomoyasu727

    tomoyasu727

    4.8
    もうとっくに跡形も無くなっていると思っていた。
    けれども、痕跡すら無くなっていたハズのその傷に触れられたら、やっぱり血が出て来て驚いた・・

    秘密基地で繰り広げられるおバカな日常・・
    エロ本やクラスの女子への狂騒と照れ隠しには、声を上げて笑った。(ただし自分の感覚では小学校6年位だったな)

    所々に流れる昭和の名曲達には思わずハミング。
    そして・・上関のキャンプである。

    すっかり暗くなった空の下で焚く、拾い集めた流木での焚火。
    食事を終え、する事が無くなってボーっと見つめる火床の描写が余りにもリアルな為、何十年も前の砂浜に意識が飛んで、その煙の匂いや明滅する熾を前にして涙が出ていた。
    オサゲが隣で微笑むのが、また涙が出るほど嬉しくて切ない。
    (僕等に無かったのはテントとオサゲ・・キャンプというより野宿やった。笑)

    ノッポが言う・・
    「俺らやっぱし、いつまでも子供でいられんのじゃのう」
    「ああやって傷ついたり、血を流したり、泣いたりして、少しずつ大人になっていくんと違うかのう」


    思えば、
    自分の人生で初めて「慟哭」という名の感情の在りようを経験したのも、友の死だった。
    本当の意味の「喪失」の想像を絶する残酷さも。


    ◯森木健一(モリケン)・・小説家を夢見る中二。ノッポ、ムラマサ、ミッキーの三人といつも秘密の基地でたむろす。イジメに遭う幼馴染・陽子に想いを寄せるが救う勇気が出ない。
    ◯北山登(ノッポ)・・モリケンの親友。マンガ家を目指す。父譲りのミノルタで写真を撮りまくる。漢気があふれる奴。
    ◯村尾将人(ムラマサ)・・母子家庭に育ち、破天荒な困った奴。中学生にしてアル中。拾ったバイクを器用に再生する。
    ◯幹本靖弘(ミッキー)・・東京から転校してきた垢抜けた男子。兄から貰ったギターでボブ・ディランを弾く。クラスで唯一ボウズでない。
    ◯松浦陽子(オサゲ)・・四人のクラスの女子。
    イジメを受け登校拒否に。モリケンの訪問をキッカケに立ち直る。
    やがて・・
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    投稿日:2019.09.06

  • オオヤマメ

    オオヤマメ

    モリマサと仲間たち5人のひと夏の記憶。まるで、自分もその仲間に入れてもらった様な読了感です。あ〜、仲間っていいな。少年の心を忘れずに持ち続ける世のオジサンたち、必読書です。

    投稿日:2018.12.03

  • ほし

    ほし

    所持/山口県岩国市を舞台に、1973年、中学2年のひと夏の思い出を描く。一生懸命で一途な友情や恋心にたまらなくどきどきしたり、切なくなったり。鳥肌が立つ場面が何度もあり、ページをめくる手が止まらなかった。一緒に夢をみていたような気分。けれど、現実をちゃんと受け止めなくてはいけない時がきて、大人にならざるをえない、それが妙に悲しくて、でもこの作品を読めてとてもよかった。
    今日出勤したら、勧めてくれた知人Cさんに、お礼を言わないと。
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    投稿日:2018.11.05

  • おおきに!(smoneyb)

    おおきに!(smoneyb)

    樋口明雄氏の自伝的小説。
    1960年生まれの氏と私は一つ違い。
    同じく基地の街で生まれ育ち、川に遊びに行き、海まで自転車で出かけていった。
    樋口氏の中学生の夏の思い出と、私の夏の思い出が完全にオーバーラップしてしまった。
    中学生時代から小説家を目指した彼は、今や売れっ子作家。私は普通のおっさん。
    でも、あの夏の思い出は多分同じものであり、私たちは同じ時間を過ごした。

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    投稿日:2018.09.26

  • tenriver1106

    tenriver1106

    日本経済が高度成長から安定期へと向かう1970年代、米軍基地がある山口県岩国市で、将来の夢をもった中学生の主人公と、その友達が織りなす淡い交友関係を地元の山口弁で書かれた作品です。恋あり、イジメあり、思春期の中学生が惹きおこしがちな社会的問題を織り交ぜ、読者をハラハラドキドキさせます。ラストシーンでは、涙無くして読めないという作者の卓越した筆致力に感銘します。是非、一読してみて下さい。続きを読む

    投稿日:2018.08.21

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