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佐々木俊尚 / 徳間書店 (3件のレビュー)
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nono
このレビューはネタバレを含みます
「当事者」の時代 (光文社新書)の続編的な考察なのか、いくつか重なる記述があるが、もっと広げた感じ。 その所為か拡散して薄まった感もある。 最終章にまとめなどをして「旧態依然のステレオタイプがこの国を停滞させている仕組み」を図示するような試みをしたら全体が締まって主張もわかりやすくインパクトの有るモノになっただろうにと惜しまれた。 まあこうして云うのは簡単だけど、これだけの考察を一冊にまとめて世に出してくれた著者に感謝したい。 作品紹介・あらすじ 先端テクノロジーの進化と逆行して、日本の社会には神話のような古くさい価値観が居座り続けている。権力は常に悪で、庶民感覚は常に正しく、弱者は守られるべき存在であり、人工的なものは危険で自然由来が最良……そんな旧態依然のステレオタイプがこの国を停滞させていることに、われわれの多くはまだ気づかないままだ。未来の社会を思考するために、価値観の尺度を改めよう。この国の新たな道標としての著者最新論考。第一章 社会の神話「マイノリティの目線」に縛られるメディア「物価高=悪」のステレオタイプ監視社会は「悪のビッグブラザー」ではない個人情報を取られると自由はなくなるのか極右化、コロナ禍失策でも欧米は素晴らしいのか…他第二章 反権力の神話軍部の暴走というステレオタイプ戦争への道は「空気」が決めた「権力者と反権力」という二分論の成立「権力が陰謀を企んでいる」という左派の物語反原発派から「理念」は提案されているのか…他第三章 メディアの神話新聞の影響力は団塊の世代の退場とともに終わる「レモン市場」で考えるフェイクニュース問題安倍元首相を殺害した男を「被害者」にしたメディア社会の抑圧の中で膨らむ無軌道なヒーローへの憧憬「寅さん」という社会に接続できるアウトサイダー…他第四章 右派と左派の神話山本太郎「天皇直訴」以後の現象―「ウクライナ降伏せよ論」の背景にある太平洋戦争アニメ『この世界の片隅に』のセリフが原作と変わった理由ネット炎上を社会現象規模で捉えてはならないツイッター過激化の背景に団塊の世代の参入差別は解消されても社会運動は持続していくキャンセルカルチャーという排斥文化の拡大…他第五章 環境と生活の神話脱ダムは水害が少なかった時代の幻想だった「江戸時代は支え合いとエコの世界」という嘘なぜオーガニック信仰の人たちは容易に陰謀論を信じてしまうのか人工的=危険、自然=良いという思い込み所有者の一存で処分ができない土地神話の幻「恋愛しなければならない」抑圧共依存の果てにあるのは牢獄のごとき結婚生活だ…他
投稿日:2023.11.13
hirona82
佐々木さんがTwitterで告知されてから気になってた本、早速読んでみた。 この国を蝕む神話というのがまず言い得て妙で、出てくる話題の数々に頷きながら読んでいた。何故そのような思考になるか、という背…景も書かれることで解像度が高まったし、終盤の江戸の話はあまり知識が無かったところなので、タメになった。 未だに戦争直後の考えに縛られている人がいるというのは、ある意味で驚きだし、知識を更新し続ける重要性や必要性をあらためて感じた。続きを読む
投稿日:2023.10.15
ucym100
p62 さて、多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。みながみな口を揃えてだまされていたという。私の知っている範囲ではおれがだましたのだといった人間はまだ一人もいない 伊丹万作 p68 戦争へ…の道は空気が決めた ウォーロード 戦争の指導者たち 新評論 1989 日本については戦争指導者不明 p71 明治政府が考えたのは、軍を不可侵の権力にするのではなく、軍が政治に口出ししないようにすることだったのだ p72 実のところ日本に必要なのは、反権力ではなく、反空気ではないだろうか。空気は勝手に様々な決定をし、しかし生身の人間ではないから、なんの責任もとらず雲のようにあっという間にどこかに消えて言ってしまう。まさに雲散霧消なのである p73 未完のファシズム うしはく しらす うしはく 強いリーダーシップをもって力づくで従わせる強権政治 しらす 上の者が自分の考えを押し付けるのではなく、さまざまな人々の考えを認めながら、調整していくような和の政治 しらす 本来は表面化されるべき対立軸がみえなくなってしまう p119 化石燃料発電 ベースロード電源として使える。温暖化ガスを排出する問題があるが、テクノロジーの進化によって脱炭素にも対応できるようになる可能性がある。しかし燃料を輸入に頼っており、安全保障上のリスクがある 原子力発電 破滅的な事故の心配があるが、ベースロード電源になることができる。また将来的には事故の可能性のきわめて低い技術も期待できる 太陽光発電 温暖化ガスを排出せず、燃料もゆにゅうせずに済む。しかしベースロード電源とは使えず自然環境を破壊する問題もある p120 新聞の影響力は団塊の世代の退場とともに終わる 不動産ビジネスで大新聞社は生きながらえている p134 レモン市場 質の悪い中古車 情報の非対称性 p139 原子放射線の影響に関する国連科学委員会も2013年の報告書で、原発事故の健康への影響は、「心理的・精神的な影響が最も重要だと考えられる。甲状腺がん、白血病ならびに乳がん発生率が、自然発生率と識別可能なレベルで今後増加することは予想されない」と明白に書いてあり このように今のメディア空間には、何が正しいのかをだれも判断できないような情報が増えてきている。中古車のレモン市場では、事故車かどうかの情報はディーラーだけ握っていた。しかしメディアのレモン市場では、lある情報が誤っているかどうかすべて知っているディーラーはそんざいしない。レモン市場より酷いのである では、情報の正しさを見抜く方法はもはや存在しないのであろうか。残念ながら、完璧な方法はない。しかし、「ある程度は確実と言える方法」はある。それは、「専門家を群れで観察する」という方法である。 ウクライナ情報 専門家/現地報告ウォッチ https://twitter.com/i/lists/1496721360294653957 p158 職能集団の専門知を皆で共有する動線が、うまく作られていない課題 職能集団を基盤としてメディア全体のグランドデザインが、まだ描けていない p265 私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る ヴォルテール p274 江戸時代に戻れと言うが、当時は森林が破壊され、稲作も限界だった p284 野菜のうまさは、栽培時期、品種、鮮度の3つの要素ではほぼ決まる 昔は野菜がうまかったが、今の野菜はまずくなったは嘘 旬の時期に食べれば野菜はいまもちゃんとおいしい。 ではなぜまずいと感じるようになったかというと、昔hあ旬の時期にしかなかった野菜が、ハウス栽培の普及で年中販売されるようになったから。冬にきゅうりやトマト、なすなどの夏野菜を食べたら、それはハウス栽培なので、旬の露地ものに比べれば味が落ちるのは当然のことだ p288 しかし土地神話は、一部の都会を除けば完全に終わりつつある。特に人口流出が激しい地方の田園地帯では、土地はもはや資産ではない。それどころか完全に負の資産になっており、持っているだけで固定資産税や定期的なメンテナンスなどの負担が増えるばかりである。だから、自分が所有する土地をなんとかして誰かの手渡してしまいたいという人が増えている。しかし、そういう土地をほしい人もほとんどみつからない。土地を巡って盛大なババ抜きが進行しているのである p289 2015 空き家対策特別措置法 放置され東海などの危険がある空き家は、市町村が強制的に取り壊しができるようになったのだ。取り壊し費用は、問答無用で所有者に請求される。 2023年の同法が改正され、管理が行き届いていない空き家は固定資産税の減免が解除されることになった。固定資産税の減免というのは、土地に住宅が立っていれば固定資産税が1/6に減らしてもらえるというものである。この減免がなくなってしまうとので、空き家をきちんと管理しないでいると、固定資産税が一気に6倍に増えてしまうのである p294 この負のスパイラルをうまく回避して有名なのが、1980年代初頭に生まれた千葉県佐倉市のユーカリが丘だ。宅地を開発して一気に分譲してしまうのではなく、毎年の販売個数を抑え、年月をかけて少しづつ分譲していった結果、さまざまな世代が入居した状態が維持されて過疎化を防いだ。いまも活気ある住宅街となっている p300 安井かずみがいた時代続きを読む
投稿日:2023.10.01
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