【感想】ぼっちな食卓 限界家族と「個」の風景

岩村暢子 / 中央公論新社
(11件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • tarupon

    tarupon

    食卓を定点観測の場として、1998年〜2009年にかけての第1回、その10年後の2回目、さらにその10年後の3回目と同一対象家庭に、アンケート、写真入りの日記調査、詳細インタビューなどを行った結果の分析、考察をまとめた本。
    この調査結果自体見れたら興味深いだろうなと感じたし、分析、考察をまとめた本書も非常にインパクトが強いものだった。

    家族内であっても、「個人の意思を尊重する(自分のやりたいこと、自由、好みを優先する)」という親の気持ちのもとで、結果それが食卓に反映し、親子関係(対象者の子どもだけでなく、親、義親含め)、夫婦関係などにどう反映していたのか。

    自分自身まさにこの調査対象年代にあたることもあり、え〜!?と思うこと、まあ我が身を考えても思いあたること等様々。
    そして、自分は、果たしてどうしていただろうか?(本文中にもあったが、記憶は自分の都合で塗り替えられる、だから自分の記憶に自信が持てない)、子どもがまあ無事に育ってくれてよかったと思う一方、独立した彼等の今の食生活、考え方はどうなのだろうかと若干の不安も感じる。
    こんな半端ない当事者意識に苦笑。

    しかし、個を大切に自分中心に考える流れは、自分の中にもあるし世の流れとしても止めようが無い。しかし、大人と子どもとでは対応は違って然るべきだし、本来的な意味で自律的な人間を育てるのは、小さい頃から自主性尊重の名の下に放置することとは違う。
    人が生きること、育つこと、育てることはそもそも手間がかかり、手をかけることにより得られる価値が大きいと今なら思えるが、若い時はわからなかったなと反省をこめて思う。
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    投稿日:2024.05.02

  • ともかさま

    ともかさま

    いろいろびっくりだった。個を尊重しすぎるあまりに、子育て、親育てを放棄しているに過ぎない状況だった。なので最近は非常識が多いのか…と思ってしまう…

    投稿日:2024.02.21

  • フリージア

    フリージア

    自分を大切にして、自由で好きな時間を過ごすことは、必要なことだと思う。外に目を向けることも大切だ。が、この本を読んでとても怖くなった。家庭の食事にもこの考え方をもちこみ、食事は時間も内容も個別、自分の子どもの食事に対しても、面倒くさいから自己責任の道筋を作っていく。嫌いなものを与えると機嫌が悪くなるからとか、残されると嫌だからとか。それを言ったらおしまいと思うようなことが、多くの家庭で見られた。1998年から2009年まで、食卓を定点観測の場として、同一家庭の10年後、20年後の変化を追跡調査した結果だ。ちなみに、初回は240家庭、10年後は89家庭、20年後は8家庭の有効サンプルの結果だそうだ。
    個人を尊重することは大切なことだけれど、家族と関わらない食事時間と、帰宅時間を親離れと自立というきれいな言葉で片付けることは、もう仕方がないことなのだろうか。働き方や深夜までの塾や習い事で仕方がないのかもしれない。外に対しては食事や子育てのアドバイザーの立ち位置の人でも家ではきちんとした食生活や子どもへの接し方ができていないというのも、見映えだけを気にしているように思える。でも自分ファーストで子どもを育て、親と接して、自分が老いたときに同じように自己責任として片付けられても納得できる強い人が、そんなに多いのだろうか。
    最後に、10年たっても食事を大切にし、皆が家事に当たり前に参加してお互いを気にかけあい、円満に暮らしている家族があることにほっとした。これが大多数の人にとっては、鬱陶しい関係であることは、もうどうすることもできないのかもしれないが、ひょっとするとコロナ禍でなにかが変わったかもしれないとも思った。
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    投稿日:2024.02.05

  • かな

    かな

     なんとなく、図書館で気になった作品を読んでみました。「ぼっちな食卓」…なんとも、ショッキングなタイトルですよね!!

     この作品は、家族の食事に特化した内容になっています。同じ家族の現在、10年前、20年前の食事について追跡し、その家族がどんな風に変化をしていったかということを調査し分析している内容です。この作品の大部分は、食事に無頓着な家庭について触れられている感じです。母親は家族のために食事を作りたくないし家族のためにというよりは、自分のために自由な時間を確保したい…家族の自主性に任せるという大義名分を掲げ、それぞれが個々に買ってすませるとかです。そんな家族の現在の姿は、バラバラで親は子供に何も言えず、引きこもりになってしまっていたり、家に寄り付かなくなっていたり…そんな怖いものが多かったです。最後の最後で、家庭不和もなく穏やかな関係を築けているという結果になった家庭もあったのが救いでした。

     ウチはどうなんだろう??ウチは毎食、子供は子供で、夫は夫でという食事はしていないけれど…手の込んだ食事は作れていないなぁ…でも、子供たちとは別で生活するようになったら、どうなっちゃうんだろう??いやいや、それでも毎食作らない選択肢はないかなぁ…。この作品で扱った調査は、少し偏りがあるんじゃないかなぁ…とも感じましたが、でも食事は大事だということは実感できました。
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    投稿日:2024.01.07

  • orangigie

    orangigie

    「自主性」を育てるために、好きな食べ物を子供自身に選ばせて出していた家庭は、その後どうなったか。
    調査対象は首都圏在住家庭、240件。家庭の主婦へ、家庭内の食事についてのインタビューをしたものである。家族一緒に食事をするのか、各々がバラバラに食事をするのか。そしてその食事はどのようなものなのか。10年後、20年後と継続して同じ家庭に調査を入れているため、調査のたびに数は減るし、数が少なすぎて統計学的な評価はできないものの、こういった年月をかけての調査という点だけ取っても、稀有で貴重な調査結果である。
    仲がいいとは言えない家族の様子がリアル過ぎて、読み進めていくにつれ気持ちが萎えてくる。子供の自主性を大切にすると言いつつ実態はネグレクト。良くも悪くも干渉しない夫婦、それは家庭内離婚とラベリングされていないだけ。個々の自由を尊重すると言っているのは、自分優先を正当化するための口実。家族が家で食事をしたがらないので外食ばかり、外食が家族のコミュニケーションの場だと。他にも、ブラック企業やブラック部活の問題などもあり、これでもかというほど問題が出てくる。前半は何とか読み、後半はこれ以上読みたくなかったが、何が書いてあるかはわかる程度に目を通した。
    勉強になったのは、資格をとって教える側に回りたがる主婦がいること。指導員・アドバイザー・インストラクターなど。だが、実際に本人はその通りにしているかというとそうでもないそうで。若いお母さんの怠慢に嘆く保育士、家では食事をせず子供や夫は外で買ってくる。薬膳料理教室を開いているが、夕食はレトルト食品とお惣菜ばかり。著者は、こういったことをただ嘘つきと非難するのではなく、専門家や先生こそ、その矛盾に向き合うべきだということと、実践を放棄し言葉や情報だけ語ってしまうほど、情報発信者が強い力を持っているという現代の問題だと指摘している。
    全体に著者の見解や考えはそんなには書かれておらず、調査結果を読んでいるだけのような感じでした。しかし、実例の多さと、これがフィクションではないことが読む側の陰鬱な気分に拍車をかけてしまう。事実は小説より重いです。しかもこの問題、これで終わりではなく、社会が変わるにつれて問題の様相もどんどん変わっていくわけで。個人の尊重(という誤解?短絡的解釈?)が家庭の空洞化につながり、子供が最も近い人間から人間関係を学べなくなってきていて、子供同士のいじめの問題や、長く見れば少子化の原因の一つになっているのではないかと思いました。
    最後に、年月を経て調査をした際も円満だった家庭についても書かれている。あとがきでは、この調査が家族のコミュニケーションのきっかけになったといってお礼の言葉も来たそうである。悪い話ばかりではないのが救いでした。
    これのアップデート版もやって欲しいですね。新たに調査を始め、今後の10年後、20年後はどうなっているのか。
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    投稿日:2024.01.04

  • エイミー

    エイミー

    筆者の主観的な部分が多いようにも感じたが、個食の継続が家族のつながりを分断するのは事実なんだろうなと思った。やはり、食は大事だ。

    投稿日:2023.11.23

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