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イブン・バットゥータ, 前嶋信次, 高野秀行 / 河出書房新社 (2件のレビュー)
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ahddams
高野秀行氏がナビゲーションを務める『三大陸周遊記』にやって参りました!彼が手掛けたまえがきはやっぱり面白かった!何ならもっとはっちゃけても良かったくらい。 面白いだけでなく、彼特有のユーモラスな語り口…調のおかげで十分良い予習になるし、面白い視点のまま本書に臨める。 著者のイブン・バットゥータは、モロッコ出身の大旅行家。 22歳の頃聖地メッカ巡礼を目的に故郷を離れたが、やがて世界旅行へと乗り出す。その範囲は北アフリカからユーラシア大陸を横断して中国と、ザッと世界半周は制覇している。 本書は1977年刊の同タイトルに高野氏のナビゲーションを加え、復刊したもの。高野氏曰く原書の4分の1に抄訳されており、担当したのは日本で初めて『アラビアン・ナイト』を翻訳した前嶋信次氏であるとの事。 高野氏が述べているように、同じ旅行記でも『東方見聞録』よりは読みやすいと思う。 (イブン・バットゥータより50年程前に生きた)マルコ・ポーロの『東方見聞録』も、『三大陸周遊記』に引けを取らずスケールが大きい。しかしリアリティに欠けていて拍子抜けする箇所もあり、実際「ジパング」のように訪れてもいない国について「見聞」だけで乗り切ったりしていた。 本書は北ア〜中国の広大な範囲、つまり彼が「実際に」訪れた国々を余すことなく記録してくれているから、一旅ルポとして自然と楽しめる。あとは彼自身が敬虔なムスリムで、旅の行方を「神(アッラー)の思し召し」と捉えているところも、紀行に穏やかな彩りを添えていた。 全体を通して客観的な文章だったけど、下記のように民間伝承っぽい話も紛れていたりする。 イブン・バットゥータを乗せた船が40日以上遭難した時、前方に見覚えのない山が見えた。それを船乗り達は「ルッフ」(巨鳥)だと嘆き、イブン・バットゥータも必死に神に祈りを捧げる。結局「アッラーは絶好の風を送り、反対の方向に船を転じさせ」、彼らはルッフと対峙することはなかった。 この辺とかシンドバッドの巨鳥とクジラ島のエピソードを合わせたみたいで、読んでいて気持ちが浮き立った。40日以上も知らない海上を漂流していたら、幻覚を見てもおかしくない。『東方見聞録』とは違ってまだリアリティがあるし、読者の想像も無理のない範囲で膨らむ。 「いま世界で起きていることは、イスラム教とは関係ない。ただ憎しみを増幅させているだけだ。ほとんどの問題は、他者を尊重しないから起こるんだ」 『パリのすてきなおじさん』という本に書いてあった、現代を生きるムスリム移民の言葉である。本書の旅の節々でそれを思い起こしていた。 例えばメッカの人々は、異教徒も大切にもてなしていた。ダマスクスでは慈善財団が発足されており、同じく異郷の者への生活支援も手厚かったという。道中異教徒の襲来もあったりしたが、彼の目を通した14世紀の世界は不思議と調和が取れているように思った。 旅の大本命だったメッカの優しさに心打たれ、自分も世界の人々と分け隔てなく交流したいと思ったのか。旅が30年も及んだのは、その思いもあったからなんだろうか。 これも無理のない範囲の想像だったらいいな。続きを読む
投稿日:2023.09.14
taroi
14世紀のイスラム(モロッコ)の旅行家、イブン・バットゥータの大旅行記の。全訳は家島先生が東洋文庫全八巻で訳されているが、師匠に当たる前嶋先生の抄訳となる。(このあたりは高野秀行による前書きに詳細が…ある)。 モロッコ、エジプト、アラビヤ、黒海周辺、アフガン周辺、インド、アジア、中国(元)と約30年に渡り旅を続けているが、そのヴァイタリティと知的好奇心には脱帽する。 東方見聞録に比べると、こちらのほうが断然読みやすく、面白い。情報の正確性はともかく、前者がガイドブックとすれば、こちらは旅日記である。善きにしろ悪し気にしろ起こった出来事を克明に記しており、読んでいてワクワクするのである。続きを読む
投稿日:2023.06.11
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