【感想】法の雨

下村敦史 / 徳間文庫
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • pa-yan

    pa-yan

    先週の土曜日、怒涛の6連勤を終えた自分へのご褒美として購入した一冊です。
    駅前の書店で出会いました。
    下村さんの作品は初めてかと思いきや、
    「闇に香る嘘」を読んでました。

    疑惑の逆転無罪判決。

    無罪病判事”と呼ばれる裁判官がいる。
    起訴後、有罪率99.7%の日本で、無罪判決が下される。

    担当検事の大神は3回連続で無罪を言い渡され、
    検察庁内でも「ありえない」出来事として、
    出世の道は絶たれ、自身の今後すら危うい状況。

    その裁判長が判決直後に突然倒れる。

    そこから二点の視点(検察官の大神と、裁判長の孫)で物語は展開していきます。

    物語のテンポが良く、
    息つく暇なく数時間で読み切りました。

    特に裁判長と大神のやりとりは、
    お互いの考えや矜持をぶつけあっているようで、
    読み進める手が止まらず。

    成年後見制度を初めて知りました。
    とても強力で状況次第で最悪になる制度。

    生きているうちは、
    自分の足で立って、
    自分の頭で考えていたいなあ。

    それぞれの立場からの法律への向き合い方、
    アクションもあり、ミステリーもあり、
    とにかく贅沢な一冊でした。
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    投稿日:2024.04.08

  • tvxqhitomi

    tvxqhitomi

    202307/面白かった…。毎回テーマも舞台も趣向もキャラも見事で一気読み&作家買い必至の下村敦史。

    投稿日:2023.10.25

  • ますたぁ

    ますたぁ

    法の正義と成年後見人が主題のリーガルミステリ

    近年、無罪を頻繁に出すようになり「無罪病判事」と揶揄されている裁判官の嘉瀬清一
    看護師によるヤクザの組長殺害事件の結審直前に倒れたが、その裁判でも有効とされた判決は「無罪」
    自身が手掛けた裁判では四度目の無罪判決となった検事の大神による「無罪病判事」の真意、そして事件の真相の追求

    医学部に合格しながらも、入学金を出してくれるはずだった祖父が認知症になり、成年後見人制度により弁護士が後見人になったため預金が降ろせずに納入期限が迫っている高校生の幸彦

    果たして、法とは誰のためのものなのか?を問う物語


    刑事裁判の有罪率99.7%となっている現代日本
    そんな中で15件もの無罪判決を出している異例の裁判官の嘉瀬
    無罪判決は検察からすれば汚点であり
    国民やマスコミからは、なぜ犯罪者を野放しにするのかという誹りを受ける

    有罪率の高さの理由は、有罪になる可能性の高い事件のみ検察官が起訴しているから
    しかし、立証責任のある検察が「合理的な疑いを超える程度の証明」をできているのか?という疑問
    「疑わしきは被告人の利益に」という原則が捻じ曲げられ、明確な証拠や根拠なしに法解釈が適用されているのではないか
    「10人の真犯人を逃すとも、一人の無辜を罰するなかれ」という言葉はどの程度の意味をもつのか

    犯人に変わりはなくとも、求刑内容が事実とは異なっていたら?

    裁判員制度
    国民の感覚に左右されるのであれば、それこそ中世の裁判と同様ではないかという批判

    マスコミは判決内容の一部分だけ切り取ってそれらしく報道するが
    そんな断片的な情報で勝手に決めつけている国民
    公開されている裁判記録のすべてを判事と同様の視点で読んでいる人はどれだけいるのか?


    でも、実際どうなんですかね?
    合理的な疑いすべてを超える程度の証明ってできているのだろうか?
    その人ができた、やった事に疑いはなくとも、その意図まではどうやっても証明できないのではなかろうか?
    それこそ殺意なんて証明のしようがないと思うんですけどね
    場合によっては人を刺していながら殺意は否定できる場合もあるでしょうし

    ましてや、良心は誰にも裁けやしない



    もう一つのテーマ、成年後見人制度

    知的障害・精神障害・認知症などによって判断することができなくなった人に後見人をつけ、財産管理や契約などの法的な問題に対処する制度

    家族が後見人になる事もあるが、現実的にはまったく関係のない弁護士など家族以外を家庭裁判所が選出する事も多くなっているよう
    弁護士が後見人となることで悪意を持った親族が財産を勝手に使う事を防げる一方で、本当に困っている家族が被後見人の財産を使う事ができなくなる弊害もある

    夫婦でもどちらかの銀行口座に集約されている事が一般的だし
    きっちり半分に分けているのでなければかなり困るでしょうね

    作中の弁護士の態度に関してはそれなりの理由があったのはわかるし
    制度本来の意味で被後見人の財産を守るという役割は果たしているけれども
    それって本当に被後見人のためになっているのかね?

    この制度が成立した経緯はともかく、その運用実態に関しては弁護士の小遣い稼ぎ的な側面があるのではないかと疑ってしまう

    家族だからといって無条件で後見人なれるものではないだろうけど
    もっと柔軟な対応はできないものなんですかね?



    タイトルの「法の雨」は、仏教用語の「法雨」が由来
    「雨が万物を潤すように、仏法が衆生を救うことのたとえ」
    「救いの雨でもある」
    とのこと


    「法律」とは誰を守るためのものなんですかね?
    誰が、どう使うかによって如何ようにもなってしまう場合がありすぎるなぁ
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    投稿日:2023.09.28

  • NFCC図書館

    NFCC図書館

    「逆転無罪」。有罪率99.7%の日本で、無罪判決は死も同然。これは偶然か。さらに、無罪となった看護師が死んだと知り、病床の裁判長を訪ねると、さらなる謎と事件が見えて…。検事、弁護士、被害者と加害者、刑事、そして判事。複雑に絡み合うリーガルミステリー。(e-honより)続きを読む

    投稿日:2023.09.25

  • honno-遊民

    honno-遊民

    題名の「法の雨」は、雨が万物を潤すように、仏法が衆生をすくうことのたとえ」だそうだ。
    様々なテーマで現代の問題にメスを入れる著者が、今回問いかけるのは、「法の正義とは」と「成年後見制度の闇」。
    公判検事の大神護は、「無罪病判事」と呼ばれる裁判長の裁判で、今回も無罪判決を受ける。
    その裁判長が判決直後法廷で倒れ、無罪となった被告は死亡する。
    大神検事は、関連があるのかと調査を始める。
    一方、嘉瀬幸彦は医学部受験に合格し、入学金を祖父に払ってもらう予定だった。その祖父が認知症になり、成年後見制度を適用されてしまう。
    入学金の振込期限が迫るが、後見人の弁護士に支払いを拒否される。
    入学金は果たして払い込みできるのか、無事入学できるのか、タイムリミットサスペンスとともに、大神検事の調査とどのように関係してくるのか。
    検事、弁護士、判事、さらに暴力団も加わり、複雑に絡み合い、二転三転する展開に目が離せないリーガルミステリー。またまた今回も、小説の魅力を堪能でき、著者の作品に外れはない。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.14

  • sally3

    sally3

    無罪判決を連発する裁判官嘉瀬。彼に無罪を何度も出された検察官の大神。看護師による組長殺人事件でも無罪判決を下された。判決を決めてすぐに嘉瀬は倒れ、認知症となってしまう。大神は施設に嘉瀬を訪ね、判決について問いただすが、、、というお話。その中に嘉瀬の孫などの絡み合い、なかなか面白いリーガルミステリーだった。続きを読む

    投稿日:2023.07.19

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