【感想】ぼくはうそをついた

西村すぐり, 中島花野 / ノベルズ・エクスプレス
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 淳水堂

    淳水堂

    2024年読書感想文コンクール課題図書 高学年
    https://www.dokusyokansoubun.jp/books.html

    広島に住む二人の小学生が、自分の親戚が原爆で亡くなっていた事を知って、それをきっかけにいままで少し遠い勉強として、怖いものとして捉えていた戦争のことや原爆のことをもっと知りたいと思うようになる。

    5年生のリョウタは、シゲルおじいちゃんから、お兄さんのミノルさんが13歳で勤労奉仕していた時に被爆し、家に帰る途中で力尽きたのだと聞く。

    6年生のレイ(女の子)は、最近徘徊するようになったひいおばあちゃんのタヅを心配している。ひいおばあちゃんは小さい男の子を探して歩き回るのだ。タヅひいおばあちゃんが探しているのは原爆で亡くなった13歳の長男のショウタだった。

    原爆の時、シゲルおじいちゃんは10歳で小学校は避難所となった。そこで代用教員で17歳のミドリ先生(作者のお母さんがモデルだそうです)と一緒に、怪我人救助の手伝いをしたり、亡くなった人の遺品を纏めたりしていたという。それを聞いたリョウタは、家に帰れなかったミノルさんの代わりに、被災した学校から家に歩いて帰ることを試してもみる。

    リョウタとレイは二人は戦争の話を聞きながら親しくなってゆく。そして被災したミノルさんとショウタさんが同級生だったことも分かった。
    そしてある日、徘徊するタヅおばあちゃんから「ショウタ」と間違えられたリョウタは、とっさに嘘をついたのだ。

    ===
    題名から「嘘をついて友達を無くしそうになった」みたいな話かと思ったら全然違った。リョウタの嘘は、その人の事情を知ろうとした結果自然にその人を気遣って出た嘘だった。

    戦争教育を「目を覆いたくなる」記憶と思っていた小学生が、徐々に語る人のいなくなる戦争の記憶をちゃんと聞いておかなければと感じてゆく。

    出てくる小学生全員が良い子過ぎ出来過ぎな気がしないでもないんだが、子供の頃からおじいちゃんやひいおばあちゃんと親しんで、年をとっても大事に思う気持ちが分かるようになっているので優しくて良い子だなあと思える。

    物語としては、広島にとってどんなに野球のカープが大事なのかがよくわかったのと(笑)、やはり作者のお母様の経験からくる先生や小学生たちによる救護活動の場面は迫力がありました。人出不足のため17歳で代員教師になったこと、被災地から少し離れた場所での原爆の体感、次々運ばれてくる被災者を助けられない悔しさ、6年生になると遺体を運ぶ手伝いもしたこと、先生ともっと小さい生徒たちは遺品を入れる袋を作ってせめて遺族に渡るようにしたこと。
    やっぱり語り継ぐって大事ですね。私は被災者の救護所の様子を読んだのは初めてでして、先生やまだ10歳頃の児童がお手伝いしたりせめて遺品を集めたり、死体がいっぱい死ぬ人がいっぱいのそのなかで、自分ができることをやっていった様子、著者がお母様から「直接聞いた」ってやっぱり伝わってくる力が強いですよ。

    リョウタがレイが仲良くなるまで、そしてリョウタはレイに仄かな初恋みたいなものを抱いているのもお話として良い。
    今年のコンクール課題本は良作が多いなあ。これもとても良いお話でした。
    難を言えば、文章としては「〜だ。〜だった。〜なのだ」という説明文が続くのがちょっと引っかかったなあ。
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    投稿日:2024.06.03

  • mi-nya

    mi-nya

    5年から。2024読書感想文高学年。5年生のリョウタは、おじいさんから兄のミノルさんが原爆で亡くなった時のことを聞く。そして、先輩のレイさんのおばあさんには、原爆で失くした息子さんがいることを知る。消えない戦争の傷痕と人々の苦しい想いを考えるため、原爆資料館や周辺を当時を想像しながら歩き回るリョウタ。戦争を後世に伝えていくことと、痛みが少しでも癒えることを願う一冊。
    作者の母親が太平洋戦争の終戦の年に教員であり、その話を元に描かれているそうです。街の様子や学校の様子が分かるお話。
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    投稿日:2024.05.26

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    2024年度読書感想文課題図書 小学校高学年の部

    「広島に住む小学校5年生のリョウタ。同居する祖父から、原爆で亡くなった祖父の兄ミノルの話を聞く。平和学習で資料館に行き、戦争は怖い、二度と繰り返してはいけないと思っていた一方、どこか遠い昔の出来事のようにも感じていた。しかし、祖父の話から興味を持ったリョウタは、亡き大おじミノルの足跡をたどろうと思う。
    リョウタが憧れる女子バレー部のキャプテン、レイは共働きの両親にかわり育ててくれた曾祖母のことが好きだった。原爆で子どもをなくしている祖母は、時おり記憶がまだらになり、我が子を捜し始める。近所の子どもたちからも変人扱いされている曾祖母の姿を見るのは辛く、なんとか彼女を救いたいと思うレイだが――。
    平和のために、今、私たちは何ができるのだろう――すべての人が幸せに生きられる世界へ、祈りをこめた物語。」
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    投稿日:2024.01.30

  • かな

    かな

    このレビューはネタバレを含みます

    戦争で息子を亡くしたタヅさん。その息子の友達のミノルはリョウタの祖父のお兄さん。二人とも広島の原爆で亡くなったのだが、リョウタは祖父から当時の話を聞き、ミノルの足跡をたどってみることにした。記憶が曖昧になり息子を探し歩き行方不明になったタヅさんにリョウタはうそをついた。すごくやさしいうそをついた。ちなみに作中にでてくるミドリ先生は作者のお母さんがモデルだそうですが実体験も含めて戦争の恐ろしさと悲しさ、現代と過去、そして淡い恋心がうまくまとまった良書だと思いました。

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    投稿日:2023.09.26

  • ルーク

    ルーク

    原爆は主人公のリョウタにとって遠い時代の話だが、祖父の語る話を聞いて自分なりに受け止めようとする姿に希望を感じた。

    作者の過去作『ぼくがバイオリンを弾く理由』の登場人物も関わってくるが、どちらも独立したストーリーなので先にこちらを読んでも構わない。

    広島出身の作者にとって原爆の話は継承しなければならないテーマなのかもしれないが、押しつけがましさがないので今の小学生が読んでも素直に共感できると思う。

    夏休みの読書感想文にぴったりな本
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    投稿日:2023.07.26

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