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菊間晴子 / 東京大学出版会 (2件のレビュー)
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はかいし
大江健三郎のキャリアは長大であり、当然ながらその作品群には変遷がある。個人的にはデビューから「万延元年のフットボール」あたりまでがいちばんおもしろく読みやすいし、大江本人がレイトワークと名付けた仕事群…にはいまいちピンとこないところもある。 本書は博士論文を書籍化したものだが、「犠牲」をテーマとして前期から後期までの大江作品を串刺しにして読み解くものである。こう書くと、なかなか乱暴に聞こえるかもしれないが、読んでみると実際に通底しているように思えてくる。たぶん、そう。 まず「同時代ゲーム」の分析から本書は始まる。あのわかりにくい小説である。 本書のタイトルには犠牲の森とあるが、大江には二本の軸があるという。「犠牲となって死んでいったものの亡霊性をめぐる思考、あらゆる個の魂を包括する『総体』としての超越的存在をめぐる思考」。それがわかりやすく顕現されているのが「同時代ゲーム」であり、よって前半で緻密に分析されている。 これだけだと単なる二項対立のように見える。個人と超越的存在、といえばキリスト教圏である欧米圏の小説で現れやすいテーマだが、それだけだとわざわざ論文にするほどでもない。しかし「同時代ゲーム」から始まる本書は、複雑化する大江作品を精緻に読み解いていき、前期も後期も時間軸を行き来しながら分析していく。 本書は十年がかりの仕事だったらしいが、それに見合うだけの読み応えがある内容だった。続きを読む
投稿日:2024.03.09
いゔどっと
5 14 20 23 25 43 45 59 61 64 81 115 149 150 203 壊す人 212 三島の自決 215 バシュラール 221 233 239 275 316 354 370… 381続きを読む
投稿日:2023.09.11
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