【感想】韓国併合 大韓帝国の成立から崩壊まで

森万佑子 / 中公新書
(11件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • mamo

    mamo

    日本の戦争への道を考えるときにある種の不可逆的な一線を超えたのは、満州事変だと思う。

    が、そのとき、韓国はどうなっていたのか、日本は韓国を植民地しただけでなく、どのように併合してしまったのか、という疑問がよぎるわけだが、なかなかコンパクトにまとまっていそうなものはなかった。

    そういう中で、新書で読めるこの本を発見して、読んでみた。

    知らないことばかりで驚いた。なんと強引なやり方で、他国を植民地化していったのか。。。。

    自らが西洋諸国に植民地化される恐れの中で、頑張り続け、その結果、自らが植民地主義者になってしまったのだ。自分がやられたこと、やられそうだったことを他国に対して、やっているという構図。

    そうした流れを日本側ではなく、韓国側の歴史を中心に読み込んでいく。そして、ここでなされていることが、ある種の成功パターンとして、満州事変、支那事変で繰り返されるわけだ。
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    投稿日:2024.05.26

  • horinagaumezo

    horinagaumezo

    近年の研究成果を反映しながら、大韓帝国が成立して崩壊していく過程に着目し、韓国併合に至る軌跡と実態を史料に基づき実証的に描く。また、1990年代以降の韓国併合をめぐる合法・不法等の論争についても整理している。
    これまで日本視点での韓国併合論についてはいくつか読んだことはあったが、大韓帝国の視点から韓国併合までの歴史をたどるというのは新鮮で、知らなかった史実も少なくなく、勉強になった。
    特に、大韓帝国や高宗が当初明朝をモデルとした(小)中華思想に基づく国家を目指していて、西欧流の近代国家にいち早く切り替えた大日本帝国と最初から齟齬があったという点は興味深かった。このことを象徴するものとして、日朝修好条規締結前に、日本使節をもてなす宴会で日本側が西洋式の大礼服を着用しようとしたことについて、朝鮮側が明朝中華の服装こそ正式で、西洋式の衣服の着用を認めることは夷狄・禽獣の文化を受け入れることだとして一悶着あったというエピソードが印象的だった。
    大韓帝国側にも、独立協会や一進会など、日本を利用して近代化を進めようという動きが相当程度あったということも理解した。
    最後の韓国併合をめぐる論争の整理もよくまとまっていて、ありがたかった。韓国併合や第2次日韓協約の国際法的な合法・違法の論点はなかなかどちらが妥当なのか
    判断しがたいところがあるが、紹介されている坂元茂樹氏の当時の国際法では有効であるが明治政府の行為は正当化できないという「有効・不当論」の立場に一定の説得性を感じた。
    少なくとも、著者が史料的根拠から結論づけているように、多くの朝鮮人が日本の支配に合意せず、歓迎しなかった一方、日本が朝鮮人から統治に対する「合意」や「正当性」を無理やりにでも得ようとしたというのはそのとおりなのだと考えるので、そのような事実は踏まえた議論が望まれよう。
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    投稿日:2023.07.17

  • Masahiro Sera

    Masahiro Sera

    19世紀後半の列強諸国の東アジアへの関わりから、当時の朝鮮及び日本の立場を説明する。

    長い間中国の所謂「属国」として朝貢体制をとり、正統な中国として見ていなかった清に対し、朝鮮こそ中華思想を継承できる国であると考える非近代的な国家であったようだ。そこに植民地を拡大する列強が侵食してくる。日本にとっては脅威であり、また列強の仲間入りを目指すチャンスでもあったのは確かだ。

    日清戦争、日露戦争、韓国の植民地化は、同じ文脈で語られるが、本書ではそれを含め韓国併合までの日韓両国の条約締結までの背景や史実を淡々と述べてくれているので、読者に正統性の判断を任せているように感じた。

    日韓はよく言われるように近くて遠い国だ。
    歴史認識の合意を探るとしても、政治の在り方や、それに伴う史実の記録や整理の仕方も大きく異なる両国で、現在にまで残され確認できる史料を突き合わせて、日本ではこう記されている、大韓帝国ではこう記されていると議論しても、合意を求めることは難しいだろうと言う。
    そもそも条約体制の外交を実践した国とそうでない国の記録を、対等に突き合わせて議論すること自体が難しい。

    文在寅大統領の登場で、再び最悪の関係となったが、先日訪日した尹錫悦大統領と岸田首相との会談で、お互いの国に対する感情が少しだが改善したようだ(岸田首相に直接お詫びの言葉を発して欲しかったが)。

    私たちは互いに良い未来を構築していく必要があるが、多くの朝鮮人が日本の支配に合意せず歓迎しなかったこと、一方、日本が朝鮮人から統治に対する「合意」や「正当性」を無理やりにでも得ようとしたことは事実であり、これこそが韓国併合ではないだろうかと結んでいる筆者の言葉は、我々も認識しておくべきことだろう。
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    投稿日:2023.03.21

  • nyankoteacher

    nyankoteacher

    高校までの歴史授業では、明治維新時の内政改革を列挙した後、議会開設と大日本帝国憲法が・・くらいまでしか、聞いた記憶が無い。おそらく時間切れ、あとは自習ということであったろう。日清・日露、大正デモクラシー、太平洋戦争、また、小村寿太郎、原敬・・という単語はもちろん記憶にとどめる。しかし、「韓国併合」について、高校生がどのように理解するかと言えば、征韓論→日清日露の勝利によって日本も版図を広げ帝国主義列強の一員に??という、単視眼的な理解でのインプットを促す書き方でしか、サブテキストなどにも載っていなかったと思う。東学党だの義和団だの閔妃だのというのも片隅に書いてあったとは思うが、あまりにも断片的で頭に入らなかった。
    本書を読んで思いを至らせることになるのは、当時、清、露、欧米列強、日本がグローバリズムの中で少しでもよいポジションを占めるために複雑な政治、軍事の施策を矢継ぎ早に行っていたことである。朝鮮半島は地理的に、そして歴史の時間軸の中で、非常に不幸な位置におかれたようだ。高宗をはじめ、当時の朝鮮の指導者エリートたちは様々なやり方で必死に自分たちの国家をまとめようとした。が、及ばず、現代の私たちがイメージする独立国家への遷移は、そこでは叶わなかった。
    もう一つ、本書で印象に残るのは、他国に乗り込み、駐在して、自国にもっとも有益な結果を生むために、その国の国情を分析し、協力者を作り、工作し、世論、数的優位を整え、交渉カードを準備して、為政者に抜き身を引っ提げ交渉するという生々しい「外交」の姿である。
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    投稿日:2023.01.22

  • 桜色の世界(sakurairoworld)

    桜色の世界(sakurairoworld)

    海を隔てたとは言え、隣国である現在の韓国。
    何故、併合されたのか、歴史の教科書より少し深いところがありました。
    閔妃暗殺をもう少し詳しく知りたかったのですが、そこは他の書と同様にサラッとでした。

    末のあたりに
    併合とは日本からの見方で
    侵略、植民地化、韓国(朝鮮)からはそう捉えるのだ
    とある
    とても考えさせられる。
    李氏朝鮮が近代化していく風景を垣間見れた本です。
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    投稿日:2022.11.16

  • T.Maeda

    T.Maeda

    日清戦争から日本による韓国併合までの詳細が分かる。
    日本の学校教育では、韓国との関係をほとんど教えてくれなかった。そのため、韓国側の日本への対応に関して理解が難しい。この本を読むことによりそれらの疑問への解があるていど得られる。朝鮮半島の歴史を知り、日本の植民地となった経過を詳しくしることがなければ日本と韓国の関係を語ることはできない。
    非常に近い隣国である韓国と日本が有効的な関係を築くことは両国国民にとっての幸せであることは間違いない。しかし、それが進むのではなく足踏みとか後退が多い。打開の基本は歴史を踏まえることだろう。
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    投稿日:2022.10.21

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