【感想】「幸せの列車」に乗せられた少年

ヴィオラ・アルドーネ, 関口英子 / 河出書房新社
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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ブクログレビュー

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  • choya

    choya

    子どもを他の場所に連れて行くというプロジェクトは多いけれど、ポジティブな結果も生んだというのは珍しいな

    投稿日:2023.09.04

  • まる

    まる

    このレビューはネタバレを含みます

    第二次世界大戦後のイタリア。南部の貧しい子どもたちを北部の豊かな家庭に預けるプロジェクト「幸せの列車」。時代の厳しさや暗さを打ち消すくらい主人公の少年が可愛らしく魅力的でぐんぐん惹き込まれた。多くの子どもたちと同様に列車に乗り込み、北部で新しい家族と夢のような時間を過ごした後、一度は南部に戻り母との生活を再開させるが、家を飛び出し北部の家族の元に戻ってしまう少年。40年後、母の訃報を知り実家を訪ねるところからは、懺悔と償いだろうか。翻弄された人生があまりに酷で切ない。救いは、母親が彼が去った後、一人ではなかったということか。

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    投稿日:2023.05.05

  • yoshinar

    yoshinar

    第二次世界大戦から間もない頃、イタリアでは共産系の人々・組織の手によって、貧しい南部の子どもたちを比較的裕福な北部の家庭が受け入れるということがあった。その子どもたちが北へ移動する際に乗った列車が「幸せの列車」などと呼ばれた。
    そんな話は聞いたことがあるような気もするし、初耳でもさもありなんという取り組みだ。それにしてもこういう南北の格差ってわりと古今東西あるもので、なぜか南のほうが貧しいパターンが多いのはなぜだろう。
    この本の主人公アメリーゴも「幸せの列車」に乗って北部の家庭でしばらく暮らす。そして片親の母親のもとに戻ってくるのだが、母親とのすれ違いがあったりして、家出同然に世話になった北部の家庭に再び世話になり、そのまま大人になる。時がたって母親が亡くなったことで故郷の街を初老になったアメリーゴが訪れるという物語。
    生き抜くために子が親を捨てるという、自己決定をするのはいい。アメリーゴもそのおかげでけっこう著名なヴァイオリニストになった。一方で、母親に対してかたくな過ぎただろうとも思う。かたくなに母親を、故郷を拒否しなければ生きていくことができなかったのかもしれない。そもそも母親とのすれ違いというのも、アメリーゴが北部の家庭で贈ってもらったヴァイオリンを隠してしまったり、北部で世話になった人たちから来ていた手紙を隠していたことによるもので、それはひどいよと思うけど、そこに端を発して母親を拒否したが、最後には初老のアメリーゴにとっての悔いのようになってしまったことが気の毒だ。
    子どものほうがかつての親への思いを悔いるって物語の定石のようなところがあるけど、それって親の深謀を賛美する社会的呪縛のような気もする。
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    投稿日:2023.01.29

  • キムチ27

    キムチ27

    イタリアで高校教師をしながら、執筆をしている筆者。ベストセラーも出す人気作家というのはよく理解できる。
    読み易い、しかも登場人物の裏面も含めた細かな描写が会話や心情をつづりつつ、美味く読み手に伝わってくる。

    第一部~第3部は1946年、第四部は一人称の語り手僕が過去を回顧する形で48年後に時計が進んでいる。
    誰しもが感じる【時の流れの中で 自分の想いと子なる方向へ進んで行った 意に染ま無い選択或いは思いをかんてつさせた為に諸々の軋轢を生んだ】臍を噛む様な感情。

    それを淡々と描くことで読み手に 何かしらの共鳴音を醸し出している~事の良し悪しは別として。
    イタリアのTV語学番組を齧る程度に聴き続けて2年余 思いがけずその内容(地名、食べ物の名前、それぞれの地に住む人々の独特な想い)が随処で重なって面白く読めた。
    日本と異なり もともとは其々の州が独立していたイタリア、ナチスと結託した時代にも、その後でも住民は翻弄された。使う言語は無論、食べ物の異なりが愕くほどあるし、自ずとまつわるエピソードが住民の人生に落とした光と影に連なっているようだ。

    運行されて行った【子供列車】は貧しい南部の子供たちを乗せ、北部の裕福な家に貰われて行く仕組みだった。ただでさえ多感な少年少女の成長期に、2組の親が関わるとなれば、双方に様々な光と影が生じないわけがない。好対照な形でアメリゴとトンマジーノを取り上げている。

    アメリゴの実の父親、異母弟、母のその後、そして甥決して消える事のない血縁と折り合いをつける下りの第四章は 筆者なりのもっとも穏やかな趣向で治まるとこにストン。
    いい読後感だった。

    リコッタチーズをはじめ実に多様なチーズとその料理法、パイに似たパン スフォリアテッラ、そして僕がことのほか気に入った小さなアカイアヌルカ産リンゴなどなど、展開に色、味、口触りなどの微妙な趣を豊富に加えてくれている。秀作
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    投稿日:2023.01.18

  • hatayan8

    hatayan8

    物語を読む楽しさがある。洒落たウィットに富む表現に思わず道草をつまみ食いする様な心地よさを感じる。
    イタリアの南北問題、南の子供達を親子関係を一時的にも断ち切る様な人道的支援、初めて知った。
    著者の祖国の人民に寄り添う意思が根底に感じられ、たまたま読んで思いがけず拾い物に得した気分となった。続きを読む

    投稿日:2022.12.14

  • hosinotuki

    hosinotuki

    このレビューはネタバレを含みます

    戦後のイタリア、貧しい南の子供たちを少しは余裕のある北の人々が家族として迎え入れ支援した事実に基づくフィクション。手放す親の悲しみや世話をした人々の深い愛、そしてその間で揺れ動く子供の感情。少年視点で語られる風景や思いが溢れ出て、静かに激しく心震わせる。
    とてもすばらしい物語です。

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    投稿日:2022.12.11

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