【感想】スマートな悪 技術と暴力について

戸谷洋志 / 講談社
(10件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
2
4
2
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • 麻婆丼

    麻婆丼

    良心を今自分が生きるシステム(社会)へ自動最適化してしまうこと(それも「無意識」に)。そして、その問題がとても可視化しづらいこと。そのことを忘れないで、自分という人間が背負う責任から逃れないで生きるために、どうすればいいのか。

    現時点での私の答えは、こうだ。

    今の地点(システム)に自分が存在しているという事実を意識しながらも、別の地点(システム)も、勿論この世界には存在し得ること、そしてそれは今自分がいる地点と代替可能な地点ではなく、同時に存在し得る地点であり、そこに自分が足を踏み入れることは自分自身が身軽(自分がいる地点にポジティブな意味合いで懐疑的)であり続ける限り、いつでも可能であることを思考の中枢に据えておく。その為にも、自分(人間)の良心の見事なまでの脆さ、危うさに自覚的に、自信を持たずにいることが必要である。

    本書にて取り上げられていたナチスの大量虐殺について、恥ずかしいほどに知識が不足しているので、まずはそこから学び直そう、と思っている。
    その後、自分の考えも洗練されていくと思う。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.02

  • うむ

    うむ

    スマート化と多様性は相反することなのだということが分かって、この先どうなっていくのだろうと不安になる。
    子どもたちが社会適合者になることは難しいだろうし、社会不適合者のままうまくガジェットになってくれたらいいなと思うから、そんなシステムが複数見付かることを願う。

    数年前、保育園に行きたくないと泣き叫ぶ娘を無理矢理引っ張って保育園に連れて行った自分を思い出した。
    娘の気持ちを蔑ろにしてまで時間に遅れずに職場に行きたいと思ったのは、自分が職場の規則を破る人間になりたくなかったから。
    どうしてそうだったのか、よく分かった。

    読みながら色々なことを考えたのだけれど、自分の考えの及ぶ範囲から溢れ出てしまうことが多くて、もう何も考えたくないし選びたくないと思ってしまう自分もいた。
    考えなくて済むなら、システムの歯車になって、それが果たして人道的ではないことにつながっていても、自身がそれを認識することがなく、責められることがなければ、それでもいいのではないか。
    そう思えるくらい、考え始めると考えるべきことが多くて混乱してしまうけれど、それでもどうにかこうにか自分の心に従って行動を決めていくことを、いつか痛みのすえに死んでしまう日が来るまで続けていきたい、と今はまだ思えている。

    続きを読む

    投稿日:2023.06.19

  • mamo

    mamo

    スマートなデバイス、サービスが生み出すスマートなシステム、スマートな社会。スマートさがもたらす悪の可能性を探求する本。

    そこで登場するのが、アイヒマンというわけで、アーレントの議論を軸にしながら展開していく哲学的な技術・社会論、という感じかな?

    一つひとつのスマートなサービスは、便利で、使い始めるとそれなしには生きていけないのだが、全体して、それが人の幸福、社会の幸福につながっているのかは心配な気持ちになる。

    著者は、スマートの語源にある痛みといったところを確認しつつ、スマートが目指す一人一人への最適化という概念をロジスティックスの問題と関連づける。で、ロジといえばということで、ユダヤ人の強制収容所への移送のロジスティックスの専門家としてアイヒマンがでてきて、アーレントやアンダースの議論が紹介されるという流れ。

    では、人々が全体がわからないうちにシステムの歯車になってしまうスマートな悪から逃れようとしても、人間はシステムの外にでることはできない。外に出たつもりが、他のシステムに移る、絡め取られるだけである、というのもそうだろうなと思う。

    そういう八方塞がりのなかで、著者は、自分のいるシステムがすべてと思って、違う可能性を考えなくなることをさけるという観点で、ガジェットという概念をもちだす。

    ガジェットは、もともとの用途とは違う形で、使う器具のようなもので、つまり、あるシステムと違うシステムをつなぐような技術、人の生き方の比喩である。

    この先の議論がもう少し具体的に展開してほしかった気はするが、比喩としてはなかなか面白いかな。(あとがきで、「ずっと真夜中でいいのに。」というバンドの話しがでてくるが。)

    ちなみに、アーレンとのいわゆるアイヒマン論争を通じた議論で、アーレントは、「普通の人」がナティスを支持したということを前提としつつ、「凡庸な悪」はそれとはちょっと違う種類の悪の性質を論じているみたいで、著者の「だれでも悪のシステムに加担する可能性がある」という議論とは微妙に違う気はするが、アーレントの議論も結局のところ「考えないこと」に収束していくので、その意味では、著者の議論は、アーレント理解としても適切なものかと思った。
    続きを読む

    投稿日:2023.02.18

  • 正木 伸城

    正木 伸城

    メモ→ https://twitter.com/nobushiromasaki/status/1616266422711386112?s=46&t=SRwD-zBT0ywmPeWtWPvE5g

    投稿日:2023.01.20

  • 旅する本好き

    旅する本好き

    スマートであることに関して、メリットばかりが語られているが、最適化の中で削り落とされるものは多い。

    一般的には、ノイズとして例えられているが、実世界は、容量を削減するためのノイズ除去のように、機械的であってはならない部分が多い。

    全ての仕組みを網羅的に知る必要はない。
    しかしながら、今この手で操作しているスマホの、画面の奥のバックグラウンドでどのような処理がなされているのか。

    私たちは時として、ただ1人のユーザーから、俯瞰してみるようになければならないこともある。
    続きを読む

    投稿日:2022.12.28

  • yokkie

    yokkie

    スマートな悪

    voicy 荒木博行のbook cafeでマスターが熱弁していたので読みました。

    私もかつてはsociety5.0の中にいて、スマートな未来を作ろうとしていましたが、それが本当に善なのかはあまり疑わなかったですね。
    インフラコストを下げるのは疑うことのない善だった。

    スマートになることによる世界への不感症、システムに組み込まれる人、そしてアイヒマンへ。

    選択肢が多いとつかれる。楽な方へ流れてしまう自然人としての力学を理解して、複数に所属すること、いつでも変われる自分でいることが大事だと思わせてくれる本でした。

    人はシステムの中でしか生きていけない
    続きを読む

    投稿日:2022.08.16

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。