【感想】猛き黄金の国 伊能忠敬 下巻

本宮ひろ志 / サード・ライン
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • まっしべ

    まっしべ

    わが郷土の偉人、伊能忠敬の一代記・下巻。
    天明の大飢饉に起因する社会の崩壊から寛政の改革による幕府主導の学問振興期を経て、忠敬はいよいよ一大事業『大日本沿海図』製作にとりかかることとなる。

    壮年期の忠敬は佐原村に留まらず下総に名が知られるひとかどの人物として伊能家を盛り立て財と名声を得ていく一方で、上巻で亡くなった幼子・忠孝をはじめ妻のミチ、後妻のノブと彼女のお腹の子を相次いで喪ってしまう。大飢饉を佐原は比較的無事に乗り切ったものの非常に沢山の人がバタバタと死に、また、自分よりも歳若い近親を沢山亡くした事から「皆 わしの命を守り わしの本当にやりたい事をやれと…言ってくれてる気がする!」(p91)との思いを強くし、寛政六年より隠居、学究生活に入る。
    想像だが、巨万の財や神様仏様とまで呼ばれる程の名声を手にし、且つ、人の一生の儚さ・脆さをまざまざと目にした彼だからこそ何か‘彼の形’を為したものを後の世へ残したいという気持ちが人一倍強く、「私のやりたい事は 学問として学んだ事を実証したいという事なんです‼︎」(p105)という決意に至り、当時の日本人が誰も知らない日本列島の大きさ、ひいては地球の大きさを実証してみせるという超スケールの夢を懐くに至ったんだろうな。金も名声もあの世までは持って行けないし。

    学者も舌を巻く程の知識と唸る財力、そして何と言っても純粋で直向きな情熱を持った忠敬はしっかり壮健さを保ったまま長生きして、測量器具や手法まで自ら考案開発し、チーム伊能を率い日本の津々浦々を測量して足掛け二十年、想いを共有した弟子達らによってとうとう『大日本沿海図』は完成を見る訳である。当時の人々が初めて日本列島の姿を目にした時の感動はいかばかりか、とても想像が及ばないし、彼らの苦難や困難は筆舌に尽くし難く壮絶なものだったに違いない。

    幕府からの地図の需要が西欧列強からの圧力と防衛を目的としたものだったというのはああ、成る程なあと納得。次なる時代の変化の波はひたひたと確かにそこまで迫っていた訳である。

    やっぱり良いなあ、ロマンだなあ。
    大変胸を熱くさせられました!


    1刷
    2024.1.16
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    投稿日:2024.01.16

  • sakujin

    sakujin

    忠敬個人の願望と当時の幕府の思惑が一致して蝦夷地の測量、東日本の測量、そして西日本を含む日本全土の測量と段階的に仕事が大きくなっていく。何より、生涯を賭けて前人未踏の偉大な事業に挑むという強い覚悟がなけれなできなかったことだが、鎖国中に外国勢力からの防衛という当時の時代背景も絶妙に絡み合った。要はタイミングが良かった。
    作中では1コマであっさり描かれているが、地図作りの道具である象限儀、枝先羅針盤も忠敬の発明とは恐れ入る。これら優れた道具を発明した経緯みたいなところまではさすがに触れられていない。妻や子供、天文の師など自分よりひとまわりもふたまわりも若い人たちが相次いで死んでいく、ただ一人生き続ける老いぼれの忠敬がなぜ自分は生きているのか、生かされているのか自問する場面がラストにあるが、秀蔵やイネの言う通り、天に生かされているとしか言いようがない。
    忠敬らが作り上げたこれまで世界のどこにもなかったほど精緻な地図を見た西洋人が感嘆する様は、日本人として誇らしい気持ちになった。
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    投稿日:2023.04.30

  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    本作に関しては強く、広く御薦めしたい!!
    上巻、下巻の2冊で構成される、かの伊能忠敬の物語だ。
    上巻の、地元の指導的立場になって飢饉のような危機に臨んだという展開を受けて下巻になる。下巻は地元の指導的な立場にもなって活躍していた伊能忠敬が、事業等を後継者の息子に託し、自身が打ち込みたい活動に身を投じるようになって行き、それに邁進する様子が描かれる。
    何処か対立的な感じになる人達にも、智慧や大胆な決断を示して「やってくれる男」と認められて行くような一面が在って、苦しい状況も乗り越えて事業に成功して行く伊能忠敬である。が、身近な色々な人達に先立たれ、それを見送る都度に「生き残ってしまって…」と嘆くが、そこを乗り越えて自身の活動に邁進することとなる。
    何か凄く“力”が分けて頂けそうな感の物語でもある。出くわすことが叶って素晴らしく幸運だと思った本だ…
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    投稿日:2022.01.15

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