【感想】日本企業のポテンシャルを解き放つ――DX×3P経営

福原正大 / 英治出版
(3件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
1
0
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • syamada

    syamada

    DXの本来のあり方と、その実践例を知ることができる本です。
    重要性が認識されつつあるDXですが、まだ、何がDXなのか認識しきれていなかったり、実際にどうすればいいかわからないという方は多いと感じます。
    この本では、技術的な話より、そもそものDXの重要性と、それを実践した実際の事例が多く紹介されています。
    DXに興味はあるが、何かとっつきにくいと感じているビジネスパーソン、特に経営者の方にとって、理解が進む1冊ではないでしょうか。

    【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】

    「問題解決も必要だが、『自社に何が足りないか』というマイナス思考だけでなく、『自社にどんなポテンシャルが隠れているか、それを解き放てばどんな未来が描けるか』というプラス思考で、ヴィジョン達成に向けて行動に移してみる。顧客も、社員も、社会の誰もがワクワクする未来を求めている。」
    「日本企業の問題点は、①DXの本質について経営トップで議論されていない、②そもそものヴィジョンをアップデートしていない、③新しいヴィジョンとDXにふさわしい人と組織をつくろうとしていない、という3つに集約される。」
    「本当に意味あるデータは、会社のヴィジョンや戦略のために存在している。その意味では、データは『つくりに行くもの』で、これがDXの基本的な発想。データは目的を実証するため、あるいは目的自体のために生成されるもの。」
    →他にも、DXの本質とは何かということや、実際の事例なども紹介されていて、大事なことは多いと感じさせられた1冊でした。最も重要なのは、「DXができれば、もっといいことがある」という前向きな考え方だと思います。まずはできるところから。徐々に、できることを増やす。そのために、経営者が結果だけではなくプロセスを重視できる環境を作る。DXのために必要なデータは何で、足りなければ集める。これが私が見て最も大事だと思えた点です。

    【もう少し詳しい内容の覚え書き】

    ・「テクノロジーを活用して、どのように戦略を立てて事業や業務をアップデートするか」というこれまでのDXを巡る議論自体は間違いではないが、「そもそも企業はどこへ向かい、どんなDXを実現したいか」「それを担うべき人材は」「DXへの抵抗感にどう対処すべきか」「組織はどう変わるべきか」という本質的な議論がないまま進んでいることが多い。そのため、「どこから手を付ければいいかわからない」「うまく進んでいない気がする」という悩みも多いのでは。
    ・全社でDXを進めている会社に共通するのが、どんな未来が来るのか、自社はどこに向かいたいのかという「ヴィジョンと哲学」に真剣に向き合っている。不確実性が高まる中、大きな変化を見つめ、自社のあり方を問い直すことの重要性は不変。そうした企業は、本気で人と組織の変革にも取り組む姿勢を見せている。
    ・テクノロジーやDXに否定的な考えや抵抗感である「DXバイアス」を持つ人も、その後のフォローアップによってバイアスはかなり改善される。「抵抗者」が、それで「DX推進者」になる事例も出てきている。
    ・リアルな「場」の持つ強みと、新たに生成されるデータをもとにデジタルが引き起こす大きなうねりが組み合わさった時にソサエティ5.0時代の大きなイノベーションが生まれていくはず。人と人が触れ合う場のみが持ちうる、お互いの理解を深め合い新しい人間関係を築く力は強いが、失われたものが完全に元通りになることはありえない。
    ・問題解決も必要だが、「自社に何が足りないか」というマイナス思考だけでなく、「自社にどんなポテンシャルが隠れているか、それを解き放てばどんな未来が描けるか」というプラス思考で、ヴィジョン達成に向けて行動に移してみる。顧客も、社員も、社会の誰もがワクワクする未来を求めている。

    ○DX時代に問われているもの
    ・組織全体のDXに取り組む。小さなネジ商社だったボサードは、供給者視点から顧客視点に切り替え、新たな「ヴィジョン」を見出し、エンジニアやデータサイエンティストの採用を推し進め、社内の人材を変えていき、部品とそれに関連するデータが集結するぽラットフォーマーへとビジネスモデルを変えた。10年後、20年後を考え、どの会社が伸びるかを考え、そのパートナーになることを考えた結果、テスラの目に留まり、部品の管理業務全般を請け負い、急激に成長した。
    ・DXに成功している伝統企業には、「デジタル改革をどう進めていくか」ではなく、「新しいヴィジョンに向かって、DXに強い人と組織をどうつくるか」を意識しているという共通点がある。
    ・日本企業の問題点は、①DXの本質について経営トップで議論されていない、②そもそものヴィジョンをアップデートしていない、③新しいヴィジョンとDXにふさわしい人と組織をつくろうとしていない、という3つに集約される。

    ○DXの本質と日本企業の課題
    ・あらゆるものがデータ化されるソサエティ5.0の時代が到来しようとしている。デジタル企業がリアル産業に入ってくるだけでなく、「リアルの前提がデジタル」になる。顧客に関するデジタルデータを持ち、デジタル空間で成長した企業が、製造業などのリアル企業を標的にし、飲み込む可能性がある。
    ・DXとは、データとデジタル技術を前提とした組織と事業によって、顧客価値を大きく向上させるイノベーション。DX=イノベーションという点が重要。今の業界秩序を変えるような破壊的な取組であるべき。新産業を創造することが、DXの本質。すべての企業ができるわけではない。ただ、今までのやり方だけでは長続きできない可能性は認識しておくべき。
    ・本当に意味あるデータは、会社のヴィジョンや戦略のために存在している。その意味では、データは「つくりに行くもの」で、これがDXの基本的な発想。データは目的を実証するため、あるいは目的自体のために生成されるもの。
    ・デジタル技術に対して、デジタル技術(AI)が答えを導き出してくれる、取り組むには技術的な専門知識を押さえておくべきという2つの誤解が多い。デジタル技術は「どのようなデータを生成すべきか」は導き出せないので、会社のヴィジョンや戦略に沿って設計されるべき。身につけるべきものは、技術の使い方を考える力。ビジネスにAIを活用する際に問われるのは、専門技術を知ることではなく、「データとAIのセット」を見つける能力。AIの活用は、実はそこまで難しくはない。自社の組織や人材がデジタル技術をどう使うか、という最初の設計ができるようになるための教育にお金をかけるべき。
    ・日本企業の課題は、リスクを積極的にとれる40歳前後の層に力を与えていないこと、意思決定者がデータを使おうとしないこと、科学的なデータに基づく人材配置を行っていないこと、リスクの高い提案をつぶす組織の論理が働くこと、などと思われる。

    ○ヴィジョンと哲学を問い直す
    ・ヴィジョンを問い直す際に、STEEPL(社会、技術、経済、環境、政策、法律)分析、ESG、ニューノーマル、SF小説づくり(具体的な未来をありありと描くための方法を学ぶ)、データドリブン(「どんなデータを取るべきか」を考える)、データの倫理性、プラットフォーム(構築の可能性)、といったツールや考え方が役立つ。
    ・日本企業が「攻めの経営」の重要性がわかっていてもできないのは、大きな変化を好まないから。両利きの経営を実現させるには、経営トップの頑張りはもちろん必要だが、それだけでは限界がある。カルチャーを変え、人と組織を変えなければならない。「深化」と「探索」の部門で同じKPIを使わない、カルチャーを区別する、ということに注意すべき。
    ・構築したヴィジョンと哲学に魂を入れるのは、トップの最優先の仕事。社員は、残念だが、それらを自分ごとと捉えていない。「トップがメッセージを十分に発信していない」のが理由として大きい。時代に合わず共感できないヴィジョンを伝えている可能性もあるので、その場合はつくり直す。

    ○人材戦略を問い直す
    ・ソサエティ5.0時代に、DXを進めていく上で求められる代表的なコンピテンシーとして、創造性、課題設定力、共感・傾聴力、個人的実行力、外向性、ヴィジョン、地球市民力、といったものが挙げられる。
    ・コンピテンシーの育成は、①現状のコンピテンシーを把握し、理想とのギャップを見出す(360度評価)、②上司や同僚と、現状の評価結果と伸ばしたいコンピテンシーを共有した上で、周囲の助けを借りながら開発目標をつくる、③サポート環境で小さい失敗・成功を繰り返す、④再度360度評価で可視化し、成長度合いを確かめつつ進めていく、というステップを踏むとよい。
    ・正面切って「DX」を否定する人はいないが、一人ひとりの心の中のイノベーションに対する「抵抗感」が、進めることを難しくする。データ活用姿勢、リスク選好、深化型/探索型、デジタルへの感情を「DXバイアス」として整理し、免疫マップで真の目標と強力な固定観念を整理すると、克服のヒントになる。

    ○プロセスを問い直す
    ・ヴィジョンからの仮設設定→データ取得・蓄積→顧客に関する新しい洞察の獲得→新たな価値の定義→価値の提供、という探索型創造プロセスをつくる。
    ・プロセスを回すためには、仕組みを整えるだけでなく、失敗への恐れを乗り越えるための取組も必要。「心理的安全性」が創造性を育む。隠れた「弱さ」を見せあえる組織は強い。人によっては、不十分なコンピテンシーを、リーダーとして部下に知られたくないと思うこともあるだろうが、それをしっかり伝えることで、「サポートして欲しい」というメッセージになる。
    続きを読む

    投稿日:2022.03.28

  • stammkneipe

    stammkneipe

    日本企業のポテンシャルを解き放つDX×3P経営。
    形だけのDXではなくて、そもそも何故DXが必要なのか、そもそもから考えよう、という示唆に富んだ書籍。あいも変わらず素敵な本を世に送り出す英治出版さん、大好きすぎる!

    DXは、データやITの活用を前提としたもの、
    そのためには、企業はまずそのためにすべきなのは、ヴィジョンと哲学(Philosophy)、人材戦略(People)、そして、それを実行するためのプロセス(Process)が必要。

    組織の中には、二つのタイプの人材。
    ひとつは、既存事業の深掘を行う深化型、新しい事業を行う探索型。両者は同じ組織には馴染まないが、同じ母体にはいるべき。なぜなら、相互に影響し合うから。一方で、深化型の組織評価で探索型の評価をすべきではない。企業には両利きの経営が求められる。

    価値には、機能、感情、社会が求められる。
    ビジネスモデルを考える際には、しっかりと検討、そして、プロトタイプは、必要最低限の機能を満たすMVP Minimum Viable Productで行い、ときには方向性を転換する必要がある。だが、軸を変えてはいけない。軸とはヴィジョン仮説。その結果、MAP Minimun Awesome Productが出来上がる。

    探索型創造プロセス
    ヴィジョン仮説→データ取得&蓄積→インサイト獲得→新たな価値の定義→新たな価値の提供

    ブルーオーシャン戦略
    新しい価値を創出するために、
    減らす 業界標準と比べて思い切り減らすベき要素は何か
    付け加える 業界でこれまで提供されてない、今後付け加えるべき要素は何か
    取り除く 業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべき要素は、何か
    増やす 業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か

    DXに必要なコンピテンシーとは、
    課題設定力、創造性、個人的実行力、ヴィジョン、共感傾聴力、外交性、地球市民力。
    免疫マップで成長を促す→改善目標、阻害行動、裏の目標、強力な固定観念
    続きを読む

    投稿日:2022.02.22

  • ezamax

    ezamax

    DXと銘打っているが、経営指南者に近い内容。

    個人的には既知の内容が多かったが、様々な他社の文献をうまく組み合わせて、著者の切り口である3Pについて解説している。

    あまり本を読んでこなかった経営者候補や、大企業の経営者候補で、考え方をアップデートしたい方にはおすすめ。
    続きを読む

    投稿日:2022.02.03

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。