【感想】つみびと

山田詠美 / 中公文庫
(50件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
10
13
18
6
0

ブクログレビュー

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  • Limei

    Limei

    2010年に大阪で起きたネグレクトによる二児餓死事件をもとにした小説。

    母親、祖母、子供たちの視点から繰り返し語られるので、それぞれの事情やその時の気持ちがすれ違う様子がわかり、苦しく、読むのが辛かったです。

    今もどこかで助けを求められない母親や虐待に苦しんでいても声をあげられない子供達がいるかと思うと本当に辛いです。
    母親一人が処罰され責められるけれど、一人の問題ではないということを理解し、助けを求めたり助けやすい社会の仕組みがもっとできることを願うばかりです。
    家庭のことだから介入が難しいことも想像できるので、そのためにはどうすればいいのだろう。
    この事件から12年経つけれど、同様のネグレクトや虐待による死亡事件は無くならないのが悲しいです。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • 2002762番目の読書家

    2002762番目の読書家

    辛い時、周りを見渡せば助けてくれる人はたくさんいるのに、
    当の本人はそれに気付かない。気付けない。
    何とか自分の心を保とうと、妄想や逃避してしまう。
    とても身に覚えのある状況で苦しくなった。

    投稿日:2024.01.21

  • takahiro

    takahiro

    お正月に読む本ではありませんでした。
    どこからがフィクションなのか分かりませんが、これが現実の話だとしたら救いがありません。母も子も、余りにも可哀想すぎます。不幸な生い立ちがまた不幸を呼ぶだけではないのは母の兄を見れば分かりますが、そこから抜け出すのは相当の覚悟と運も必要。そして、一旦落ち始めると止められるのは最初のうちだけ、直ぐに勢いが付きそうなると這い上がるのはもう難しい。このような境遇から救うために社会保障や福祉とかってあるのではないのでしょうか。続きを読む

    投稿日:2024.01.03

  • まこ

    まこ

    珍しく文庫を待たずにハードカバーで購入したもの。山田詠美のファンだけど、これは良い意味で山田詠美らしくない作品。でも、山田詠美にしか書けなかったとも思う。

    それだけ大切に、出来るだけ事実に基づいて書かれたのかと推測した。女性として、母として生きることの難しさ、子育てが容易に女性を孤立させてしまう怖さ、母親を愛を求める子どもの純朴さ。

    彼女は十字架を背負って生きていく。少しでもその重荷を一緒に背負ってくれる人たちに出会えるよう祈るばかり。
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    投稿日:2023.09.25

  • ごねすりん

    ごねすりん

    実際にあった悲しい事件をもとにしたものなので、分かってはいたけれど一切救いはなくて読後感は辛い思いになった。

    地獄の歯車には抗えないものなのかな、人間って。大小なりとも皆あるんじゃないかな、負の歯車が。どこかしら錆びてたり、軋んでたり。でもきっとこの人たちの歯車はもうどうしようもなく壊れ切っていて回るたびに阿鼻叫喚を轟かせてたはずなのに。色々と深く考えてしまう、否応なしに考えさせられてしまう。続きを読む

    投稿日:2023.09.19

  • 雨光粒 (れいんぼ) 

    雨光粒 (れいんぼ) 

    このレビューはネタバレを含みます

    大阪で起こった幼児二人を部屋に置き去りにしたまま若い母親が放置して餓死した事件ーー
    ここから構想を得たフィクション作品、だが重すぎる。


    事件を起こしたのは娘 蓮音。
    厳格で真面目な父、でも家庭より自身の立場や理想を優先する。
    母の琴音は小さい子どもを置いて逃げた。
    父は仕事はすれども家のことはなにもしない。親の代わりに、小学生のころから幼い子二人の世話をした。
    歪みはじめる蓮音。自分を自分で大切にできない。

    母親 琴音。彼女もまた愛のない家庭だった。
    つねに暴力をふるう父親。それを耐える母、怒る兄、怯える自分…
    やっと父親から解放されて現れた継父から性的虐待…
    守ってくれるはずの母親も壊れていき、琴音の精神が蝕まれていく。精神病院にもかかったがあまりにも深い傷は人格すら壊していく。
    そういう彼女が家庭から、子育てから逃げてしまうのも仕方のないことと思えてくる。

    この本は幼児置き去り事件にとどまらず、蓮音の幼少期〜事件に至るまでの経緯、そして母 琴音の子ども時代〜結婚、家庭、家を出てからの生活、と二人の母娘の人生がつづられている。
    しかも交互に語られる話が、しだいにどちらのことが区別がつかなくなっていく。


    「母親不適合」と世間から烙印をおされる琴音だが、彼女なりにどうすればよかったのかを何度も自身に問いかける。
    自分が逃げたから、自分が置いて行ったから

    琴音は何回も心の中でつぶやく
    「虐待は連鎖する」と。
    では、虐待された自分が娘のまえから消えたのに、なぜ娘は虐待するのか?
    置いて行った娘と縁がきれたのに、なぜ?
    遠目に一度見た娘家族は幸せそうに見えたのに、なぜ?

    そんな琴音に声をかける音吉の容赦ない言葉が刺さる。
    「そもそも置いて出て行ったあなたは言える立場にない」
    完全に遮断してしまうほどの強い言葉…
    でも琴音はそうしないと精神がまた壊れてしまう。

    子どものころに音吉のような、理解ある大人がいて受け止めてくれたなら、なにかが変わっていたかもしれない。いや、変わっていてほしい。

    救いのない話で苦しい、、


    2010年の事件からすでに10年以上。
    いまだに育児や家事は女性の側に負担を強いられている。
    母子で孤立している女性の叫びは届かない。

    衝撃的な内容だが、学校教育で教えるべきことだと思う。
    子どもを産み育てるには覚悟がいることを。
    途中で放棄はできない。放棄した行く末のことを。

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    投稿日:2023.08.29

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