【感想】保育者の働き方改革 ―働きやすい職場づくりの実践事例集

社会福祉法人日本保育協会, 佐藤和順 / 中央法規出版
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  • かっつ

    かっつ

    なぜこんな酷い環境なんだろうと発すると、管理者はこれでも変えてきたつもり、良くなっていると激昂する今の職場。「一生働きたいと言える職場を作ってみない?」と呼びかける管理者の存在を知ったことで、現状を変える希望が湧いた。読んでいてワクワクする!

    以下は感想ではなく、読んだ上で自園に落とし込んだ実践をまとめたもの。

    ●はじめに
    昨今のニュース等から
    ・保育士の虐待
    ・園バスの事故
    ・3k 勘と経験と根性
    →自園は希望を持って働ける職場か?先生たちは夢に描いた保育者として日々を送っているか?

    ●働き方改革とは?
    多様で柔軟な働き方の実現と労働者一人ひとりの自立的な時間管理に基づく高い時間意識をもった働き方を実現すること
    →「残業がなく、やりがいをもって働くことができ、それでいて園の保育の質は向上している」形を目指すからこほ、働き方の見直しは保育者の働きやすさだけを追求してはいけない
    →そのために必要なこと
    ①リーダーの強い想い
    ②その想いを土台とした保育者の自己決定
    ③その自己決定による保育者の当事者意識

    ●現状の把握
    ・「今までそうやってきた」「みんなそうしている」という安心感から生まれる時代錯誤の工夫のない前例踏襲管理
    ・勤務終了時間を過ぎても業務が残っているので帰れない、先輩保育者が残っているので帰りづらい、先輩が休日出勤するので出ないといけないという気持ちの悪い思考回路
    ・ノンコンタクトタイムの不足による書類や制作物などの持ち帰り仕事の発生・提出の遅れ、及びそれに伴うワークライフバランスの崩壊
    ・各々が空気を読みながら保育の正解を探し続けて「叱らないと叱られる」保育でストレスを溜め、歪んでいった人間関係
    ・「園の伝統を守るためにブラックでも仕方ない」などというお人好しの学生に出会える時代ではないという現実に向き合えず、多くの先生たちを逃してきた過去
    ・子どもを理解するという視点のない一方的な価値観の押し付けと、質の向上に不可欠であると言われるエビデンスとなる記録や話し合いが一切行われていない保育

    ●園長の役割
    園長は、時代の要請に応えつつ、園がこれまで大切にしていた価値とのバランスを取りながら、独自の文化を醸成すること
    →前年と同じことを何の変化もなく漫然と繰り返すことは継続ではない。実践者や対象者、時代が変われば必ず実態に合わない箇所が表れ、実践の質は確実に低下する。これまで着手した変化をベースに、「譲れないライン」を明確にしながら、一気に職場を変えていく。

    ●働き方改革に必要な考え方
    ①多様な人材が活躍できる企業・職場とするために、管理職自身が時間制約を自覚する
    → 無駄な業務の削減や仕事の優先づけなどを考慮しない、過去に出来上がった安易な残業依存・持ち帰り仕事依存体質によるマネジメントを捨てる
    ※「パーキンソンの法則」仕事の量は完成するために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する=時間があればあるほど仕事をしてしまう

    ②目的の共有がなされていないことで、前例からの「こうあるべき」という意識が強い管理者の顔色を伺いながら、正解を探す保育になっている現状を自覚する
    →法人理念を伝えると共に、部下の意向を傾聴し、コミュニケーションを取る姿勢(1on1ミーティングの活用)を持つ
    ※「幼稚園における学校評価ガイドライン」「保育所における自己評価ガイドライン」をチェック

    ③就業規則(法律遵守+保育者のキャリア継続のための改訂)や、しなければならないこと等、職場成員間での情報共有を徹底し、全体への見える化を目指す
    ex.伝えたつもりなのに…伝言ゲームからの脱却

    ④保育者が就業継続の困難感を抱えたり労働環境が低下したりすることは、子どもの育ちの保障に支障をきたすことと、保育者不足による経営危機に繋がることを自覚する
    ex.預かりの時間

    ⑤仕事に対するやりがいの強要や、個人の能力・努力が不足しているという認識



    ●働き方改革の内容
    1.業務の見直し
    ★仕事の言語化
    ・保育者の専門性が必要な業務
    ・保育補助者でもできる業務
    ・作業時間(書類作成・行事準備)の数値化
    ・しなければいけない仕事/したほうがいい仕事/していて楽しい仕事/なくてもいい仕事…などの分類
    ・誰が、何を、どこで、いつ(いつまでに)やるのかを明確にした指示

    ★業務の効率化
    ・コミュニケーションツール(ラインワークス)導入
    ・共有カレンダー導入
    ・1人一台タブレット(電子連絡帳変種兼撮影用)
    ・スマートスピーカー?

    2.保育者の支援
    ★適材適所の配置
    ・業務分担を行い、各々ができることをしっかりする。ジェネラリストよりもスペシャリストの養成を目指し、その人でなくてはならない得意分野を担ってもらう

    ★多様な就労形態とワークライフバランス向上
    ・早朝保育のみ、延長保育のみの臨時パート職員確保
    ・通常の正規職員としての働き方が難しい中堅職員への準社員制度(時短勤務の正規職員設定)
    ・年次有給休暇消化率向上
    ・完全週休2日制
    ・給与形態、賃金規定の見直し

    ★採用・研修
    みんなで決めて、みんなで育てて、みんなで長く働く
    テーマ別に園内研修を小グループで行うp80






    3.保育の質の向上
    ・保護者アンケートによる行事見直し

    ・保育者アンケートによる負担となる業務チェック

    ・実際の保育に対応した、園の保育者が理解して納得できる具体的な保育目標の設定

    保育の中で何を大事にしているのか、どうやって子どもの育つ環境を保障しようとしているのかを明確に
    幼稚園の教育目標

    個人情報管理

    個人への尊重

    ●目的=保育の質の向上
    ・法に則った安心して働ける環境
    ・5年後、10年後の自分の姿を描ける職場
    ・仕事以外の好きなことも含めた個人の成長促進
    ・子どもとの関わり方を相談できる時間の確保


    勘と経験ではなくエビデンスに基づいた教育

    保育室の掃除による衛生面の向上

    ノンコンタクトタイムの確保と、そこでの業務内容定義(記録・カンファレンス・環境・管理業務など)

    子どもを理解していく土台には、子どものことを語り合える保育者関係が必要であるという視点
    研修で保育者の課題解決や意識改革を目指しても、人間関係が崩れていたら全く意味がない

    ギスギスした関係では、ミスがないように、また意見が否定的にならないようにと無難なことしか発言できない
    みんな違う考えをもっている
    得意不得意があって当たり前
    互いを信頼し、また信頼されている安心感
    「〇〇であるべき」「〇〇のようにすべき」という固定的な捉え方から脱却し、当たり前を見直す姿勢と対話から保育を変える

    保育者を変えていかなければ、保育は変わらないという間違った思い込みで保育者を追い込む、無言の圧力と陰口で「先生(主任)なら〇〇すべき」という押し付け


    行事での経験は主体的な学びではない
    行事は誰のためのもの?
    「一方通行」の力が入り過ぎていて、一人ひとりが主体的に行事を作り出す姿がない
    完成度を求めすぎて子どもに負担になる行事
    遊びの時間を大きく削る姿をもったいないと思わない姿勢


    生活よりも遊びを中心に考える
    子どもが自分でできる、子どもがとことん遊び込める2点を軸に、保育の構成を見直す
    「経験したことが遊びのきっかけになる」という視点が必要
    行事を①不要②小規模化③今まで通りの3つで精査
    丁寧な説明とドキュメンテーション、保護者参加型行事の増加で不満解消
    今後求められる保育者とは、経験を背景とした「そつなくこなす保育者」ではなく、発達理解と成長伴走のできる「パートナー的保育者」
    不必要な義務感(苦手なことは自分で解決しなければならない)や負担感(保育や業務の詳細は担任一人に委ねられる)がなくなり、保育者自身が主体としてクラス運営や遊びに入ることができる

    複数担任による得意分野を活かす参加協力
    そもそも担任の仕事、副担任の仕事とは?


    クラス計画を他の保育者と話し合うチーム実践

    ★保育という仕事が子どものために何かを犠牲にしながら行うものではなく、子どもとともに保育者も成長し、自身の学びや生きていく糧として価値のあるものになると感じる

    管理者が変えるのではなく、保育者自身が当事者意識をもって見直しに参加する

    言うこと聞かない子ばかりでしんどい

    当たり前を見直す気づき

    教育の難しさ=正解がないこと
    ・どこまでやっても完璧にならない
    ・マニュアル不在なので個人の経験頼み
    ・他者の目を気にしがち
    保育現場特有の事情
    ・数字に表れない結果
    ・数年後の自分の姿が見えづら


    改革ロードマップ
    22年度
    1月〜3月
    ・資産確認
    ・タイムカードの導入
    ・法人理念の策定
    ・就業規則の確認
    →有給付与日数、有給取得率、残業体制、勤務日数、時間非固定の休憩時間確保(最低基準人数の確認要)、バケーション休暇(+経験の伝達)
    ・ICT環境整備(準備)
    →指導計画の電子化、連絡帳の電子化
    ・1on1スタート
    →事前の保育者アンケート
    →業務の見直し/行事のRe:デザイン
    →理想の保育、職場環境、ライフスタイルの語り合い

    課題は良好な人間関係→チームワーク

    23年度=働き手改革第一弾
    4月〜7月
    ★園長の宣言
    これまでのマネジメント不足を謝罪
    働くことの大義を説く
    職員に対する思いを語る

    ★副園長の宣言
    不信感への謝罪
    謙虚な姿勢を心がけること
    主体性を持って意見してきて欲しいこと
    自分にできること、できないこと

    ・物品整備
    →数と場所の見える化+入れ替えの定義づけ
    →職員室の拡大と個人ロッカーの設置
    ・次年度の保育者を募集する
    ・保育補助者を募集する
    →ノンコンタクトタイム確保が主目的

    7月〜12月

    ・次年度からの保育方針転換構想


    24年度=保育の質向上スタート
    ・保育場面動画撮影
    ・保護者研修
    ・地域公益事業(?)の着手
    ※社会福祉法人の責務とは???
    ・地域間の連携
    ・保育者の想いを受け止めるカウンセラーの導入
    続きを読む

    投稿日:2022.12.10

  • おもち

    おもち

    働き方改革が進む中、保育業界はほかの業種に比べ遅れをとっているのが正直な所。保育が主である所、そして管理職がIT機器に弱い、手書きの良さに拘るなど(一部理解はできるが)要因は様々。詳細な成功例を掲載しつつも、失敗例やあくまでも自園に合わせたスタイルを確立するよう伝えている所など、これから改革を行おうとする方々にとっては心強い1冊となるのではないか。続きを読む

    投稿日:2022.08.14

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