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ジェローム・K・ジェローム, 中野善夫 / 国書刊行会 (4件のレビュー)
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淳水堂
ジェローム・K・ジェロームと聞いたら「ボートの上の三人男〜♪」という歌(メロディは適当に)が頭を流れてしまう 笑 https://booklog.jp/users/junsuido/archives/…1/4122053013#comment そんなジェローム・K・ジェロームがどんな幻想譚を書くのかと思ったら、それぞれのお話が不思議なお話としても良いし、昔からいる幽霊を現在の社会問題や人間心理と結びつけるが説教臭さがない語り方も良いし、ここに収録されている全ての話が良質なものばかりです。怖い話ではあっても、嫌〜な気持ちになるものはありません。 イギリス人が、幽霊や妖精を極当たり前のものとして捉えていてる感覚が面白いです。 『食後の夜話』 クリスマスイブの客たちがそれぞれの体験した幽霊譚を語る。 クリスマスイブっていったら幽霊だよね! クリスマスの客は、幽霊が出る部屋に泊まる権利を主張できるよね! …と、盛り上がる語り手 笑 イギリスの古い屋敷や家具には当然幽霊がいるもので、コミュニケーション取りづらくて困った同居人扱い。 イギリスの幽霊話で、こんな感じのお話ってありますよね。 『ダンスのお相手』 ダンスホールにいる殿方ってダンス下手よね〜 これなら機械人形のほうがましじゃない〜? かしましいお嬢さん方のおしゃべりを聞いた機械職人は張り切った。それなら絶好のダンス人形を作ってみせる! ダンス人形は完璧だった。しかし機械が止まらなくなってしまったから大変なことに!! ==文体は無邪気なんだが、起きたことは阿鼻叫喚のスプラッターでは… 『骸骨』 自分に復讐しようとした男が死んだ。 その数年後、手に入れた医学用の骸骨からあの男の声が… 『ディック・ダンカーマンの猫』 売れない戯曲家ディックの元には独特の目をした猫がいた。ディックが言うには、この猫は飼い主を成功するアドバイスをくれるらしい。ディックはその後戯曲家として大成功した。 その後でもあの猫を色々な友人の家で見かけるんだ。 『蛇』 粗暴だった男がすっかり変わった。彼は語る。 数年前に妻を連れてジャングルに赴任した。そして妻の臆病を治すと言って、妻が怖がる蛇の死体を部屋に仕込んでおいたのだが… その事件が彼の人格を変えた。それ以来、その時の情景が常に頭にあるという。 『ヴィブリイの霊』 ヴィブリイの家に幽霊が住むことになったらしい。ヴィブリイはすっかり幽霊との交流に夢中だ。だが周りにはヴィブリイが馬鹿なことをやり、友達を失い、仕事を失っているようにしか思えない。 まあ結局ヴィブリイは目を覚ましたよ。大金は失ったけどね。 『新ユートピア』 全ての人間が、完全に平等であれば、世界は正しく平和で幸福でいられるだろう。 私が眠りから寝覚めると千年経っていた。私の時代に願った、全ての平等は叶えられているのだろうか? ==いわゆるディストピア物のブラックユーモアなんだが、千年眠ってる男が「起きるの忘れちゃったんだね」と博物館に飾られてるというすっとぼもあって楽しい。 『人生の教え』 船旅で知り合った紳士に気に入られた私は、紳士の頼みを聞くことになる。紳士は言う。 私は過去のことをすべて覚えている。数百年前、城に住んでいたこと。数十年前、学生同士で君と女性の愛を争っていたこと。私達はまた会えるかもしれない。だから私のことを覚えておいてほしい。 ==魂は不死というか転生物というか。 しかし生まれ変わりがテーマナノではなく、過去の人生(前世という呼び方をして良いのか)を覚えている男が人生の教えを受け取ったということが大事なんだろう。 <成功が僕を弱くしていた。神は僕に弱さと失敗を与えて、強さを学ばせてくれた。P189> 『海の都』 海辺の都市で戦ったデーン人とサクソン人。 だが邪悪な声がして、サクソン人はデーン人へ襲いかかる。 海辺の都市には神の罰が下り、修道士たちは何年も祈った。 これはただの寓話だろか?いや、かつての都市がなくなろうとも、そこに修道士の姿が見えるではないか。 『チャールズとミヴァンウェイの話』 チャールズとミヴァンウェイの若すぎる結婚は数年で破局に至った。 故郷に帰るチャールズの船は沈み、人々は彼が死んだと思った。そしてチャールズも自分は死んだことにして人生をやり直すことにした。 何年も経ち、チャールズはミヴァンウェイの住む村を訪れた。 二人はお互いを亡霊だと思い、心からのお詫びを交わすのだった。 ==幽霊が存在しない幽霊譚!しかもなかなかいい話。 『牧場小屋の女』 狩りの途中で避難した小屋には「牧場小屋の女」と呼ばれる霊がいるといわれていた。 かつて、山小屋で暮らす夫婦と、近くの牧場小屋の番をする女の因縁は、彼らの死後も続き、小屋に泊まる男は死ぬという。 ==この短編集には、ユーモラスだったり、なんかいい話だったりという幽霊譚が多いのですが、これは直接的に怖いというか容赦ない怨念話。 『人影』 語り手が幼い頃過ごした村の言い伝え。 海には怪物がいると言われ、夜は人間でないものが訪ねてくるという。 『二本杉の館』 二本杉の館で出会った娘としばらくの逢瀬を楽しんだ若者は、自分の所属する階級に戻っていった。 社会的にも成功し、結婚もしていたが、ある時自分が「二本杉の館」の町にいることに気がつく。 ==置いてきた青春、ってやつですか。 『四階に来た男』 アパートの四階を借りに来た余所者。 彼と会った人たちは、自分の真の姿を現さずにはいられなくなる。 ==キリストを彷彿とさせると思ったら、解説でもそのように書いてあった。キリスト教圏の小説で、キリスト(を具現化する人物)が人間の間に存在していて、その存在にふと気がつく、というものってありますよね。 『ニコラス・スナイダーズの魂、あるいはザンダムの守銭奴』 真っ直ぐな若者と、老守銭奴が、記憶はそのまんまで、「善良な魂」と「意地悪な魂」とだけが入れ替わる話。 善良な魂と、愛とが勝つということで、この作者はいい人だと思う。 『奏でのフィドル』 勝者は国王の娘と結婚できるというフィドル奏者の大会が行われる。 貧しいフィドル弾きテラスは悪魔からフィドルを受け取る。だがこのフィドルはただただ音楽に捧げる心でしか奏でられないものだった。この世の栄光すべてを捨てて打ち込む真の芸術はあるのか。 『ブルターニュのマルヴィーナ』 紀元前のフランスの妖精「白い貴婦人」のマルヴィーナは、ある行いを咎められて永遠に彷徨うことになる。 1914年、イギリス人パイロットクリストファーは、フランスの森に眠る美女を気に入りイギリスに連れてゆく。マルヴィーナは、人間の性質を変えることができるという。だが同じ男性に三回キスされたら妖精ではなくなり、普通の女になるのだ。 ==イギリスの人々がマルヴィーナをひと目見て「妖精じゃないですか!」とか、「マルヴィーナさんにお願いがあるんだけど」とか、イギリスには幽霊も妖精も当たり前の存在で人間と一緒医いる感じがいいですね。 そして古代のフランス人妖精が、1914年のイギリスの男系社会を変えてみるという現代的なテーマも入っているのだが、非常に自然でユーモラス。続きを読む
投稿日:2022.08.09
ao-neko
幻想短篇集。怪奇なものから奇妙な話、ファンタジーと読み心地はいろいろです。 お気に入りは「チャールズとミヴァンウェイの話」。たしかにこれは幽霊譚といえる物語でしょう。だけど実は幽霊が出てこない、という…ところが面白い一作です。 恐ろしいのは「ダンスのお相手」。どのような惨事になっていたかはまったく描写されていないのですが、その方が怖いのかも。ラストの一文が何もかもを表している印象で恐怖を引き立ててくれます。 猫好きとしては「ディック・ダンカーマンの猫」が実に素敵で惹かれます。この猫には来てほしいかも。続きを読む
投稿日:2021.11.06
Pukasan
『ボートの三人男』で有名なジェローム・K・ジェロームの短篇集。怪奇、幻想、ケルト妖精もの、SFと、この一冊の中にいろんなテイストの短篇が勢揃い。どれも甲乙つけがたい面白さでした。
投稿日:2021.10.01
ねえな
ハードカバーで買うほどの興味は無い作家だったけど、 少し待ってれば文庫版でちょいとお安く買える事も無さそだしでポチった 最近は国書刊行会とかのじゃなくても、電子版が出ても文庫版が出ないのあるよな… …(/_;)続きを読む
投稿日:2021.08.01
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