【感想】とがったリーダーを育てる 東工大「リベラルアーツ教育」10年の軌跡

池上彰, 上田紀行, 伊藤亜紗 / 中公新書ラクレ
(13件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • stella63

    stella63

    文章がとても読みやすい。
    リベラルアーツが注目されて久しいけれど、
    そもそもなぜ学ぶ必要があるのか、
    変化の激しい世の中でどういった視点が求められているのか、
    そして自分で考えて行動するために、どんな学びが必要か。

    今の最先端技術は5年後陳腐化している。
    そうした技術ではなく、学び続け研究し続ける力を身につける、というのがとてもしっくり来た。
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    投稿日:2023.01.15

  • rafmon

    rafmon

    本来、自由人であるためのリベラルアーツだが、現代社会には自由市民など少なくなり、社畜と揶揄されるような(あるいは自嘲するような)都合良く洗脳された労働の奴隷が、別の奴隷のためにリベラルアーツを学ぶ時代。現代社会の悲劇として語る上田紀行氏、東工大のリベラルアーツ研究教育院長の発言は非常に考えさせられる。

    教育の名の下に奴隷を育ててはならない。しかし、そうは言うが、社会にとって有用な人材だから用いられるのであり、それが所謂労働ニーズになるなら、我々は奴隷たることから逃れられず、自由市民にはなり得ない。我々自身も社会からの期待を将来像に設定するから、とがった夢を見ることも叶わない。つまり、社会的動物ゆえ、しかも、奴隷制が廃止された後の概念として、その時代のリベラルアーツをそのまま当て嵌めるのはおかしい話だ。

    即効性の高い知識は、環境変化と共に、直ぐに役に立たなくなる。基礎的、古典的な学問は歴史の風化を逃れ普遍的に有用である。ここでも、役に立つか立たないかという話をしている。つまり、元々、自由市民たるべきリベラルアーツは、誰かの役に立つための手段に変化したのではないのか。ならば、リベラルアーツで新たに規定すべきは、単に、古典か流行かという尺度なのかも知れない。メカニカルアーツとの境目がぼやけている。そして、それで良い、と思った。
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    投稿日:2022.09.15

  • そらくも

    そらくも

    3人の著者がそれぞれのバックボーンを元に、リベラルアーツを大学に根づかせるために、いかに格闘されたのかがとてもよく分かりました。上田教授の学内でのやり取りに重いものを感じました。

    投稿日:2022.07.24

  • doggy

    doggy

    日本のトップにこんなアツい教員がいる大学があって安心する。

    学び直す、考え直すとか肯定できたらなーと思ってたところにこの本来は刺さった感がある。

    投稿日:2022.05.24

  • yoshinar

    yoshinar

    東工大ではここ10年くらいをかけ、「リベラルアーツ」の名のもと、理工系の学生たちに文系的な知を体得してもらう取り組みをしている。本書はその取り組みを中心的に推進してきた池上、上田、伊藤3氏によるもの。各氏の論稿と鼎談を収載している。
    自分も含め、文系の人々は理系からっきしって人けっこういるけど、社会に生きたり本読んだりしながら生きている以上、いくら苦手意識をもっていたとしても理系の人のほうが文系分野を取り込みやすいだろう。そして理系の人が文系の素養(リベラルアーツ)を手にすればよりよい世のなかがつくりやすいような気がする。たとえば、科学技術を純粋に探究しているうちに核兵器ができちゃうようなことがあるとして、リベラルアーツや人間の根幹に関する知があれば、倫理的にすべきでないことを止めるなり逡巡するなりといったことができるのではないだろうか。
    著者3氏を中心とした東工大での取り組みの様子(特に上田氏執筆の章)は非常に読みごたえがあった。リベラルアーツという新たな方向性(実は東工大のそもそものお家芸だったのだけど)に向かうにあたり、周囲の反対や非難を受けながらも一歩ずつ進めていった軌跡は、いわばリベラルアーツ的な知をもって、東工大にリベラルアーツを植えつけた実践例ともいえるのではないだろうか。
    とはいえ、やっぱり「いい大学」だからできたんだろうなとも思う。学生集めや経営に必死な大学では、とてもこんな時間と余裕をかけた取り組みはできないだろうな。
    ついでにちょっと批判めいたことを書くと、リベラルアーツの取り組みは「とがったリーダー」を輩出するためのようだけど、リーダーってとがっているほうがいいんだろうかとまず思う。もちろん、とがったリーダーが必要な場もあるだろうけど、そうじゃないタイプのリーダーが最適な場もあると思うから。
    さらにいえば、リベラルアーツがリーダー育成と結びつけられているのもちょっと疑問。東工大という「いい大学」の自負として、歯車になる人でなくリーダーになる人を育てるんだっていう意識(エリート意識的なもの)が見え隠れする……と思ってしまうのはひがみだろうか。リベラルアーツが生きるための知だとすれば、それはリーダであろうとなかろうと身に着けるべきことなのでは。
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    投稿日:2022.02.26

  • しん

    しん

    とがったというタイトルは誤解を生むかもと思ったが、内容はいいと思った。現代の風潮で、とがりたいと思って学ぶと、先端のものだったり、専門的すぎたりするものを指向してしまうのではと。内容は、そうではいけないと言っていると思う。世間に対してとがるという言葉の意味合いを変える、または、別の言葉を求める人々を望む、という本だったと思う。ラディカルであるためには時代の(組織の)見落としを知っていなければならない。そのために全体像。人類が積み上げた知恵、時代を経ても簡単には廃れない王道的な、知恵の大地を手に入れろと僕はとらえた。特にエリート学生には、リーダーとしての全体視が不可欠だと。20世紀的なプロフェッショナル観では一点に突き進むばかり。それではいけない。やめることができない社会を強化してしまう。再考すること、別プランを持つこと。21世紀の知の心得として、自分の内側に垣根を設けないことだと。規定してはいけない。自分を規定してはいけない。希望することはいい。理想を語るなら、リスクを考えられなければいけない。今、あまりに、決定に向かって行きすぎると思う。目標を立ててとにかく結果だ、という方法が高まりすぎ普及しすぎている。大きくとらえれば、20世紀の誤り、やりすぎ、反省するところはこういうところだと思えるようになった。続きを読む

    投稿日:2021.12.17

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