【感想】失われたいくつかの物の目録

ユーディット・シャランスキー, 細井直子 / 河出書房新社
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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2
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1

ブクログレビュー

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  • yupikado

    yupikado

    題名で読むことを決めたので、どういう内容かは全く把握しないまま読み始めた。
    失われてしまったもの12個に関する話を短編小説のような形で書いたもので、翻訳ということもあって正直読み進めにくかった。
    お気に入りは、森の百科事典と共和国宮殿。続きを読む

    投稿日:2024.03.10

  • ASHITAKA

    ASHITAKA

    このレビューはネタバレを含みます

    緒言
    p13
    たとえばゾウは、臨終を迎える仲間の周りに集まり、鼻でその個体に何時間も触れながら、興奮して鳴いたり、死んでぐったりした体をもう一度起こそうとしたりする。そして最後に亡骸に土や枝をかけてやる。仲間が死んだ場所を、何年も後まで繰り返し訪れたりもする。これには疑いなく高い記憶力と、ことによるとある種の来世のイメージを要すると思われるが、それが私たちの持つ来世のイメージより見劣りするものと考えてはならないし、そもそも双方とも検証のしようがない。

    p17-18
    未来を支配しようと望む者は、過去を廃さなければならない。あらゆる真実の源を名乗る者は、先駆者たちの記憶を抹消し、いかなる批判的思想をも禁じなければならない。

    p19
    廃墟は過去と未来が一つになるユートピア的な場所だ。

    ツアナキ島
    p41
     私は地球の内部の力に思いを馳せずにいられなかった。その力が作用している所では、隆起と沈降、興隆と衰退という太古の循環が短縮される。

    カスピトラ
    p52-53
    ライオンの勇気を称えることわざは正しい。恐怖が彼を襲うことはない。

    ゲーリケの一角獣
    p74
    すべての限界は越えられるためだけにある。



    詩的で濃厚、不思議な読後感。
    ちまちま読み進め、ようやく読了。
    厚さはそうでもないけど、かなり読み応えがありました。現代文学のようなするする読むことに慣れた読者は嫌いそう。

    執拗なまでの名詞の記述、くどい表現とユーモア豊かな言い回しが楽しい。これは長い詩。読み終わったあと、あるいは読み進めている最中、自分は何を読んでいるのだろうかという問い、というか忘却。まるで、ここではないどこかに連れ去られたような感覚。少なくとも私にとっての読書の楽しみを本書は体現していたとも言える。まあ読みやすくはないので、それでも短編集だから飽きたら他を読む。で、戻ってくる。
    無駄でいい。でもその中に誰にも言えないような(あるいは言わなくてもいいような)気づきがあれば、それはすごい有意義なこと。
    国内でバズることはないけど好き。翻訳面倒くさそうだなと思っていたら、訳者あとがきで想像以上にシステマチックに翻訳作業を進めていて興味深い。限りなく黒に近い紺色の用紙に黒で印刷したイメージも素敵。本の装丁もちゃんとデザインされている。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.12.13

  • ku-suke

    ku-suke

    私の好みに全く合わない文章で、たいへん読みにくい。欧米人の書く文章によくある、従属節や形容詞のやたらに付いた、説明・装飾過多の長〜〜〜い一文が続いて、著者の言いたいことの核がわからなくなってしまう(意外とたいしたことは言っていないかも)。著者の思い入れや自意識、自己陶酔感が強すぎて、辟易してしまう。
    内容は今は世界から消えてしまったものごとについてで、面白そうではあるのだけれど、文章が無理すぎて…断念。
    翻訳も、個人的には日本語の文章としてわかりやすく簡潔に直してもらった方がおそらく読みやすくなるのだけれど、原文とあまりに離れてしまう翻訳もできないだろうし… 難しいですね。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.10

  • hosinotuki

    hosinotuki

    目録となっているが、12篇の短篇集のようでもある。
    今はない物への偏愛、憧憬と幻視による物へのオマージュ。論文調だったり、小説のようだったり、日記のようなものまであって一つ一つが面白い。
    カスピトラがローマの見世物になったりフリードリヒのグライスヴァルト港の絵がリク川の源泉を辿る旅仕立てになったりして想像の行くところがいい。
    そして何より本としての佇まい、章ごとの仕切りの美しさ、ため息が出ました。
    続きを読む

    投稿日:2023.03.17

  • 溺死

    溺死

    序文が素晴らしい。閉じられた一冊の本は一個の完成された世界であり、それは過去と未来が一つとなる廃墟の世界なのだ。

    投稿日:2022.04.02

  • 文学ラジオ空飛び猫たち

    文学ラジオ空飛び猫たち

    文学ラジオ空飛び猫たち第39回紹介本。 「もっとも美しいドイツの本」に選ばれた本書。装丁も作家でありブックデザイナーでもある著者によるもの。まずは「はじめに」と「緒言」だけでも読んでもらえたら。本こそ完璧なメディアという筆者の考察が本に備わる可能性を大きく膨らませてくれると思います。見た目も文章も美しく本好きには魅力的な一冊。筆者が描き出すイメージに触れるのは豊かな体験になると思います。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/39-e102vcl続きを読む

    投稿日:2021.12.31

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