【感想】雷雲の龍 会津に吼える

吉川永青 / 講談社文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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ブクログレビュー

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  • たすきがけ

    たすきがけ

    このレビューはネタバレを含みます

    明治維新の話は、読んでいて辛い話が多いです。
    何故、戦わなければならなかったのか、何の為に戦うのか、殺し合うことしか道は無かったのか。

    正義と誠とは何なのか、考えさせられました。

    新選組も、これまで読んでいた本のイメージとは違った形で出てきたので、興味深かったです。

    立場は人を作る、という言葉が印象に残りました。

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    投稿日:2022.02.25

  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    題名を見れば「戊辰戦争の会津での戦いの関係?」と思うが、案に違わずクライマックスは会津での戦いとなっている。
    物語は江戸の剣術道場の朝から起こる…
    著名な医師の屋敷の一部を借りて営まれている道場で、50歳代に差し掛かっていた道場主が起き出してみれば、雪模様の寒い朝であった。何時もの朝の様子が展開されて行く中、買物に出ていた者の戻りが遅いと思っていれば、血相を変えて帰って来た。「御大老が…」ということになった。かの<桜田門外の変>の朝だったのだ。
    この道場主が本作の主人公である。森要蔵という人物だ。
    北辰一刀流の玄武館という道場に<四天王>と呼ばれた名高い剣客達が在った。森要蔵はその一人である。作中で過去経過が少し出て来るが、幕末期の動きが大きくなる<桜田門外の変>の頃には、飯野保科家の剣術指南役として禄を食むと同時に自身の剣術道場の運営も続けていた。
    飯野保科家?作中でも「会津松平家の縁戚」という言及が在る。戊辰戦争で最終盤に至るまで新政府側と戦うことになった会津松平家である。それが故に、その縁戚である飯野保科家に所縁の森要蔵は厳しい運命を辿って行くことになるのだが…
    飯野というのは、現在の千葉県富津市の一部である。そこに本拠地となる陣屋を構えていたのが、2万石の大名であった保科家だ。
    会津松平家は、江戸幕府の2代将軍であった徳川秀忠の庶子、3代将軍であった徳川家光の異母弟であった保科正之が起こした家だ。徳川秀忠の庶子であったが、嘗ての甲斐・信濃の戦国大名であった武田家に所縁の保科家で養育された保科正之は、信州高遠保科家を継いだ。そこから徳川家光が彼を重用するようになり、加増を受けて移封し、会津領を知行するようになって行く。「やがては“御一門”として、保科家は松平家に改姓」という流れも出ようという中、「保科家の名を遺すべき」ということで保科正之の異母弟ということになる人物が保科家を受継ぐということになる。そして本拠地の飯野の他、関西方面の飛び地を知行することとなり「2万石の大名の保科家」が起こって受継がれて行く。この森要蔵を剣術指南役として召し抱えていた保科正益(まさあり)は、飯野保科家2万石の10代目の当主であった。因みに、保科家は武田家が滅ぼされた後、関ケ原合戦の時期(1600年)よりも以前の1580年代から徳川家康陣営に在ったことから「譜代大名」であった。
    <桜田門外の変>の朝に物語の幕が開くが、「攘夷運動」を号する実質的には「暴徒の群れ…」のような一団との争いや、下関での外国船への砲撃や<生麦事件>に関すること、長州への出兵の顛末、大政奉還と時代は少しずつ動く。森要蔵と手近に在った門弟や家族はどのように生き、森要蔵は何を思うのかということで展開して行く物語である。
    幕末の激動に関して「幕府の側、または中枢に少し近い地位に居た人の周囲での観方」というようなモノが本作では綴られていると思う。森要蔵が仕えた保科正益は、長州へ出兵するような事案で忙しい最中に大坂での役目に就き、更に要職である若年寄も務めている。森要蔵はその配下として、様々な仕事の依頼を受けて行動する場面も在った立場なのだ。或いは「幕府が護ろうとした何か」の側で活動した男の生き様、個人として護りながら次世代に伝えようとした“誠”とは何であったかいうのが、本作の物語かもしれない。
    物語終盤に見られる、劣勢の中での勇戦という様子は非常に熱いモノが在った…思わず手を握ってしまった…
    <玄武館四天王>と同時代には勇名を馳せた剣客ではあったかもしれないが、現代では然程の高い知名度でもないかもしれない森要蔵という主人公である。或いは、そういう人物であるが故に「市井の自身の場所で考え、行動する個人」という感になり、「時代モノのファン」を自認するでもない読者にとっても興味深いかもしれない。広く御薦めしたい感の作品だ!
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    投稿日:2021.03.18

  • windfuku

    windfuku

    内容も知らず読んだが、好きな幕末の剣豪物で面白く読めた。

    主人公は北辰一刀流の開祖・千葉周作のもとで四天王のひとりと謳われた大剣士・森要蔵。要蔵は大のお酒好きで小藩の剣術指南で江戸で道場を開き多くの門下生を持つ身。時は幕末、藩主が会津の容保と近く戊辰戦争へ移り己の信じる「誠」に従って江戸を出て、門弟や息子とともに会津藩に与し、白河城を奪還する戦に参陣するそこで、土方、斉藤等の新撰組等とも共闘。
    幕府側の新撰組に思い入れが有り多くの本を読むが、ここにも心打たれる生き様をされた剣豪を知れて完読する。
    時代の趨勢に抗い、誠を胸に新政府軍に立ち向かい
    ひとたび戦えば、「雷雲を纏った龍のよう」と称された要蔵。世を憂い、家族を愛し、弟子の未来を想った、知られざる剣豪の生涯素敵だ。。

    後情報で講談社創業者・野間清治の祖父と知る。
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    投稿日:2021.02.20

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