【感想】台所のラジオ

吉田篤弘 / ハルキ文庫
(35件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
7
14
8
2
0

ブクログレビュー

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  • sakino

    sakino

    大きなことはなにも起きない。ここから物語が動いていく…というところで結びがくる吉田篤弘さんのこの感じが、とても心地いい。

    よく「滋味深い作家」と紹介されることが多いように感じますが、本当にそのとおりだなぁと思います。

    休日、起きてひととおり家の中のことを済ませた10時過ぎごろに吉田さんの本を読んで二度寝したい。
    夕暮れどき、コーヒーなどで一息つきながら吉田さんの本を読んで夜ごはんの支度をしたい。

    なにも起きないから、なんでもない日常に本当によく馴染む。
    ちょうどよく寄り添い癒してくれる、そんな作家さんと作品です。
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    投稿日:2024.04.09

  • pukuchans

    pukuchans

    決して主役ではない。台所のラジオは静かに語りかける。
    女性と男性が交互に主役になり、そしてその人たちがどうもとてもユニークなのです。
    それがまたとてもいい味を出していて、出てくる料理もおいしそうで、最後まで楽しく読みました。

    この空気、とても良かったです。
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    投稿日:2024.02.07

  • akikobb

    akikobb

     はじめは「つかみどころのない本だな」と思いながら一編、二編、と読んでいたが、だんだんとゆるい繋がりが見えてきたり、通底する基調音のようなものが聞こえてきたりして、読み終わる頃には「不思議と印象深い本だったな」に感想が変わっていた。
     短編の中のある人物が、ひところ映画館のレイトショーに通う日々を過ごすのだが、「夜の時間くらいは現実の時間よりも自分の腹時計に従って行動したい」という思いから、映画の上映時間に関係なく見たい時に入って出たい時に出るという通い方をしていた。そのためか、その時代に何年も毎晩欠かさず見た映画はまるで夢の断片のように、ストーリーをなさない他人の人生として自分の中に刻まれている、というような語りがあった。
     この本を読んだ体験がまさに、私にとっては「夢の断片のように刻まれている」だ。あとがきには吉田篤弘さんが「始まりの天使」という言葉を使って、「この短編集では起承転結の起承くらいまでしか書いていない」というようなことを書いている。結末をはっきりさせないという小説手法自体は別に珍しいものでもないし、ひとつひとつのお話を切り離して「特にこれが私の人生を変えるほどの衝撃が」ということはなかったが、全体を通して、なんとも忘れ難い夢の旅だったと感じる。すごいな。

     以下、備忘メモ。
    ・紙カツと黒ソース→食べたい第一位。
    ・目薬と棒パン→「すべてのひとを笑顔にできるのは旨いものだけだ」。
    ・さくらと海苔巻き→食べたい第三位。「誰かより速く走りたいとおもわない」。
    ・油揚げと架空旅行→読書は旅。毎日同じものを食べる。
    ・明日、世界が終わるとしたら→そんなに美味しいビフテキなら背中に手を当てられて誘われたい。
    ・マリオ・コーヒー年代記→司書で自転車乗りでオーケストラ。
    ・毛玉姫→黒光りするソース焼きそばは食べたい第二位。
    ・夜間押ボタン式信号機→子羊のロースト、食べてみたい。
    ・〈十時軒〉のアリス→「三十年を消した」。
    ・いつか、宙返りするまで→亀は時間の重さ。モモ?
    ・シュロの休息→名探偵って現実にいないもんね。
    ・最終回の彼女→〈女優洗浄機〉の発明。
    ・あとがき 天使の声が聴こえてくるラジオ→天使は「おや?」と思うと舞い降りて見守り、変化の兆しを見ると去っていく。
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    投稿日:2023.11.12

  • takosuke

    takosuke

    ゆるゆる短編集。読書時間が取れない時にちょうどいい長さかもしれません。
    個人的には短編より長編の物語が好きなので、一気読みというよりは隙間時間にちょっとずつ読みました。ドラマ性はほぼなし。でもこのファンタジーっぽい独特の雰囲気こそが吉田作品の魅力だと思います。

    食べたいなと思ったのはダントツで紙カツでした。紙カツなるものを本作で初めて知ったのですが、調べたら普通にメジャーな料理だったんですね。トンカツほど重たくなさそうで良いなと思いました。
    あと気になったのはビフテキとミルクコーヒー。
    美味しそうって思う基準も、美味しいって思う基準も人それぞれだけど、吉田作品で描かれる食べものは私の美味しそうって感覚にかなりヒットしてくれます。
    ただ自分がラジオを聞く習慣が全くないため、どの作品にも出没する“台所のラジオ”に関してはあまり存在意義を見出だせませんでした。ひたすら食べ物ばかりを追ってた12編です。
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    投稿日:2023.10.21

  • bouquet866

    bouquet866

    吉田さんの本を読んだ時にしか感じられないなぞの懐かしさ、切なさが今回もあった。胸がぎゅっとなるんだけど心地よい、これはなんだろう。語彙力がなさすぎてもどかしい。
    あとがき最後の一文から「うかんむりのこども」を少しずつ読み進めようかなと思い立つ。続きを読む

    投稿日:2023.08.16

  • 屋根裏のリリー

    屋根裏のリリー

    台所にラジオというのが昭和の雰囲気が溢れていて吉田さんらしいですね。紙カツと黒ソース、昔なじみのミルク・コーヒーが美味しそう。あとがきを読むと吉田さんの小説てこうやって生まれてくるのね…とよくわかります。台所に座って考えてる吉田さんの姿を想像してしまいました。続きを読む

    投稿日:2023.05.28

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