【感想】昭和16年夏の敗戦 新版

猪瀬直樹 / 中公文庫
(34件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
8
11
10
1
2

ブクログレビュー

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  • UD

    UD

    2024.03.11読了

    最近Xで、ゲンロンでの猪瀬さんと東さんの対談が炎上していた。冒頭15分無料で視聴してみると、猪瀬さんの本書のことに東さんが言及しているのを聞いた。それまで猪瀬さんとが何者なのか知らなかった。
    ちょうど日本軍の本を読んでいたところだったので、この流れで本書を読もうと思った。

    「総力戦研究所」という名前にまず惹かれた。太平洋戦争をするにあたってこんな研究がなされていたとは。
    各省庁から集まった若手のエリートによる演練の結果、日本必敗の判断が下るも日本は戦争開戦へと至った。
    その生々しい経緯(特に東條内閣と昭和天皇の思惑)を本書は丁寧に解説している。

    そもそも、若手のエリートを集め総力戦研究を行ったことに驚いた。研究所を設置するくらい日本は意外にもまともだったのだ。
    総力戦研究所での演練もまともであり、大本営の与件に対して、非常に正常な判断をしていく。特に、東南アジアで石油を得られたとしても、その運搬船が攻撃されて意味のないことはここで指摘されていた。
    しかし、実際の内閣は開戦に踏み切った。東條英機に焦点を当て詳細に記述される。東條英機が反戦に翻弄していたことなんて初めて知った。結局は開戦となってしまった時の東條英機の心境読んで、戦争とは人を狂わせるし恐ろしいと思った。

    まとまりのない感想だが、とても面白い本だった。


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    投稿日:2024.03.19

  • ひでやん

    ひでやん

    第一章から読み始めるも途中で挫折。なんか読みにくい。積読に。

    改めて読んでみる。今度は第三章から。
    石破と猪瀬の対談が一番わかりやすい。
    石破国会議員大絶賛。国会での質問でも複数回取り上げたとはびっくり。
    敗戦と分かっていても海軍のメンツが猪突猛進に走らせたということか。
    欺かれていた国民、命を捧げた若者にとっては余りにも悲しい。
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    投稿日:2023.12.03

  • びん

    びん

    総力戦研究所の存在を知らなかったので、国力を含めた対米戦を研究していたことに安堵した。ただ、日本の命運がかかった研究に手を付けたのが開戦のわずか数ヶ月前だったこと、国の総力を上げて然るべき研究を官民から選りすぐられたエリートとはいえ実務10年前後の若者たちに行わせていたことには驚かされた。そして残念なのは、研究成果が反映されなかったこと・・・。結果論になるけれど、首脳陣の誰かがこの研究成果を吸い上げていたら多くの命が救われただろうと思うと胸が痛む。未来は見えないものだけど読める未来もあっただろうに・・・。続きを読む

    投稿日:2023.04.29

  • コウ

    コウ

     第二次世界大戦および太平洋戦争は、日本の歴史上大きな転換期であった。この戦争の敗北で、これまでの価値観を根本的に覆す羽目になったのだ。その敗因として、日本はアメリカに関する情報や国内の補給線を十分に維持できなかったなど多々あげられる。そもそも、アメリカに宣戦布告をした時点で敗北が決定したのであろうか。そのようなことをあれこれ思い巡らす。このように、日本はこの戦争を依然として検討する余地があるのだが、実は、戦争直前の時点で日本が負けるとわかった組織が存在した。それが本書で取り上げる「総力戦研究所」である。この組織こそまさに、太平洋戦争で起こった出来事を見事に的中させたのだ。自分が観測したかぎりでは、教科書はおろか一般的な書籍にすら、その組織の存在を書いていなかったため、この本を読んで初めて知った。
     「総力戦研究所」とは、陸海軍とは独立して、さまざまな官僚たちが集結した一大組織である。この組織は、数値データを駆使してある結論に至った。それが、物量的に見て、アメリカに勝てないということだ。この時代において、第二次世界戦は既に開始されており、ドイツ、イタリアを中心とした枢軸国が欧州を蹂躙した。そんななか、総力戦研究所は、あれこれと必死こいて先ほどのようにデータを提示してアメリカとの戦争を回避しようと努めた。それにもかかわらず、軍部、特に陸軍の上層部は耳を傾けなかったのである。本書以外にも、陸軍の組織の実態、たとえば『失敗の本質』や『組織の不条理』(いずれも中公文庫出版)が明らかであるが、本書においても組織の硬直化、根拠なき自信や非科学的な根性論を唱えるなど、組織の腐敗した側面が露呈している。
     本書は主に組織間の派閥などを中心に目を向けられるが、なかでも太平洋戦争で宣戦布告を決定した時の首相東条英機の心情を事細かに当てたところも、この戦争の過程を知るうえで重要である。東条英機と聞くと、漠然とこの戦争を決断した張本人であるとか、独裁者というイメージなど、どちらかいうと印象の悪い人物だと捉えられる。たしかに、東条は、首相のみならず、陸軍大臣、軍需大臣、また参謀総長を兼任した事実がある。しかし、権力を集中させた背景を知ると意外な事実を思われるかもしれない。東条英機は首相となる直前に近衛内閣で陸相を担当していた。そのとき、陸軍の代表として、日本は戦争をするべきという発言が残っている。しかし、数々の証言を確かめると、実は昭和天皇に忠誠を誓って、そのような言動をしたことがわかる。ところが、一方で、昭和天皇の証言を確かめると、天皇本人は最初から戦争に反対の立場であったことが判明した。以上から、東条英機の行動は裏目となって、結果的に、A級戦犯として裁かれてしまい死刑という、色々と報われない結果となってしまった。このような事情を知ると、いかに国の舵取りが困難をきわめて、個人の力では抗えないほど、日本の組織の力が絶大であったのか理解できる。たとえ優秀な人物であったとしても、限度があることがこの本からうかがえる。
     先ほどの話に戻るが、日本が資源の乏しさゆえに、戦争を持続するにしても、せいぜい短期決戦が限度であることが、数値から見て明確であった。本書でも言及されるは、第二次世界大戦とは石油の確保が、戦争を決定づけたといっても過言ではない。それゆえに、組織にとっては、日本で貯蔵する石油の容量を確かめたかった。ところが、本書によると、石油の容量を把握する者は組織の中でもほんの一握りで、極秘情報であったのだ。
    しかし、聞く耳を持たなかった上層部にとって、ただの戯言と聞こえたのだろうか、「総力戦研究所」が邁進して、徒労になった。
     さて、これらの歴史的背景を振り返って、現代人は何を学ぶべきであろうか。そのヒントは、この本の巻末にある筆者の猪瀬直樹と政治家石破茂の対談からいろいろと学べるであろう。なかでも石破氏の「国を変えるのは、最後は世論ですからね。政治家は、フォロワーではなく、あくまでもリーダーとして、その世論に訴えかけていく必要がある」というのは政治の本質をする者ならではの発言だ。太平洋戦争では、多くの国民が戦争への参加に賛成した。その事実をふまえると、戦後以降に根付いた民主主義において、国民の一人一人が政治に関与する自覚を持たなくてならないと警告されているような気がした。
     それにしても、たとえ優秀な頭脳の持ち主を終結させたとしても、別の要因(今回でいうと軍部上層部の柔軟性の欠如)で阻まれてしまい、これは現代の組織間にも当てはまるだろう。ここから、個人で柔軟で寛容な気構えを抱くことがやはり重要ではないだろうか。
     今後も人間の組織間の本を読み続けていくつもりであるが、いずれにしても人間とは他者に翻弄されるほど、はかない存在なのかもしれない。組織間とは究極的に人間関係であるので、上手く対処するのは苦難なのであろう。
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    投稿日:2023.02.27

  • ベジ

    ベジ

    総力戦研究所という機関が設置されていたことを初めて知った。重要な史実というだけでなく、現代にも通じる示唆が含まれているように感じた。

    投稿日:2023.02.13

  • 佐伯はこ

    佐伯はこ

    このレビューはネタバレを含みます

    なかなか難解なドキュメンタリー。
    歴史に埋もれてる「総力戦研究所」を克明に記した面白い本。データ重視だと「日本必敗」だったのは明らかなのに、開戦したい軍部のシナリオどおりデータが捻じ曲げられていく様は今に通じるものがある。

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    投稿日:2023.01.03

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