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マリリン・J・ルーシンク, 布施晃, 北川玲 / 創元社 (5件のレビュー)
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総合評価:
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雨こんこ
2020年。世界中が突如現れた新型のウイルスとやらを中心に回りだした。ニュースでは毎日毎日毎日毎日陽性者の数を報道する。どこもかしこも何につけてもコロナコロナコロナ。何だかおかしなことになってしまった…。 しかし自分の周りは健康そのもので何も起こらない。世間との空気の違いに違和感を感じながらもそもそもウイルスとは何なのだろうと気になり書店で手に取った一冊である。 本書は図鑑であり、ヒト・動物・植物・無脊椎動物・菌類・細菌それぞれに感染するウイルスが写真・構造図付きで101種紹介されている。序盤の40頁程は簡単な基礎知識に割かれているが、そこだけ読んでも初めて知ることばかりだった。ウイルスは生物ではなかったのか!(正確にはいまだに議論が分かれるらしい)世間の人はどれ位知っているだろう。菌とウイルスを混同している人も多いのではないだろうか。 必ずしも彼らが病気を招く訳でもないことも新しい発見である。ウイルス感染=病気になるイメージが強い。 彼らはどこにでも存在しており、人体にも常駐しているが、病気の原因とならないウイルスはさほど重要ではなく、あまり研究が進んでいないのだとか。 ちなみに人体に存在するウイルス集団=ビロームと呼ぶそう。(尚、人体常在菌=マイクロバイオーム) 色が無いほど小さいウイルスだが、本書の写真では美しいを通り越して毒々しい程鮮やかに着色されている。そのため構造がわかりやすい。 構造といえば形が様々なのも面白い。正多面体のもの、にょろにょろしたもの、レモン型のもの、双子タイプのもの、特に細菌に感染するファージたちは人工的でメカニックな形状をしており本当に自然界のものか疑いたくなる。(尚、腸内細菌ファージT4はガチャガチャのフィギュアになるほどファンがいるらしい。) ファージとは細菌を食べるものの意で、白血球をマクロファージ(大食漢)というのはそういう所以らしい。 ■ヒトライノウイルス ライノは鼻という意味。アデノは喉。メジャーなウイルス。多分私も今までに何度もこいつに感染している。 『風邪を引いたら治るまで辛抱強く待ちつつ、おばあちゃんの忠告に従うのがいちばんであるー暖かくしてしっかり体を休め水分を多く摂りチキンスープなど栄養のある食物を摂ることだ』…アメリカにもおばあちゃんの知恵袋的なのがあるのかな。おばあちゃんの言うことに間違いはない。 ■SARS関連コロナウイルス 突如現れ姿を消した。2年後の2004年4月にワクチンが開発されたが、しかし同年1月以降は発症例の報告無しとの事。なんだか不思議で怪しいウイルス。 ■ノーウォークウイルス 目次を見て悪名高いノロウイルスがおらんぞと思いつつ頁を捲っていたら名前が少し違っていた。 ノーウォークというのは地名でこいつが属するのがノロウイルス属らしい。最強の感染病原体とのお墨付き。人体外でも非常に安定している。エンベローブもないのでアルコールも効かない。一生涯こいつだけには感染したくないものだ。毎年冬場は戦々恐々としながら納豆を食べ過ごしている。 ■チューリップモザイクウイルス “チューリップ狂”が最初のバブル経済らしい。ウイルスが原因だとわかるやいなや、今度は頑強性が求められて珍重されなくなったとか。美しさは変わらないのにね。 ■オオバコアブラムシデンソウイルス アブラムシのコロニーの中で数が増えすぎると突然有翅タイプが生まれて別の場所へ移動することで分散を図るのだが、それはウイルスのおかげだったらしい。アブラムシは植物によりたくさん種類がいるがウイルスもまた各専門のヤツが存在するのだろうか。 ■イリドウイルス ダンゴムシ界隈では有名なウイルス。イリドウイルス科という大きな括りがあるようだ。本書では“昆虫虹色ウイルス6型”が紹介されている。ダンゴムシが感染すると体色が美しい青色に変化。その後死んでしまう。あの美しい色は構造色らしい。 ■第1群ウイルスの中にはその生活環で宿主の細胞に必要ない分裂を強要させるものがいるようだ。宿主細胞が分裂する際に使うDNAポリメラーゼを利用するためだが無制御に分裂を繰り返すと宿主は癌になりかねない。ああだから確かにヒトパピローマウイルスも第1群なのか。アデノウイルスも第1群?もしかして喉風邪にかかりやすいと癌にもなりやすい? ■我々の遺伝子にはウイルス由来のものがたくさん組み込まれており、進化の研究に役立つらしい。本来無害な細菌にウイルスがゲノムを組み込むことで有毒な細菌となるらしい。(O157など)ウイルス恐るべし。 逆転写等の表現がいまいちピンと来ず読んでいて難しいところもあったが、ウイルスについて少し理解が深まった。続きを読む
投稿日:2023.07.09
kiwi
なんか凄まじい本だった。分厚い本だが、ウイルスのマニア?はもちろん、自然科学、特に生命科学に興味を持っている人は一度読んでおいて損はない。 わかりやすく短いセンテンスと、電子顕微鏡写真、イラストで代…表的な101のウイルスを紹介してくれる。そこから浮き上がってくるのは個々のウイルスの特徴や見分け方、ではなく、生命の摩訶不思議な成り立ちだ。 新型コロナはもちろん、エボラやエイズ、天然痘やC型肝炎はウイルスが原因の病気だが、ウイルスに感染するのは人間だけではない。犬や猫、鳥といった動物はもちろん、植物も、昆虫も、菌類や原生動物、細菌や古細菌までウイルスに感染する。感染といっても隣の人がくしゃみしたら感染っちゃった、というレベルではなく、親から子孫へ引き継がれていくウイルスもあるそうだ(垂直感染)。しかもウイルスは病気を起こすばかりではなく、一部のハチやアブラムシでは自らの生存に有利な道具として「利用」されているという。 新陳代謝?しないウイルスが生命と言えるかどうか、という議論があることは知っている。が、人間のDNAにもウイルス由来の部分が相当あるそうだし、むしろ連中のほうが生命の主流なんじゃないか。という気がしてきた。 この本、新型コロナが流行する直前に書かれたみたいだが、この人の新型コロナの本を読んでみたい。続きを読む
投稿日:2020.11.21
ぽんきち
今大きく世間を揺るがせているコロナウイルス。毎年冬に流行するインフルエンザウイルス。赤ちゃんのおなか風邪の原因で、今月から定期ワクチン接種の対象となったロタウイルス。 何かと話題のウイルスだが、さてど…んな存在なのかというと意外に知られていないのではないか。 本書は、ヒトだけでなく、脊椎動物、植物、昆虫などの無脊椎動物、菌類・原生動物、細菌・古細菌が感染するウイルス101種を電子顕微鏡写真とともに紹介する図鑑である。 特徴的なのは、疾患を引き起こすウイルスだけでなく、幅広い種類のものを取り上げていること。病原性がないものもあれば、宿主にとってなくてはならぬ存在となったものもある。バイオテクノロジーの発展に大きく寄与したものもある。 ウイルスとは何か。 実はその定義は一筋縄ではいかない。一般的には、非常に微小で、外被に覆われ、複製のために宿主の機構を借りるものを指す。が、中には、外被を持たないものや、また巨大ウイルスのように、かなりの大きさを持ち、自身の遺伝子を翻訳できるものもある。ウイルスに関して新たな発見があるたび、ウイルスの定義も更新されうるのだ。 本書では 細胞とは異なる感染体であり、核酸分子(DNAまたはRNA)の形をした遺伝物質で成り立ち、たいていはタンパク質の外被に覆われ、侵入した宿主細胞内の機構を勝手に使って自己を複製し、拡散するもの としている。 冒頭のイントロダクションでは、ウイルスに関する基礎知識が簡潔にまとめられている。 ウイルス学史、遺伝物質の種類や生活環によるウイルスの分類、感染経路や免疫系などの関わりで、一通り、ウイルスの概要が掴める形である。 ウイルスの大きさは数十ナノメートル(nm)から数百nmのものが多い。この範囲だと光学顕微鏡で観察するのは難しく、電子顕微鏡を使うことになる。元々の電子顕微鏡写真は白黒だが、本書ではわかりやすく彩色されている。 こうして見えてくるウイルスの形は、紐状、球状、紡錘形、弾丸状とさまざまである。中には、細菌のウイルスのように、月着陸機のようなものもある。 その多様性は図鑑として眺めるだけでも楽しめる。 電子顕微鏡写真に加え、各ウイルスのゲノム形状や分布地域、宿主といった基本情報、構造の模式図も付される。 ヒトのウイルスに関しては、エボラやデング熱、エイズ、ポリオ、ジカ熱といった疾患の原因ウイルスが大部分である(刊行が2018年であるので、新型コロナウイルス=COVID-19は含まれない)。 1つだけ、病気をもたらさないヒトウイルスも取り上げられているが、実はこうした無害な(場合によっては有益な)ウイルスはほかにも多くあるはずだ。 近年、宿主にとって有益なウイルスが発見されたことから、非病原性ウイルスへの関心が高まってきており、将来的には細菌のマイクロバイオームのように、常在ウイルス集団(ビローム)の重要性が見えてくるのかもしれない。 ヒト以外のウイルスの話も興味深い。 近年、カエルツボカビ病(こちらは菌類が病原体)によるカエルの激減が心配されているが、ウイルスにもカエルに病気を引き起こすものがあり、ラナウイルスと呼ばれる。カエルやほかの両生類にかなりの打撃を与えており、今後が心配されている。 このラナウイルスはイリドウイルスと呼ばれるウイルスの仲間で、精製すると青みがかった虹色を発する(イリドは虹彩の意)。色素ではなく構造色によるものだが、なぜウイルスが色を持つことになったのか、詳しい理由は不明のようである。 それぞれ別の種だが、養殖のサケやエビに感染するウイルスというのもある。 養殖場では同一種が数多く密集するため、病気が拡大しやすい環境となる。 ある意味、現代ならではの病気で、今後もこうした養殖場での発生が懸念される。 宿主になくてはならないウイルスの例として、寄生バチとコマユバチブラコウイルスの例が挙げられる。 寄生バチは生きているイモムシに卵を産み付け、いわばイモムシを孵化器として利用する。この際に、イモムシの免疫系に攻撃されないようにするのがウイルスの役目だ。ウイルスはハチの卵と一緒にイモムシの体内に送り込まれる。ウイルスの内部にはハチの遺伝子が含まれており、これがイモムシの体内に放出されて、イモムシの免疫系を抑制するタンパク質を産生する。つまりハチの卵が免疫系の攻撃をかわせるようにするのだ。これがないとハチの卵は死んでしまう。 このウイルスが最初にハチに感染したのは1億年前だと考えられており、ウイルスの遺伝子はハチゲノムに組み込まれ、一方、ハチ遺伝子がウイルス粒子内に入る形になっている。こうなると、いったいウイルスは独立した存在なのか、それともハチの一部なのか、見解はわかれるようである。 図鑑として見るだけでも十分楽しい。 読み込むとさらに楽しい。 ウイルス入門としては好適な1冊。続きを読む
投稿日:2020.10.01
shoyakulibrary02
https://library.shoyaku.ac.jp/opac/volume/146185?current=1&locale=ja&q=9784422430270&target=l&total=…1&trans_url=https%3A%2F%2Flibrary.shoyaku.ac.jp%2Fopac%2Fhome%2Fresult%2Fja%3Fq%3D9784422430270%26target%3Dl続きを読む
投稿日:2020.07.13
actiolic
知りたい情報が適度に掲載されている。少し難しい用語や表現もあるが、医学用語辞典を併せて読めばスムーズ。専門外でも十分に楽しめるウィルスの世界が望める。
投稿日:2018.10.28
ポイントが追加されました。ポイント明細ページからご確認いただけます。
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