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キム・エラン, 古川綾子 / 亜紀書房 (19件のレビュー)
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jinmin
「翻訳文学試食会」(ポッドキャスト番組)で取り上げられていた『立冬』という作品を含む短編集。 韓国ではセウォル号文学というらしい。杜撰の100乗ぐらいの出来事が重なり、一瞬にして300人近くの命が奪わ…れた事件の後、身近な人の喪失をテーマにした作品が増えたという。 表題作『立冬』は、子を持つ親であれば、絶対に体験したくない喪失の物語。いきなり号泣。電車で隣に座っていた人すみません。日常の些細な出来事が全部、自分が悪いと思ってしまう心理にもとても共感するともに、韓国と日本は似たような感覚を持っているんだということも理解した。 『立冬』よりも受けた悲しみが大きいのが、『ノ・チャンソンとエヴァン』。主人公の少年が、なぜあのような境遇に置かれたのか、彼が大人になるまで、いったい幾つの喪失を体験すればよいのか。続きを読む
投稿日:2024.04.09
joy
喪失に関して。 それぞれの短編にはこれといったオチが作られているわけではなく、それが良い。特に印象的だったのは『ノチャンソンとエヴァン』『どこに行きたいのですか』。
投稿日:2024.02.28
1864729番目の読書家
個人的には「ノ・チャンソンとエヴァン」がひたすら胸が痛かった。 しかし、何だかわかったような気になって感想を書くことができない。またいつか読み直そうと思う。 **** 【追記】 読んですぐは本当に…何を言えばいいのかわからなかった。 でも結局のところ、(例えば)死者に対して生者である私(たち)は、どこまでもわかったような気になることしかできない。だからそう思うと何も言えなくなってしまうのだと思った。 キム・エラン氏はそのことをわかりすぎるほどわかった上で、死者との間の、その埋められない隔たりを紡ぐ言葉を探しているのだろうなあ。続きを読む
投稿日:2024.02.27
kiji
セウォル号事件の数年後に書かれた、静かな喪失の物語たち。簡単な言葉で、深く語られている。タイトルもすごいなあ。
投稿日:2024.02.05
chiakihirano
『韓国文学の中心にあるもの』で紹介されている本を少しずつ読んでいこうと思い、今回は「セウォル号以後文学」の代表といわれるこちら。 「何かを失ってしまった人びと」をテーマに書かれた短編集なので、最初…の『立冬』、『ノ・チャンソンとエヴァン』からして重い。一日に一篇くらいの感じで読みました。 そういう意味では「消滅していく言語の博物館」というSF的設定の『沈黙の未来』が一番楽に読めました。 『外は夏』というタイトルの短編が収録されているわけではないと知っていたのですが、読み終わってから季節が夏の短編も入ってたかなと。 『立冬』は文字通り立冬、『向こう側』はクリスマス、『風景の使い道』は「韓国は冬だがタイは夏だった」、『どこに行きたいのですか』はエディンバラの夏とどちらも海外。 これは「セウォル号事件」にも言えることで事件について明確に書かれている部分はありません。 著者のインタビューでは 「この短編集は何かを失った人たちがテーマ。次の季節を受け入れられない人たちを書きました。モチーフの事件は明らかにしていません。言わなくても読者にはわかるから。」 『韓国文学の中心にあるもの』では 「「外は夏」とは、セウォル号事故前と後で時間の流れが全く違ってしまったことを示唆している。セウォル号事故は春に起きた。それによって人生が変わってしまい、季節を意識する余裕もなかった人にとって、夏は「外のできごと」にすぎないという暗喩と見てもいいだろうし、それでも確実に時は過ぎ、生きている者は生きていくしかないことを示しているのかもしれない。」 と解説されています。 個人的には『ノ・チャンソンとエヴァン』の祖母とか、『覆い隠す手』の母の、生活や子供や孫の将来に対する不安にザワザワしました。(日本もだけど)韓国の生活に対する保証はとても不安定な気がします。 以下、引用。 17 妻は自分で作った木製の棚に「LOVE」や、「HAPPINESS」といった英単語の書かれた、どう使うのかよくわからないパステルトーンのブリキ缶を置いた。片方の壁にはワイヤーと小さな木製の洗濯バサミを使って洗濯物を吊すみたいに家族写真を飾り、それでもまだ物足りないと思ったのか、三羽の鳥が止まっているウォールステッカーを貼りつけた。 20 そして、そういう些細でありきたりな一日の積み重ねが季節になり、季節の積み重ねが人生になるのだと学んだ。バスルームに置かれたコップの中の歯ブラシ三本、物干し台に干された大きさの異なる靴下、ちんまりとした子ども用の補助便座を見ながら、こんなにも平凡な物事や風景が、実は奇跡であり事件なのだということを知った。 26 読んでいるだけで自信が湧いてきて、もう壁紙を張り終わったような気分だった。 44 当時のチャンソンは人生の教訓をいくつか学んだが、それは金を稼ぐには我慢が必要だということ、そして我慢したからといって必ずしも何かが補償されるわけではないということだった。 46 慣れた手つきでうつむきながら火をつけると、「主よ、我を赦し給え……」と言った。 ──ばあちゃん、赦しってなあに? ──なかったことにしようってこと? ──そうじゃなかったら、忘れてくれってこと? チャンソンが答えをせがむと、祖母はやせ細った指で煙草の灰をとんとん落としながら気のない口調で答えた。 ──見なかったことにしてくれって意味だよ。 155 写真を撮るときはじっとしてなきゃいけないと教えてくれたのは誰だったか思い出せない。たぶんものすごく平凡な人、良いことはあっという間に過ぎ去るし、そんな日はめったに来ないし、来たとしても見逃してしまいがちだということを知っている人じゃないかと思う。 159 カフェの天井の角に設置されたスピーカーからはダンスミュージックが流れ続けていた。誰かがバケツに騒音を溜めて俺たちの頭上にぶちまけたような気分だった。 234 ずっと見ていると目が青く染まりそうな空、くっきりとした輪郭の綿雲、草原の上にぽつんぽつんとそびえる風力発電機を見ていると、「穏やかな海洋性気候」という言葉が自然に浮かんできた。この島国の空がいつか日本のアニメーションで見た空、戦争で疲弊した兵士が幸せだった幼年時代を懐かしんで回想した風景と似ていたからだ。 283 この短編集は何かを失った人たちがテーマ。次の季節を受け入れられない人たちを書きました。モチーフの事件は明らかにしていません。言わなくても読者にはわかるから。 続きを読む
投稿日:2023.03.13
gakudaiprof
セウル号の沈没を思わせるのが、最後のどこに行きたいのですか、という小説である。韓国の小説ということの特集が 朝日新聞に掲載されていたような気がする。米国だったり英国だったりと場面が韓国国外である小説で…あるが、キムチや食事風景が韓国であったりする。韓国の文化を知ることができる本である。続きを読む
投稿日:2023.02.23
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