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中沢新一 / 講談社選書メチエ (34件のレビュー)
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総合評価:
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ゆん
このレビューはネタバレを含みます
こちらも今更ながら読みだしている中沢新一のカイエ・ソバージュ!学生時代に『野生の思考』やら『生のものと火を通したもの』やらを読んだはずなのだけど、正直あまり覚えていないんだよなあ、いつかそちらも再読せねばなりません。 さて本作、講義の内容の書き起こしということもあって、とても読み易かったし、そういわれてみたら確かに?ということの連続が面白いということ、もし人間が既にそこまで物事を考えて何かに意味を持たせられている・見いだせているのなら、創作できる余地など少なくない…?と思うなどしていました。 豆の神話学(p67~) 豆というものが、男性の中の女性的なものと、女性の中の男性的なものを表し、男性性と女性性の仲介を果たすものである、その先に生と死を媒介するものとしての豆というのが出てくる、らしい笑。 カマドと灰と鳥=総動員される仲介機能 カマドの火は人間にとって動物の世界から抜け出して、「文化」を持ったという大転回がおこったことを象徴し、そこから「異界または他界との転換点」「生者の世界と死者の世界を仲介する場所」(p107) ミクマク・インディアンの「見えない人」の話、とても好きだった。 …なぜならこの高貴な魂をもった女性は、ものごとを外見ではなく、その奥にひそんでいるものの価値によって知ることができたからである…(p149) そして「…ここでいわれている「美しさ」は星や野の花や動物のような美しさんことで、人間のお化粧やおしゃれがつくりだせるものでもなく、こういう自然な美しさは誰のなかにも潜んでいるものなのだから、みなさんどうかご安心ください。」(p157)に笑った。 神話は警告する(p206-7) …このとき神話は現実と幻想のあいだにたって、二つを仲介しようとしています。その上で、幻想の世界に埋没することの危険を知っています。神話はこのように、現実との対応を絶対に失わないようにしています。ところが私たちは浮気なチェリクトフのように、現実の世界を捨てて、ベニテングダケ娘の与える快感にはまってしまいたいという欲望も、ひそかに抱いています。いいかえれば、現実を失ってでも、バーチャルの世界へ入ってしまおうとする可能性を、常に持っている生き物なのです。私たちの心は、現実の世界の豊かさや複雑さを、五感を通して受け入れようとしていますが、同時に、心の中の完全に自由なバーチャルな領域に吞み込まれたいとも思っています。ベニテングダケ娘の誘惑は、今ここにある危険なのです。 まさにその通りなんだよねえ…そこで地に足のついている感じに安心感ある。次の巻も読みます。
投稿日:2024.02.24
曖昧まいん
中に含まれている神話や説明は面白いものの、自分がどこか騙されているような、無理やり引っ張られている感が否めず、流されて読んでいるだけではだめだ、考えなければ……と思わされる一冊だった。
投稿日:2022.10.31
千
現実を失ってでも、バーチャルの世界へ入ってしまおうとする可能性を、常に持っている生き物なのです。私たちの心は、現実の世界の豊かさや複雑さを、五感を通して受け入れようとしていますが、同時に心の中の完全に…自由なバーチャルな領域に呑み込まれたいとも思っています。続きを読む
投稿日:2022.05.30
nabecho
「野放図な思考の散策」(Cahier Sauvage カイエ・ソバージュ) NOTE記録 https://note.com/nabechoo/n/n4473a4a427d2 この1巻では神話が主題。神話は「人類最古の哲学」で、とてつもない深さをそなえており、その中には偉大なものが隠されていると。その素材として、世界各地の様々な「シンデレラ物語」が語られる。 「シンデレラ物語」は、民話として語られながら、神話としての特徴を失っていない稀有な例らしい。これは人類的神話で、恐るべき深さを秘めているようだ。最初の記録は9世紀で、450以上の様々なバージョンがあると。 最後に、神話と現実について。現代は、神話の豊かな内容がなくなり形骸化、幻想への誘惑、バランス喪失。だから、再び、内容を持った神話に立ち返るべきだと!具体性の世界の豊かさをもう一度! たぶん…きっと…そんなことが書いてあったはず笑
投稿日:2022.03.15
キじばと。。
世界のさまざまな地域や文化に伝わるシンデレラ物語のヴァリアントを紹介しながら、「人類最古の哲学」である神話的思考の世界にせまる本です。同時に著者は、神話と哲学、宗教とのつながりを解き明かそうと試みてい…ます。 本書における著者の議論は、レヴィ=ストロースの「野生の思考」(pensee sauvage)に依拠しています。「野生の思考」とは、生のもの/腐ったもの、乾燥したもの/湿っているもの、熱いもの/冷たいものといった対立する感覚的事実を、論理を操作するための項として利用して組み立てられる思考のあり方を意味しており、著者はこのような発想にもとづいて、シンデレラ物語の中に生と死とを媒介する中間項の存在を追いかけていきます。 ピュタゴラス派では、豆を食べることが禁止されていました。著者はその理由についての考察をめぐらせ、神話の論理のなかで豆は生と死とを仲介する両義的な存在だったことに着目します。ピュタゴラス派は、そうした両義的なものを排除することで神話的な思考を葬ろうとしたのではないかと著者は主張し、このことが神話的思考と哲学的思索の境界を確立することにつながったのではないかと論じられています。 また最終章では、『リグ・ヴェーダ』に登場する「ソーマ」という神がベニテングタケを指すという説が紹介されています。著者は、幻覚作用をもたらすベニテングタケを用いた儀礼をおこなっていた神話的な世界が忘れ去られたために、「神」を観念的・抽象的に純化した新しい時代の「宗教」と呼ばれる営みが成立したのだと述べています。 シンデレラ物語という親しみやすい題材が採られており、また比較的わかりやすいことばで説明がなされていますが、危うさを感じさせる議論を通じて、われわれの思考の臨界点に接近しようとする著者の議論に特有の魅力を十分にあじわえる内容です。続きを読む
投稿日:2020.02.20
Ko M
人類が語り継いできた各地のシンデレラから共通性を見出しつつも違いを比較しながら、そこに描かれてきた普遍的な人の感性や価値観に触れられる良書だと思います。 特に北米インディアンのシンデレラに見る、ヨー…ロッパ的シンデレラへの批判精神はとても興味深かった。続きを読む
投稿日:2020.01.04
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