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丸谷才一 / 講談社文芸文庫 (1件のレビュー)
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キじばと。。
赤穂浪士たちの討ち入りのときの衣装が火事装束だったことに注目するところから議論を説き起こし、彼らの行動の背景に『曾我物語』からの影響があったことを指摘しています。 ただし、『忠臣蔵』が御霊信仰を動機…としているという本書の主張に対しては、諏訪春雄による厳しい批判が提出されています。また小谷野敦も、本書の議論の杜撰さをくり返し指摘しています。 そうした実証的なレヴェルでの問題はさておき、赤穂事件をもとにして『仮名手本忠臣蔵』が成立したという、歴史的事実と物語の関係を逆転させる著者の構想は、演劇的人間観にもとづいているといえそうです。本書の後半で『忠臣蔵』のカーニヴァル的な性格についての議論を展開していることも、こうした推測の根拠になりうるように思います。 このように考えると、蓮實重彦が『小説から遠く離れて』(河出文庫)のなかで、著者の『裏声で歌へ君が代』のもつ物語の構造に対して批判的な検討をおこなっていたことが思い出されます。本書でえがかれているのは、歴史が物語となったのではなく、物語が歴史となったということであり、ひとはあらかじめ物語の内に囲い込まれてしまっているという人間観が『忠臣蔵』にそくして論じられているということができるからです。その意味では、本書を導入として著者の根本的な文学観ないし人間観へと考察を進めていくことが可能ではないかという気がしています。続きを読む
投稿日:2019.05.17
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