【感想】故人

坂上弘 / 講談社文芸文庫
(1件のレビュー)

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  • mmcit

    mmcit

     『文体』に連載され、1979年に平凡社から刊行された長篇小説を文芸文庫版で。著者ご本人の謦咳に親しく触れられたことを噛みしめながら読了。

     34歳で不慮の交通事故死を遂げた山川方夫との出会いと交流、「文芸の共和国」を目指した第3期『三田文学』編集部時代の思い出が、山川没後の遺族や知友との関わりを通じて想起されていく。主人公(修吾)にとっての上條栄介の存在の大きさが伝わるが、小説全体の内容はむしろ、栄介という文学的な「父」の乗り越え(象徴的な「父殺し」)となっていることが重要。作中何度かくり返される「もう子どもではない」という栄介の発言は、作家としての修吾の独り立ち、栄介の影響圏の相対化が示唆されている。

     いちばん印象に残ったのは、栄介を轢いた運転手の事故死に狼狽し、ほとんどその哀しみに一体化するような妄想に襲われた場面。栄介の遺族も運転手も双方ともに「被害者」となったのだから、被害者同士で心を通わせることもできるのではないか――という発想の理路が否定できない現実感を持って立ち現れる、という想像力の展開は独特で、この妄想のドライブ工合が坂上の作家としての特異性なのだと思う。
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    投稿日:2024.04.20

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