脳が読みたくなるストーリーの書き方

リサ・クロン, 府川由美恵 / フィルムアート社
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 楽描人カエルン #絵で世界をなめらかに

    楽描人カエルン #絵で世界をなめらかに

    このレビューはネタバレを含みます

     小説や脚本を書く人が陥りがちな間違いについて脳科学的な知見から神話と真実をあばいていく内容である。
     他の書籍だとこれまで鉄則というものがあってそれはこういう理由であるという体で書かれているものが多かった。本書はそれに加えて人間の脳それもその偏向性や欲求に即して説明しているところに違いがある。それはとても良い効果を発揮している。
     付け加えると作者であるリサ・クロンさんはたくさんの良作だけでなく駄作に触れている経験を遺憾なく発揮している。小説・脚本においては十中八九最初からうまく書ける人はいない。この本のようなものでマナーを学び一度書いたら十回以上推敲して文章を磨き上げることが必要となる訳だがその理由を端的に示しており納得感がある。時間をかけることになることであるからこの「納得感」はとても重大だ。
     グラフィックレコーディングなど打ち合わせや介護の見える化の講座をデザインして企業研修等で教えているのだが、研修講座とは時間芸術のひとつだと思っており、小説や脚本術はとても参考になる。本書もその一環で読んだ。

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    投稿日:2021.07.05

  • manybook

    manybook

    脳科学者によれば、すでに過剰負荷に耐えている脳が、貴重な時間と空気を費やしてまで人間を物語に没頭させるのは、物語がなくては困ったことになるからだ。物語があれば実際に起きたことでなくても、重大な経験をシュミレーションすることができる。これは石器時代においては生死にも関わる問題で、経験が教えてくれるのを待ってやぶの中を動き回ったりすれば、昼食を探しているライオンに見つかって餌食にされるだけだ。脳がさらに進化した現代においてはさらに重要で、人間は自然界を学んだ後ももっと複雑な社会というものに取り組まなければならない。物語は、自分や他者の心を探る方法、未来のための予行練習としても発展してきた。こうして物語は、生死に関わる身体的な感覚のみならず、より良い人生を求める社会的感覚としての生き残り術も伝えてくれるようになった。著名な認知科学者でハーバード大学教授のスティーブン・ピンカーは人間が物語を求める理由を高説明している
    「物語は、いつか私たちが直面するかもしれない人生の難問や、そのときにとれる戦略の結果をとりそろえたカタログを提供してくれる」

    物語とは、
    困難なゴールに到達しようとする誰かに対し、起きたことがどう影響するか、そしてその誰かがどう変化するか

    起きたこと=プロット
    誰か=主人公
    ゴール=ストーリークエスチョン(物語の中で解決されるべき問題)
    その誰かがどう変わるか=何についての物語なのか

    物語とは、人がどう変わっていくかを描いたもの

    読者が最初の1ページに対し、容赦なく求めようとする基本的な事項
    1 これは誰の物語?
    2 今、何が起きている?
    3 危機にひんしているものは何?

    テーマとは、
    ・人間らしさとはどういうことか、その物語が伝えていること
    ・手に負えない状況に対する人間の反応について、その物語が語っていること

    プロット
    主人公を動かし、テーマを明らかにする

    もっとも大事なのは、プロットが主人公に「どう影響するか」

    本当の物語とは、起きたことが主人公にどう影響するか、そしてその結果、主人公がどうするかを書くもの

    読者は、脳科学者が発見したことを直感的に知っている。人間の経験は、すべて自動的に感情で塗りつぶされるものだ。なぜか?これは1と0でできているコンピューターの人間バージョンで、基本にあるのは「これは私を傷つけるのか、それとも助けるのか?」という問いだ。この単純な問いが、豊かで複座で洗練された。つねに変動する人間の自己感覚のどんな側面においても基礎となっており、人間はそうやって周囲の世界を経験している

    最終的に物語を進めるのは、主人公の行動、反応、判断であり、それらの引き金になる外部的な出来事ではない

    読者の脳に組み込まれた暗黙の問いかけは、「もしこんなことが自分に起きたらどんな感じがするだろう?」「どう反応するのがいちばん良いことなんだろう?」だ

    脳は社会的に考えるようにできている

    唯一の真の発見の旅とは、未知の土地を訪ねることではなく、新しい視点を持つことだ(プルースト)

    しばしば物語の主人公が見つけるのは、自分の外面的なゴールと内面的なゴールは、最初からずっと相反するものだったということ

    主人公の内面的・外面的ゴールを定め、それを互いに闘わせておくと、外面的な緊張感と内面的な葛藤が生じ、それが物語全体の原動力となってくれることも多い

    外面的な問題が物語にドラマを生むのは、主人公が自分の問題を克服するためにそれに直面しなければいけないというときだけだ

    主人公が直面するすべての出来事が、内面と外面の双方の問題から派生しているようにしなければならない。そうしておけば、平凡な落とし穴にはまらずに済む、つまり、一般的な"悪い状況"を使って主人公のゴールを設定するという過ちを犯さずに済む

    主人公が長年探し求め、それゆえに試練にさらされていく「ゴール」というものがないのなら、たまたま陥ってしまった窮地を出ることだけが「ゴール」ということになってしまう。そうなれば、スポットライトが当たるのは「問題」であり、「主人公」ではなくなる。出来事は起きても、主人公は表面的にしかその影響を受けない。なぜなら、現在の状況をできるだけ早く脱出するというわかりきった一時的なゴール以外に主人公に独自の望みや求めている何かがあるのかも読者にもわからないため、普通は誰でもそうだろうという一般的な反応以上の予測ができないからだ。これではどうにも退屈だ。なぜか?「誰でも」やることなら、読者にも簡単に分かる。そこにサスペンスの余地はない。読者は自分の知らない何かを知りたくて物語を手にする。「誰でも」やることには少しも興味は沸かないが、あなたの主人公がやることなら熱心に興味を持つーその理由がわかるかぎりは

    登場人物とは行動のことである(フィッツジェラルド)

    私が何かについて「考えてくれ」とあなたに頼んでもあなたは考えないでいる権利がある。だが、私があなたに何かを感じさせたら?そうやってあなたの注意を引くことはできる。感覚とは反応なのだ。感覚が人に何が重要化を知らせたら、人の思考もそれに従わずにはいられない。自分に影響しない事実ー直接の影響がない、あるいはほかの誰かにどう影響するか想像できない事実ーは、自分にとって重要ではない。たとえ何千倍も大きな事件であろうと、非個人的で一般化された物事より、特定の個人の物語のほうが無限の影響をもたらすことができるのはこのためだ。実のところ、特定の個人の問題を通じてしか、一般的な要点を突くことはできない。でなければ、スカーレットも言ったように、それは明日考えればいいということになる。脳は人の感情をとらえない物事にエネルギーを費やすのを嫌うので、たぶん一週間たっても考えることはないだろう。
    まず感じる。そして考える。これが物語の魔術だ。物語は、一般的な状況や発想や前提を持ってきて、それを特定の事象を通じて個人化する。兄弟で身の毛もよだつような恐怖ーたとえばホロコーストーを持ってきて、ある人間の個人的なジレンマを通じてその影響を描き出す。読者はその影響を教えられるのではなく体験するのである

    物語に感覚的な詳細描写をする理由
    1プロットに関連した「原因と結果」の軌跡の一部を野なっている場合
    2登場人物に関する洞察を読者に与える場合
    3メタファーになっている場合

    人は対立で物語を楽しむ
    対立を描く場合、あなたの読者には、そこにないものがあるように見えなければならない

    すべての物語は「どっちつかずの奴」の物語だということだ

    人間の脳が情報をどう処理するか
    ①脳はすべてにおいて意味のあるパターンを探すようにできていて、パターンの反復もしくは変化に基づいて次に何が起きるかを予想する(つまり何より重要なのは、読者にもわかる意味のあるパターンが存在する必要があるということだ)

    ②読者は、現実か想像上のことかに関わらず、似た出来事における自分の個人的経験を通じてページ上の筋書きを読み、現実味があるかどうかを見る(つまり読者は、ページ上にあるよりも多くの情報を推測することができるーあるいは、推測するための情報が充分でなければ腹を立てる)

    ③人間は問題解決を好むようにできている。何かを解明すると、脳はあたかも「よくできました」と言うかのように、中毒性のある神経伝達物質を放出する。物語の楽しさとは、本当は何が起きているのかを解き明かすことだ

    さまざまな対立がサスペンスの状態を生むのは、敵対する欲求、事実、真実を互いに向き合わせることで、進行中の対立を本質から煽り立てることができるからだ

    物語上の原因と結果は、主人公が「どうやって」A地点からB地点に移ったのかではなく、「なぜ」そうなったのかという話だ。物語上の内面的な原因と結果の軌跡は、主人公の行動の動機となる内面的な問題の進展を追う。起きたことを主人公のゴールと照らし合わせ、主人公がなぜその判断に至ったのか、そのことが主人公をどんな次の場面に押しやったのかが、理解しやすい形で明かされることになる

    「ジョンは悲しんでいる」と書くのではなく、なぜジョンが悲しいのかを見せる

    行動、反応、判断

    概念は、物理的にも感情的にも、人に影響をあたえることはない。人に影響を与えるのは、特定の具体的な概念だ

    伏線
    解決策は、いざ明かされたとき、それが必然だったと見えなければならない(レイモンド・チャンドラー)

    人間が心の中で複数の情報をきちんと処理することは不可能だというー入ってくる2種類の情報の流れを、脳は同時に処理することができない(スタンフォード大学の研究)

    人間が外部の世界、もしくは浮かんできた記憶から入ってきた複数の情報に集中しようとすると、「現在の目的に関係のないものを排除することができなくなってしまう」(脳科学者 アンソニー・ワグナー)
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    投稿日:2017.01.02

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