【感想】最強の資産は円である!

増田悦佐 / ビジネス社
(1件のレビュー)

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  • yasz

    yasz

    この本の著者である増田悦佐氏の本をおいかけて20年近く経過すると思いますが、今年(2018)2月に出版された最新本です。日本は将来的に希望がある、という論調は今までの本と変わりありませんが、この本の特徴は何といっても、序章に書いてある内容です、彼の本で初めての内容だと思います。

    表紙に書いてある「株は2020年までに売り払え」というフレーズには驚きませんでしたが、本をめくって目に飛び込んできた「資本主義は2027年までに崩壊する」というタイトルは衝撃的でした。

    資本主義はいずれなくなる運命にある、というフレーズを初めて見たのは、私が高校生のころだったと思いますが、ノストラダムスの大予言シリーズの本に書いてありました。当時は全く理解できませんでしたが、最近はこのことを主張している人が増えてきているようです。

    世界中で低金利が継続、所有とは反対の概念のサービス・システムの進展などを考えると、ポスト資本主義の時代が迫ってきているのかもしれないと感じるようになりました。今後もアンテナを張っておきたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・アメリカ型に変質した市場経済としての資本主義に取って代わるのは、小規模企業同士がモノやサービスを取引する、比較的平等性の高い市場経済である、売り手と買い手が同時に同じ場所にいて初めて成り立つ取引の場、つまり、今よりもずっと「人間らしい顔をした市場」に支えられた経済の復権である(p3)

    ・これまで何度か世界中で主要産業が入れ替わる大転換期があったが、今まさにその時期を迎えている。2007-2027年、これまでの10年間、これからの11年間が、近代市場経済で観察されてきた84年サイクルの節目である21年間の激動期に当たるとみている、前回は1932年を中心とする20年、その前は1848年を中心とする20年(p12、15)

    ・アメリカの株式市場は今「閉店セール」に入っている、大企業がこれまで蓄積してきた内部留保だけでなく、借金をしてまで増配、自社株買いを行っている。株主へのバラマキによる実体なき株高が2009年以来のアメリカ株ブル相場最大の特徴、債務と突き合わせると自己資本はいつの間にかゼロとかマイナスになっているという形で破たんが起き、その整理が終わるのが2027年ころだろう(p21、83)

    ・2020年が、超長期、長期、短期の3つのサイクルがすべて大底に達する特異な年、最も長いのは84年サイクル、その次が50年サイクル、最初が1720年、独立革命1770年、1820年、南北戦争直後の1870年、第一次世界大戦1920年、ベトナム戦争1970年、短期はオリンピックサイクル、オリンピック直後の1-2年は開催国で不況になる(p24)

    ・人間をほとんど雇用しなくていい産業は、どんなに経済に果たす役割が大きく重要でも、主導産業にはならない、そこで働く人々の消費が大きなシェアを占めなければならない(p26)

    ・日本ではカウンタカルチャー、サブカルチャー的なものが欧米のような知的エリートの特権的な趣味ではなく、広範な大衆の支持を受けて独自に発展してきた。漫画、アニメはその典型、今後、情緒産業が導く世の中になったとき、真っ先にスポットライトが当たるのは、まさに日本である(p27)

    ・2020年以降の世界がどういう世の中になるかというと、経済覇権、軍事覇権などが意味をなさない世の中になる。覇権の代わりに国力の指標となるのが、双方向進行の感化力である(p28)

    ・円安が輸出にプラスになるのは、輸出数量指標が円安のベース以上に上がらなくてはならない、安売りして儲かるのは値段を下げた以上に販売個数を拡大できた時だけ(p38)

    ・ジャブジャブのお金を金融市場に放出したらインフレになると期待されていたが、実際には貨幣の流通速度がどんどん下がっただけ、現在は現預金と譲渡性預金がGDPの56%になっている、1年に半分しか回転していない(p43)

    ・日本の政府の総債務額から総資産を差し引いたものが純債務だが、これはGDPの1年半程度でありそれほど過大ではない。日銀が日本政府に対して、当行の持っている国債はすべて破棄するといって、帳簿上から国債残高を消してゼロにすれば解消するだろう。国家歳出の対GDP比率がわずか40%である、これは量的緩和でばらまいた札束が、利権集団となって甘い汁をすうことなく、たなざらしのまま残っていることを意味する、なので国家債務を消したところで経済にはほとんど実害はない(p56)

    ・日本株を売り抜けるときに円安ドル高になれば値上がり益が飛んでしまうので、海外の機関投資家が始めたのが、円キャリートレード、円を借りて借りた円で日本株を買う。外人投資家が日本株を買い、そのための円を借りたので円安になった(p66)

    ・個人投資家のシェアが売り続けているのにほとんんど変わらないのは、高くなったものを売って、そうでない安全だと思う株を持ち続けているため(p72、82)

    ・アメリカでは特定の企業や個人の巨大化願望が従属されることのしわ寄せは、市民権を持っていた白人の中で下層の人たちではなく、市民権を持たない先住民、アフリカ大陸から輸入された黒人奴隷に集中する特異な国となった(p95)

    ・都市化の進んだ国ほどサービス業で作り出される付加価値が高いことには2つ大きな理由がある、1)サービス業の大半が売り手と買い手が同時に同じ場所にいなければ成立しない業態である、様々な店が集中している大都市が有利、2)少ないエネルギー消費量で製品サービスが生み出せる、エネルギー効率の高いから(p102)

    ・米ドル建ての銅価格はけた違いの暴騰となっているが、1000ポンドの銅は、金何トロイオンスで変えたかという指標でみると、殆ど上がっていない。(p149)

    ・中国の貿易はWTO加盟の2001年以降に急拡大しているが、健全な形ではない、投資主体で消費をほとんど増やさずに投資(過大な設備をますます過剰に)した(p164)

    ・これから先、ピークを打ちそうなものの筆頭が電力である、これまでの世界の歴史を見ていると考えられなかったこと、すでに消費量が大天井を打った基礎資源8品目(クロム、フッ化カルシウム、銑鉄、鉄鉱石、硫化ナトリウム、カドミウム、トリウム、アスベスト)と、そろそろ天井を打ちそうな8項目(電力、ニッケル、窒素、セメント、石油、コバルト、農地、水)(p173)

    ・中国が頑張っていた2004-2014年までの時代は、中国が実力でそのほか諸国を圧倒していたわけでなないことがわかり始めてきた、理由はOPEC諸国が原油売上の金額を自国金額に換算せずに、オイルダラー、ユーロダラーとして儲かりそうな地域に投資する手法が取られていた、それが、ITやサブプライムローン、中国の工業生産に向かっていた(p175)

    ・アメリカで20世紀の100年間を通じてセメントは45億トンしか使っていなかったが、中国は2011-2013年の3年間で66億トン使用した(p181、183)

    ・イギリスのセールスマンは欧州で現地に行くときには現地語が話せる人が付いてく来てくれるので通訳として十分に役立つ、その点についてイギリスがEUに加盟していようと関係ない、欧州諸国言語とアメリカ英語の通訳ができるという有利な地位はそのまま(p206)

    ・欧州各国は、ドイツ以外は労働生産性が伸びていないのに賃金が高くなっているので、輸出競争力が下がるのは当然(p216)

    ・神聖ローマ帝国とスペイン王国とが同君連合(神聖ローマ帝国カルル五世、スペイン王カルロス1世)していたが、亡くなるときに、スペインはフェリペ2世という息子に任せて、神聖ローマ帝国は弟のフェルディナントに任せた(p223)

    ・ドイツに難民、移民が増えたのは、ドイツは明確に中東に対する空爆を非難しているから、フランスやイギリスはアメリカと一緒になって空爆した、石油利権があるため(p226)

    ・日本でいう時代劇のことを、英語でコスチュームプレイといった、現代人が普段着ではなく、その時代の衣装をまとって演ずるほうがいい劇のこと(p237)

    ・金価格は、米ドルでは1980年当時の3倍近い価格になっているが、円ではいまだに1980年当時の天井より2割安く買える、これは金を買う絶好のチャンス(p242)

    ・米ドルはアメリカ政府の債務の4分の1程度の、5兆ドルしか流通していないが、金は7.7兆ドルあり、流通性が高い(p250)

    2018年2月11日作成
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    投稿日:2018.02.10

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