【感想】花のお江戸で粗茶一服

松村栄子, 柴田ゆう / ポプラ社
(3件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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ブクログレビュー

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  • leva2lla

    leva2lla

    ああああーっ!!!
    また最後に爆弾ぶっこんできたー!!!…ってのが読後、いや読み終わる直前に湧き上がった感想。
    もとよりシリーズ化を意図していたのかそうでないのかは分からないけど、しかしシーリズそれぞれ、1作の物語としてみたときに、最後の最後に何かを書き置いていくんですよねえ、このシリーズ。
    作品のクライマックスという〆の場で、新たなドラマのさわりだけ見せられて満足して納得できますかってーの!!
    デザートじゃないぞ、それだけでもうメインですからね!!

    …って、興奮して読み終えましたとさー。
    体温上がった気がしたわ、ホント。

    そんなこんなで今作もとても楽しめました。
    東京に戻った遊馬が、しかしまだフラフラと自分をわからずに悩むお話。
    でもこれ、遊馬がフラフラしているのではなく、周りの人、世間の人が「かくあるべし」と決めた箱の中に自分を押し込めることに簡単に納得しすぎなんじゃないかなぁ…って気持ちにさせられます。
    ある時期にきたら、自分が入る箱を選ぶ。
    自分が選んだ箱の中に、ではなくて、出された箱、用意された箱の中に。
    決められたレール?(古いか

    その時期か、箱かは、人それぞれでしょうが本来は異なるもの、異なってもいいものじゃないかなぁ…と。
    モラトリアムとはまた違うカンジで。

    やー、しかしですよ。
    主税の兄貴も感じているように、なんだかんだ言ってもそれでもやぱし遊馬の境遇というのは恵まれているものだと、やっかみだとは自覚しても思わざるを得ないです。器の小ささと笑わばわらえw
    それもまた遊馬と私が異なる部分だと受け止めますし。

    出会いと別れを繰り返し、悩みを抱えながらも時間は前へ進んでいき。
    時には思いがけない厄災も天から降ってきて。
    お茶と剣と弓の道が、生きていく支えにもなって。
    そうした道に憧れも抱きつつ、私は私でがんばろうという気持ちに。
    あー、気持ち良かった!
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    投稿日:2018.10.09

  • Keito

    Keito

    気づひたら新刊が出ていた。
    これまでの作品とは異なり、どちらかといふと、読み切り短編の詰め合はせといふ感じであつた。連載形態の都合といふものもあつたのだらう。
    かうしてまた、遊馬の歩みを感じられるとは思はなかつた。先の事なんて誰にもわからない。けれどもあたかも確かなものとしてそれを決定しなければならない。どこかで「待つて」と言つてしまふ。
    いつも彼女の作品を読んでゐると、過去も未来もどうにもならないけれど、今かうして在るこの自分を抱えて生きるより他ないことを感じる。だからこそ、まだ見ぬ未来に自分を委ねることができる。つらいこと苦しいこと、楽しいこともうれしいこともきつと起こるだらうが、それでもこの自分が自分であるといふことは生きてゐる以上変らない。
    今までは時間や場所、立場の違ふひとがそれぞれにそれぞれの道を歩いてゐた。この一連の粗茶シリーズのやうに、同じ物語世界の中で描きつづけたといふことは、それだけ彼女にとつて茶道や武道、それらを通して出会つたひとびとが今もなお息づいてゐるからだらう。それに加えて、やはりどの人物をとつても変らぬ彼女の姿が今もちりばめられてゐる。
    今後またこのシリーズで書くことがあるかは知らない。もしかしたら、遊馬の子ども世代の話とか出てくるかもわからない。もしかしたら、別の何かに影響を受けて別の違つた物語が生まれるかもしれない。だが、どのやうな形にしろ、きつと彼女の書くものに変りはないと思ふ。変りはないが、茶道や武道の形を見せてくれた様に、また別の新しい世界の形を見せてくれると信じてゐる。
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    投稿日:2018.07.27

  • ぽんきち

    ぽんきち

    剣・弓・茶の三道を追求する武家茶道「坂東巴流」の若旦那の成長を描くシリーズ、3作目にして完結編。

    このシリーズ、どの程度の人が追いかけているのか今ひとつわからないのだが、個人的にはとても好きで、2作目から7年、気長に待っていた。
    1作目が京都新聞に連載された後、単行本はマガジンハウス、文庫版はジャイブ、のち、ポプラ社と版元が変わり、1作目・2作目に関しては、現在ではポプラ社・ピュアフル文庫が入手しやすい版となっている。柴田ゆうの装画は本作の雰囲気によくあっていると思う。

    1作目・2作目の舞台は京都だったのだが、本作では東京が舞台となる。
    主人公の友衛遊馬(ともえ・あすま)は坂東巴流家元の総領息子でこのままいけば次期家元ということになるのだが、敷かれたレールに乗って走るのが気に入らず、出奔して京都に来たのだ。前髪を青く染め、反抗心むき出しで、音楽の道を志そうとする遊馬。だが、あいにくとそちら方面の才能はからきしなく、何だかんだで茶道とのつながりは切れない。京都にある巴流総本山の宗家巴流や、公家流茶道を嗜む麿言葉の予備校講師、比叡山の老師との交流を絡め、茶道とは、坂東巴流の目指す剣・弓・茶の三道の交わるところとは、そして何より自分の目指すものとは、と答えを探し求めていく。
    で、本作では、坂東巴流の本拠地である東京に戻ってくるわけである。答えが出たわけではない。けれども向き合ってみなければ答えも出ない。

    「柳緑花紅」は禅語である。柳は緑、花は紅。見たそのままの言葉だが、あるがまま、そのままの姿で、それぞれが尊い。当たり前のようだが、しかしそれを全うするのは、思う以上に有り難いことなのかもしれない。
    温かなユーモアがベースにありつつ、禅や茶の道、季節のうつろいを鮮やかに描いているところが本シリーズの魅力である。登場する茶道流派はすべて架空のものというが、流派を越え、茶道というものを活写しているのも特質の1つだ。
    主人公の遊馬はもちろん、かなりの数の登場人物たちも背景がきちんと描きこまれている。
    特に、と言われれば、和文化に興味を持つ中高生に薦めたいが、そうでなくても幅広く読めるシリーズであると思う。

    3作目の本作は2015年から雑誌に連載されている。
    遊馬は実家の道場で稽古に励みながら、スカイツリーで警備員のアルバイトを始める。初めは土台だけで、スカイツリーは影も形もない。つまり、冒頭の舞台は、東日本大震災よりも前である。
    終盤、ストーリーには震災が絡む。構想時にはおそらく、この形を考えていたということだろう。

    物語の最後に、遊馬は1つの決断をする。
    奔馬はどこを目指すのか。あるいは疾走しながらどこへ行くか考えているのか。
    シリーズは一応、完結ということのようだが、また時を経て、遊馬や未来のその子どもたちに会ってみたいような気もしている。


    *個人的には、このシリーズを読んで自分もお茶を習い始めたので、何だか感慨深いですw
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    投稿日:2018.01.22

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