【感想】服従の心理

S・ミルグラム, 山形浩生 / 河出文庫
(42件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
18
14
2
1
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • anpon

    anpon

    ミルグラム実験については名前しか知らなかったが、近所の書店のフェアで表に出ていて気になったので購入して読んでみた。気持ちの良い話ではないが、とても興味深くて自分の場合はどうだろうかと考えさせられる本だった。

    権威に服従するモードに入ると普段のその人がするとは思えないような残酷な行為でも命令に従って実行できてしまうという心理学実験。権威に服従するというとナチスなどを思い浮かべやすいが、学校で起きるいじめとかでも同じようなことが起きていると思うと、明確な命令がなくても容易に服従してしまうのではないかという気がする。訳者あとがきの批判にあったように人間は残虐性を社会規範という権威によって抑えるようにしているだけなのかもしれない。

    集団を作って生きていく上では服従の全てが悪というわけでもないが、会社でも、社会でも、自分が自律して行動できているのかどうか、服従モードに入っていないか、自分に問うていきたいと思った。
    続きを読む

    投稿日:2022.06.29

  • zxocgjk

    zxocgjk

    異常に興味深い。
    組織で言われる主体性が必要だ云々という話を前提からひっくり返す話でもある。
    そもそも人は権威に従属するものであり、そういった進化を辿ってきている。
    それは進化の過程で必須の要素であり、進化を経て強化された。

    自律モードと、組織モードがあり、組織モードを「エージェント状態」と言い、
    自身の価値観に関わらず盲信的に権威に従ってしまう状態で、これは社会的な動物としての生存有利性から発生していると。

    一方道徳心・良心などといった個人に属するもの(と筆者はいい、訳者はそれも社会的な権威であるというし、それが正しいと思う)は、2次的なものになると。

    訳者が権威をそもそも定義していないという話はその通りで,自身の感覚も含めると、権威とは「自分が知らないもっと上段の崇高な目的を知っていて状況に合わせて正しい判断ができる。またイレギュラーな決断においても責任が取れる」ということのみであり、単純に白衣を着てればおkということでもないと思う。

    かなり示唆深いし、とくに「エージェント状態」の言語化は俊逸以外の何者でもない。
    続きを読む

    投稿日:2022.05.29

  • toro

    toro

    このレビューはネタバレを含みます

    個人の道徳観の力は、社会的な神話で思われているほど強いものではないっていう本。


    この有名な実験について大枠しか知らなかったが、人や場所や状況等のパターンを変えてみたり、被験者の実験時の言動が細かく書いてあったりと、ミルグラム実験の詳細が知れる。
    尚且つ元々の原文が良いのか訳者が良いのか最後まで飽きずに読める。



    p.22〜p.23

    道徳律の中で「汝、殺すなかれ」といった能書きはずいぶん高い位置を占めるが、人間の心理構造の中では、それに匹敵するほど不動の地位を占めているわけではない。新聞の見出しがちょっと変わり、徴兵局から電話があって、肩モールつき制服の人物から命令されるだけで、人々は平然と人を殺せるようになる。


    p.67

    あるいは過去には、物理的に近くにいる相手への攻撃的行動は、報復による懲罰をもたらし、それが最初の反応形態を打ち消したのかもしれない。一方、遠くにいる他人への攻撃は滅多に報復をもたらさなかったのかもしれない。

    p.209

    事前条件の中には、その個人の家族的な知見や、非人格的な権威システムに基づく一般的な社会環境、そして権威の遵守が報酬をもたらし、非遵守が罰につながるような報酬構想との長期的な体験がある。

    エージェント状態

    p.244

    非服従の代償は、自分が信念を破ったという身を切られるような思いだ。
    道徳的には正しい行動を選んだとは言え、被験者は自分が引き起こした社会的秩序の破壊に困惑したままであり、自分が支援を約束した目的を放棄したと言う感覚を捨て去ることができない。
    自分の行動の重荷を感じるのは、従順な被験者ではなく、服従しなかった被験者なのである。

    p.276


    人は自分の独特な人格を、もっと大きな制度構造の中に埋め込むにつれて、自分の人間性を放棄できるし、また必ず放棄してしまう、ということだ。

    p.303


    いずれにしても、何か単一の気質面での性質が非服従と結びついていると思うのは間違っているし、親切で善良な人は反抗するが、残酷な人は反抗しないと思うのも間違っている。
    目下のプロセスにはあまりに多くの点がありすぎ、またそれぞれに対して人格の各種構成要素が複雑な形で関係してくる可能性があるため、あまりに単純化しすぎた一般化はまったくできない。
    さらに、それぞれの人が実験にもたらす成功は、行動の原因としておそらくほとんどの人が考えるほど重要ではないだろう。
    というのも今世紀の社会心理学は大きな教訓を与えてくれるからだ。
    その教訓とはつまり、しばしば人の行動を決めるのは、その人がどういう人物かと言うことではなく、その人がどういう状況に置かれるかと言うことなのだ、ということである。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.12.14

  • はっさく

    はっさく

    実験報告みたいで読んでいて面白かった。
    何も考えず権威に服従してしまうのは怖い。状況ごとに自分の意思で選択したいと思った。

    投稿日:2021.11.20

  • hockson

    hockson

    実験のレポートと考察が丁寧に書かれていて非常に読みやすかった。

    人が権威に服従するのは責任を権威のあるものに背負わせているからだと思う。
    責任の及ばない範囲で人は行動している。
    それが社会の仕組みなのかなと。
    逆に自由になりたければ責任を負わなければならない。(起業して社長になるとか)

    本編も面白かったけど、訳者の考察がとても良かった。

    実験の前提と本質に疑問をなげかけている。
    例えば、実験では人は性善説に基づいて行動している(根底には人を傷つけたくない心理がある)としているが、訳者は一般的にはそれは成り立つのか疑問を呈している。戦争なんかでは、略奪が目的だったりと、、、

    作者のスタンレーミルグラムはスモールワールド実験でも有名だったのか。
    6人介せば、誰とでもつながれるという実験。

    続きを読む

    投稿日:2021.09.20

  • kazu

    kazu

    服従は、人間が本能的に持っている心理かもしれない。
    さまざま実験を通して、服従の限界を探る中で、個々にある倫理観が、組織の服従より、強いものになる時もあり、どちらを選択するかで、人間社会が大きく変わる感じがした。
    常に個々の倫理観も、意識して持ってるべきだと思う。
    続きを読む

    投稿日:2021.07.28

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。