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イタロ・カルヴィーノ, 米川良夫 / 河出文庫 (41件のレビュー)
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Modest Tapir
マルコ・ポーロがフビライ汗に旅してきた各地の街を語るだけなのだが、その語られる街の数々がとても奇妙。 おとぎ話のような空想都市の強烈なイメージの数々を聞いているだけでも面白い。 抽象的なものも多いのだ…が、語りの美しさもあって、あっという間に読んでしまった。 そして差し込まれるマルコ・ポーロとフビライ汗のやり取りも不思議なおかしみがあった。 イタロ・カルヴィーノ作品では『冬の夜ひとりの旅人が』の次くらいに面白かった。続きを読む
投稿日:2024.01.29
lilli1ou
このレビューはネタバレを含みます
ずいぶんむかしに読んだ本を再読。 高校生のときかな。モグが図書室から借りて読んでいたのを、彼女が読み終えると同時に私が借りて読んだんだ。柳瀬尚紀さんが巻末の解説で「確かブルーを基調としたデザインで、地球か気球のような球体と、確か刳り抜かれた円形の穴…」と書かれていた、その本だ。 私が手にとったときはすでに相当古びていた。モグによると、書架の下のほうにあって、本の天にはうっすら埃が積もっていたらしい。高校図書室の配架でのイタリア文学の扱いなんて、たぶんどこでもそんなものだったと思う。 当時の私は宮沢賢治に夢中で、全集を隅っこからかたっぱしに読んでいたけど、モグがずいぶん眉根を寄せて読んでいたから、私も気になって読んでみたというところだった。 案の定、私にはさっぱりわからなかった。 筋らしい筋もなく、マルコ・ポーロが語る奇妙な(あまりに観念的過ぎて視覚的なイメージも抱きにくい)都市の報告を延々と読まされる。その報告には人間らしい共感や情緒が感じられず(死者が住まう都市アデルマの話は例外か)、挿入されるポーロとフビライの会話もなんだかあまりに作り物めいていて、そもそもこの本がいったい何について書かれたものなのか、文学と言えるものなのかもよくわからなかった。私もモグと同じく、最初から最後まで眉根を寄せたままなんとなく読了した。 でも、それで完全に私の脳から消え去ってしまったわけでもない。「フビライ汗は一冊の地図帖をもっており…」、この「地図帖」という語に「アトラス」とルビがふってあった。かっこよかった。中二病がうずいてそこだけはノートに書き抜いたりした。 宮沢賢治熱が冷めはじめると、私はラテン語圏の幻想文学を好んで読むようになったけれど、ラテン文学圏の人たちって「一冊の本のなかに世界の全体が書き込まれている」というイメージが大層好きなんだなと、この本を想いながらあとになって気がついたりした。ボルヘスの著作すべてしかり。また、私にとってはガルシア=マルケス『百年の孤独』もそういう本だ。この種の「アトラス」に私が最初に触れたのが、『見えない都市』だったってわけ(いまでは、ラテン・カトリック文化のなかで『聖書』こそが、世界最初の「アトラス」だったことくらいは私だって知っている)。 こんなふうに文庫本が出版されている現在、母校の図書室のあの本も、とっくのむかしに除籍され廃棄されていると思う。モグと私が眉根を寄せて、よくわからないまま読んだあの本は、ポーロの報告のように、フビライが心のどこかで感じてしまう大元帝国が退嬰していく気配のように、もうこの世にないだろう。
投稿日:2023.11.23
ゆ
イタリアの作家カルヴィーノの見えない都市。 1番のお気に入りに推してる人がいて読もうとして過去挫折。やっと読了。都市と記憶,都市と欲望。なんらかの都市についての短編がたくさん。マルコポーロがフビライに…語る形で進んでいく。続きを読む
投稿日:2022.12.30
imemuy
p69湖水の鏡の上にあるヴァルドラーダ「おのれの一挙手一投足が、ただ単にそのような行為であるばかりか同時にその映像ともなること、しかもそれには肖像画のもつあの特殊な威厳が与えられていることをよく心得て…おり、こうした自覚のために彼らは片時たりとも偶然や不注意に身をまかせることを妨げられておるのでございます。」 p21しるしの都市タマラ「人はタマラの都を訪れ見物しているものと信じているものの、その実われわれはただこの都市がそれによってみずからとそのあらゆる部分を定義している無数の名前を記録するばかりなのでございます。」 p113「思い出のなかの姿というものは、一たび言葉によって定着されるや、消えてなくなるものでございます」「恐らく、ヴェネツィアを、もしもお話し申し上げますならば、一遍に失うことになるのを私は恐れているのでございましょう。それとも、他の都市のことを申し上げながら、私はすでに少しずつ、故国の都市を失っているのかもしれません。」 p118「もしも二つの柱廊のうち一方がいつもいっそう心楽しく思われるとするならば、それはただ三十年前に刺繍もみごとな袍衣の袖をひるがえして少女がそこを通ったその柱廊に他ならないからでございますし、あるいはある時刻になると日射しを浴びるその様が、もはやどこであったかは思い出せないあの柱廊に似ているというだけのことなのでございます。」 p167「世界はただ一つのトルーデで覆いつくされているのであって、これは始めもなければ終りもない、ただ飛行場で名前を変えるだけの都市なのです。」 どこにでもあり、しかしどこにもなく、そしてそれは既に見た記憶かもしれないしこれから見る予感のものかもしれない。蜃気楼のように何もないのに、読んでて脳裏にシルクロードの、異国のイメージが浮かび消える。幻想文学。言葉と概念を弄んでいるだけかもしれないけど、端端の単語に幻想と脳のどこかに情感を呼び起こさせるひらめきがある。構成や意図などを、計算的に読み取るほどじっくりは読まなかった。続きを読む
投稿日:2021.05.09
シマクマ君
モンゴルの皇帝とマルコ・ポーロ。この組み合わせだけでも読む価値があるというもんだ。カルヴィーノは言葉しか信じないが、われわれ凡人は実在を期待してしまうので、永遠に届かない世界を「あるんじゃないか?」と期待しながら、むなしく空回りしてしまう。
投稿日:2019.02.02
winder
薄い本なのに、ようやく読み終えた。初イタロ・カルヴィーノ。延々と続くマルコ・ポーロのホラ話?詭弁?に付き合わされて、ワクワク、ドキドキ、ハラハラなんてしない。どこから面白くなるんだ、これ?って感じで終…わっちゃったジャン。俺には高尚過ぎたようだ。(T.T)続きを読む
投稿日:2018.12.25
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