【感想】杳子・妻隠

古井由吉 / 新潮文庫
(80件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
25
21
20
5
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • 1768159番目の読書家

    1768159番目の読書家

    二、三年前に読んでいたら好きなっていた作品なのかもしれない。

    繰り返しの日常に盲目的な今の私は、杳子の目には間違いなく健全なフリをした「病人」として映るだろう。
    環境の変化は絶えず違ったやり方で交渉を求め、日常の反復を破壊する。しかし外の世界に応じて生きる中でも少しも変わらない、自分自身に押し戻される瞬間が必ず残る。

    続きを読む

    投稿日:2024.03.27

  • きゃろ

    きゃろ

    このレビューはネタバレを含みます

    『杳子』のみ読んだ。
    「海という言葉に呼び起されて、ひとすじの鋭い線が、水平線が、彼の情欲の生温いひろがりの中を走った。水平線を仰いで杳子と二人だけで砂浜に立つ気持を思って、彼は痛みに近いものを軀に感じた。」
    この一節の表現にものすごい迫力を感じた。ここからこの物語がぐらっと揺らいでSは杳子の方へ一段と深く踏み込んでいく様に思えた。

    「(…)テーブルにそって軀を杳子のほうに伸ばした。杳子は彼の顔を見つめて、しばらく掌の中で首をかしげていたが、それから頬杖をゆっくり倒して唇を近づけてきた。」
    脳裏に焼き付く場面

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.01.26

  • 湯

    このレビューはネタバレを含みます

    「だけど、あなたに出会ってから、人の癖が好きになるということが、すこしわかったような気がする」

    外界から遮断された2人の、2人だけで進んでいく物語が好きだから面白かった。2人だけではアンバランスだしとても凸凹がぴったり合わさっているとは言えないけど、妹という外部の人間が介入してくるとそれはそれで均衡が崩れる。ギリギリのところで耐えている杳子の心と2人のぐらぐらとした関係が似ていた。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.11.17

  • 庭には犬を走らせよう

    庭には犬を走らせよう

    筆致に圧倒された。
    だれかと関係を持つ、ともに生活を送る。
    まったくの孤独ではないはずなのに、閉塞的なその関係によってより孤独が深まっていくような、そんな苦しさと寂しさと、やるせなさのようなもの。自分の中で上手く言語化できなかった感覚が、描かれていたような気がした。続きを読む

    投稿日:2023.10.27

  • 牛乳パン

    牛乳パン

    2023.9.26 「杳子」 読了
    何度も噛み締めて読み返したくなる。ということで読み返し。特別なイベントがあるわけではないが、細かい描写が鮮明で綺麗。精神の病をもつ友人が近くにいるが、その難しさを考えさせられる。これが男女なのもまたいい。

    2023.10.26「妻隠」読了
    大江と同じような暗さを抱いたけど、言語化できない〜閉塞的な何か〜
    続きを読む

    投稿日:2023.09.26

  • inox

    inox

    閉塞された男女の世界を、
    透明人間になって傍から見聞きして書いたような偏執的な描写。
    冷徹で枯れていて、思考や目線の端々が几帳面の域を超えている。

    その文体から映し出される登場人物は、
    そのままそっくり具現化されたようで、
    深淵は多層化され、
    滑らかで湿り気のある混沌と、
    儚げで印象的な齣撮りの時間の中に、
    絶えずその性質を留まらせている。

    庇護欲でなく同族であることの共通理解が、
    男女を一風変わった関係で成立させ、
    それがどの抽斗から出てきた恋愛なのか分からなくとも、一応箪笥には収まっているように見せる。

    踠いているような、
    真っ直ぐ進んでいるような、
    その歩き方を絶えず指先まで意識しながらいるような、そんな話でした。

    杳子面倒臭いけど、多分可愛い。
    話が一筋縄でいかないのを身悶えしながら、
    読み進めたが、結局、どうなったんですね?(白目)

    読み疲れするし、
    の割には感情を揺さぶられるでもない。

    理解が追いつかないながらも、
    本能的感覚で、
    ただその凄さをぼんやり感じる事はできる。

    妻隠のほうが読み易い。
    思考の並びや、妻の描写に、
    ハッとさせられる所が多々あった。

    DQNの中で妻がオンナになるとことか、
    その後何食わぬ顔で帰って来るとこ、
    それに夫が何も示さないとこ、
    桃に関心が無さそうに適当に摘むとこが、
    わりと印象に残った。

    なにか冷たいのか、
    冷たい中に熱があるのか、
    判然としないなかに、
    嫌にまとわりつく読み味が、
    読後にはサラッと流れていくようだった。

    本格小説といった印象だが、
    果たして本格とは一体何をもってして本格とするのか。

    古井由吉をもう少し読み込めば、
    分かるようになるかもしれない。

    #読書 #読書録 #読書

    続きを読む

    投稿日:2023.06.14

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。