【感想】文車日記―私の古典散歩―(新潮文庫)

田辺聖子 / 新潮文庫
(25件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
11
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ブクログレビュー

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  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    古典の中から、著者が長年いつくしんできた作品の数々を、わかりやすく紹介し、そこに展開された人々のドラマを語るエッセイ集。

    投稿日:2024.02.03

  • matsunokaori

    matsunokaori

    田辺聖子さんの古典愛を感じる作品。美しい古典の魅力を本当に魅力的な文章で紹介している。
    「わが愛の磐之媛」、「大君のみ楯」など面白い。

    投稿日:2023.05.02

  • しゃえ

    しゃえ

    日本の古典文学の面白さを理解しやすかった!
    小さなお話がたくさんあるので読みやすいし、田辺さんの解釈も共感できて、入り込みやすかった!
    もっと古典の歌系の話を読んでみたいなあと思った♡
    加増先生ありがとう続きを読む

    投稿日:2020.04.05

  • kotonami

    kotonami

    長い間探していたが、母の蔵書の中に紛れていた。67編のエッセイがある。見出しに丸がつけてあるのは気に入ったものだろう。
    ざっと読んでみると、想い出すものとそうでないものがある。ジャンルも古典に限ったものでなく落語まである。さすがお聖さんだ、面白い!
    二編ずつ読んで考えよう、「その一」と言うことで今日から始める。



    額田女王の恋(万葉集)
     奔放な歌と物語を残した万葉の星。少女の頃に中大兄皇子に従ってきた大海人皇子と恋に落ちた、厳しそうなお兄さんより優しい微笑と優雅な弟の方がいいわ。
    おおらかな歌で斉明・女帝に愛され、有名な歌を読んだ。

     熟田津に船乗りせむと月まてば潮もかないぬ今は漕ぎいでな

    彼女は宮廷の華、周りの人々の心を惹きつけていた。
    兄の中大兄皇子に求められた。斉明帝が崩御し天智天皇が即位し、その男らしい統率力を見て愛人になった。
    ある初夏の一日、蒲生野で狩りがもようされ、大海人皇子をみかけて歌った歌。

     あかねさす紫野ゆき標野ゆき野守は見ずや君が袖ふる

    大海人皇子の返歌

     紫の匂える妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも

    周りは大喝采。
    座興とはいえ実におおらかな歌だった。
    何十年の前の記憶が浮かび、恋の記憶も、馴れ合いの歌の中にはあったのかもしれない。

    その後も天智天皇の愛人であり続けたが没年は定かではない。

     君待つとわが恋居ればわがやどのすだれ動かし秋の風吹く

    晩年の

     いにしえに恋ふらむ鳥は時鳥けだしや鳴きしわが恋ふるごと

    どちらの天皇を深く愛したのか、巫女の身分でお后になることはなかったが、聖子さんはどちらも同じウエイトで愛したのではないか、と締めている。






    むかしはものを

    百人一首の中で人気がある歌。

    あひみてののちの心にくらぶればむかしはものを思はざりけり

    あなたにあってから物思いが増えました、と私などは読み取ってきた。

    だが聖子さんは「あひみての」に複雑で皮肉な響きがあるという。
    あい見るとは、ただ出会ったのではなくて、既に一夜をともにした。その後男はひょっとして白けてしまったのかもしれない。
    あぁ昔思っているだけの日々の方が良かった。恋は萎んだ。

    ――作者の藤原敦忠は男女の愛の微妙なながれのゆくすえを早逝者の直感で洞察していたに違いありません。――

    こういう読み方は初めて知った。聖子さんの洞察も興味深いものだった。



    長い間探していたが、母の蔵書の中に紛れていた。67編のエッセイがある。見出しに丸がつけてあるのは気に入ったものだろう。
    ざっと読んでみると、想い出すものとそうでないものがある。ジャンルも古典に限ったものでなく落語まである。さすがお聖さんだ、面白い!
    二編ずつ読んで考えよう、「その一」と言うことで今日から始める。



    額田女王の恋(万葉集)
     奔放な歌と物語を残した万葉の星。少女の頃に中大兄皇子に従ってきた大海人皇子と恋に落ちた、厳しそうなお兄さんより優しい微笑と優雅な弟の方がいいわ。
    おおらかな歌で斉明・女帝に愛され、有名な歌を読んだ。

     熟田津に船乗りせむと月まてば潮もかないぬ今は漕ぎいでな

    彼女は宮廷の華、周りの人々の心を惹きつけていた。
    兄の中大兄皇子に求められた。斉明帝が崩御し天智天皇が即位し、その男らしい統率力を見て愛人になった。
    ある初夏の一日、蒲生野で狩りがもようされ、大海人皇子をみかけて歌った歌。

     あかねさす紫野ゆき標野ゆき野守は見ずや君が袖ふる

    大海人皇子の返歌

     紫の匂える妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも

    周りは大喝采。
    座興とはいえ実におおらかな歌だった。
    何十年の前の記憶が浮かび、恋の記憶も、馴れ合いの歌の中にはあったのかもしれない。

    その後も天智天皇の愛人であり続けたが没年は定かではない。

     君待つとわが恋居ればわがやどのすだれ動かし秋の風吹く

    晩年の

     いにしえに恋ふらむ鳥は時鳥けだしや鳴きしわが恋ふるごと

    どちらの天皇を深く愛したのか、巫女の身分でお后になることはなかったが、聖子さんはどちらも同じウエイトで愛したのではないか、と締めている。






    むかしはものを

    百人一首の中で人気がある歌。

    あひみてののちの心にくらぶればむかしはものを思はざりけり

    あなたにあってから物思いが増えました、と私などは読み取ってきた。

    だが聖子さんは「あひみての」に複雑で皮肉な響きがあるという。
    あい見るとは、ただ出会ったのではなくて、既に一夜をともにした。その後男はひょっとして白けてしまったのかもしれない。
    あぁ昔思っているだけの日々の方が良かった。恋は萎んだ。

    ――作者の藤原敦忠は男女の愛の微妙なながれのゆくすえを早逝者の直感で洞察していたに違いありません。――

    こういう読み方は初めて知った。聖子さんの洞察も興味深いものだった。
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    投稿日:2020.01.19

  • 源氏川苦心

    源氏川苦心

    田辺聖子さんも逝つてしまひましたねえ......もう三か月以上も経つてしまひましたが。
    わたくしが読書の愉しみを知つた頃に活躍してゐた作家さん達が、一人またひとりと天に召されてゆきます。諸行無常であることだなあ。

    田辺さんと言へば恋愛小説のイメエヂがありますが、わたくしは余りその手は読みませんので、ここでは古典エッセイ『文車日記』を登場させるものです。
    「私の古典散歩」といふ副題の通り、夥しい日本古典作品の中から、田辺さんのお気に入りのエピソオドが満載であります。極私的エッセイですが、押しつけがましさなどは全くなく、読みながら心地良さを感じることができます。田辺さん自身が心から愉しんでゐるからでせう。わたくしも久しぶりに古典作品を音読してみたくなつた次第であります。

    古典作品から満遍なく選んで作者・作品の解説をしてくれますが、あへて時系列順に並べず、ランダムに自由に語ります。いかにもふらふらと逍遥してゐるかのやうです。
    登場人物一人にしても、学説上明らかになつてゐない事柄まで奔放に想像し、小説家らしく物語を膨らませてゆくのであります。そして言葉のチョイスが一々素晴らしい。作家だから当り前といふかも知れませんが、田辺さんの文章自体が読者を陶酔させるのです。

    かういふ素敵な文章を書ける作家がまた一人去つてしまつた。合掌。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-807.html
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    投稿日:2019.09.11

  • Minmo

    Minmo

    もう四半世紀ほども昔の受験生時代、古典を頭に入れるのに効果的と予備校の教師に勧められて以来、田辺聖子さんの古典ものを愛読してきた。今回何度目かの再読中、田辺さんの訃報。少なからずショックを受け、途中で本を閉じてしまった。
    本書は、田辺さんが大好きな古典作品について綴ったエッセイ集。やさしく、たおやかな文体から、本当に彼女が古典とその登場人物たちを愛してやまないことが伝わってくる。彼女の視点で語られると、それまで教科書で読んだだけで、敷居の高かった古典の世界が、生き生きと鮮やかに蘇ってくるから不思議だ。登場人物の息吹まで感じられるようで、本を閉じてからも現実の世界に中々戻ってこられなくなってしまうのが難点。何度でも読み返したい名作です。
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    投稿日:2019.09.04

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