【感想】サロメの乳母の話

塩野七生 / 新潮文庫
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
2
13
8
3
1

ブクログレビュー

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  • 重度積読症

    重度積読症


     物語や歴史上の有名な人物について、その周りにいた人間が、実はこうだった、自分にはこう見えたと語る形式の短い諸編を集めたもの。

     対象人物と語り手は、オデュセウスの妻ペネロペ、サロメの乳母、ダンテの妻ジェンマ・ドナーティ、聖フランチェスコの母、ユダの母について、ユダを教えた祭司、カリグラ帝の馬、アレクサンダー大王の奴隷、カエサルを暗殺したブルータスの師、キリストの弟、ネロ皇帝の双子の兄。
     いずれもあるところまでは史実や物語の筋に則っているので歴史の勉強にもなるし、他人から見るとそう見えるのもさもありなんと思われるところもあり、軽い読み物として面白く読める。

     ラストの「饗宴・地獄篇」は、地獄で楽しく暮らす世間的には悪女と呼ばれた女性たち、クレオパトラやマリー・アントワネット、ソクラテスの妻クサンチッペなどの宴でのやり取りが描かれる。本書が書かれた時代柄、中国からは江青女史が参加。では日本では彼女たちに匹敵する女性は誰?、持統天皇?北条政子?淀君?最後のオチもご愛嬌か。
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    投稿日:2024.01.03

  • さけといわし

    さけといわし

    神話や歴史の逸話の人物たちの周りの人が、その時の話をする形で、それぞれの語る人ごとに話が形成されていく。
    完全にタイトル買いをした作品だったが、地獄会議以外はかなり面白く感じた。特に神話逸話の中で待たされることの多い妻や、タイトル作品である乳母など、主人公に近いが主人公ではない人間が語るその世界は、もとの世界の解像度をあげ、より人間的なものにするものだなと思う。続きを読む

    投稿日:2022.08.22

  • meeko!!

    meeko!!

    イエスやユダ、アッシジのフランチェスコ、サロメ、ネロ帝など、有名な歴史上の人物の伝聞を「ほんとうはこうだったんじゃないか?」といろんな視点で語る物語です。
    真面目な話もあり、思わず笑っちゃうような展開もあり…
    ユダの母親の話が一番面白かったです。
    続きを読む

    投稿日:2020.08.22

  • Halle

    Halle

    「饗宴・地獄篇」は第一夜、第二夜共おもしろかった 
    が、いくら読んでも他の作品が全く印象に残らない 
    もう少し大人になればおもしろさがわかるのか、、??

    投稿日:2017.09.14

  • マッピー

    マッピー

    このレビューはネタバレを含みます

    目次より
    ・貞女の言い分
    ・サロメの乳母の話
    ・ダンテの妻の嘆き
    ・聖フランチェスコの母
    ・ユダの母親
    ・カリグラ帝の馬
    ・大王の奴隷の話
    ・師から見たブルータス
    ・キリストの弟
    ・ネロ皇帝の双子の兄
    ・饗宴・地獄篇 第一夜
    ・饗宴・地獄篇 第二夜

    歴史上の有名人を、違った視点から掘り下げる。
    なんとなく功績を知ってはいるけれど、詳しくは知らない。そんな人物の選定がすばらしい。

    なかでも「サロメの乳母の話」が白眉。
    素晴らしい踊りを披露したご褒美に、若く有名な預言者ヨハネの首を所望したサロメ。
    それは、恋い慕う彼女の気持ちをヨハネが受けとめようとしなかったから…というのは、オスカー・ワイルドの戯曲の話。

    多くの画家がサロメを題材にした絵を描いているけれど、衝撃的なそのシーンは実に冷静な政治的判断のものに行われたものであるというのが、塩野七生の解釈。
    「善意に満ちていて、しかも行いの清らかな人が、過激な世改めを考え説くほど危険なことはないと思うけれど、乳母はどう思う?」
    サロメの行動がいちいちクールでロックなの。格好いいわ。

    「饗宴・地獄篇」は、地獄に落ちた女ども(クレオパトラ、ビザンチン帝国の皇后テオドラ、トロイのヘレン、ソクラテス夫人のクサンチッペ、マリー・アントワネット)が、繰り広げる女子会トーク。
    第一夜は毛沢東婦人・江青をゲストに招いての夜会。
    第二夜はゲストを日本から呼ぼうと思ったけれど、意外と悪女がいないのね…と結論付けようとした時、地上の方から推薦人の声が…!

    地獄がまた楽しそうなのです。実際楽しいらしいです。
    地獄の恐ろしげな描写は、天国サイドの陰謀らしいですよ。

    “また、地獄に送られてきた顔ぶれが面白かった。だから、女たちにしてみれば、交き合う男たちにも恵まれていて、天国の住人のように、立派かもしれないが面白くもおかしくもない、まじめ人間の集団ではない。それに、天国は、住む人間だけが退屈なのではなく、一年中気候温暖でも四季の区別がないから、その点でも、一週間もいれば、頭がボケてしまいそうな思いになるのだった。”
    天国、すごい言われようです。

    地獄にはいい人たちもたくさんいます。
    “女王に仕える奴隷たちの中には、天国に送られる資格充分な者が多かったが、天国と地獄を分けたのはキリスト教だから、それが普及する以前に現世で生を送った者は皆地獄行きなので、これら古代世界の善男善女たちも、地獄まで女王に従いてきたというわけである。だが、想像した以上に過ごしやすいので、誰一人、煉獄での試練を経た後に許される、天国行きを希望した者はいない。”

    塩野さん、こんなに書いちゃっていいのでしょうか?
    地獄に落とされちゃうんじゃないかしら?
    あ、望むところなのか。

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    投稿日:2016.12.02

  • pya

    pya

    歴史の人物をちょっと違った目線から読めて面白い短編集
    特にユダの母親とキリストの弟が面白かったなあ
    ユダの話は太宰の駆け込み訴えをちょっと連想させる

    永井路子も書いてたけど、悪妻悪妻のレベルが日本は小さくまとまっちゃってる!
    クレオパトラとかアグリッピナとかカテリーナスフォルツァレベルの女性陣は、日本の歴史上いないかも
    続きを読む

    投稿日:2016.07.24

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