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匠平 / だいわ文庫 (2件のレビュー)
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もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中
日本で唯一の怪談ライブバーの怪談師である匠平さん。そんな彼の元には様々な恐怖体験が舞い込んでくる。本書はその中から未だ語られたことの無い話などの一切を掲載した1冊である。匠平さんの話を聞いたことがある…方もどうぞ楽しんでいってほしい。 *** こちらも初読みの方。札幌にある日本唯一の怪談ライブバーで怪談師として仕事をしている匠平さん。だいわ文庫が初めての書籍出版という怪談師さんが多いようで、こちらの方も初書籍とのこと。 怪談師という事もあり、話の種類は豊富で楽しい。軽快な語り口なので、楽しく読めるが、内容は恐ろしかった。 では、お気に入りの話をいくつか。 「事故」 走り屋である大次郎は、警察の検問や事故の起こりやすい道をよく知っていた。久しぶりに会った際、その話題になり、一番事故に気を付けている場所はどこかと興味本位で聞いてみた。すると、彼の自宅の前にある見通しの良い交差点だというのだ。ほかにも難所は多くあるだろうに、なぜよりにもよって、目の前の交差点なのかと突っ込んで聞いてみると、その交差点にまつわる、恐ろしい話を語り始めた。 結末を聞いてゾクゾクした。死してなおある怨念というのはなんと恐ろしい事か。最後の方でこの怪異をもたらしている者の正体が知れるのだが、恨みつらみの塊のような存在で本当に怖い。幽霊には様々なタイプがあって、辛さから助けを求めて霊障を起こすタイプ、その場にい続けて霊障を起こすタイプなど色々いるが、この幽霊は積極的に霊障を起こしているらしい。まるで通り魔のようである。障りがあった後、悲惨な結末を迎えている光景をみてげらげら笑ったりとかなり怖い存在になってしまっている。いろいろな人を自分と同じ目に合わせたいと思う性質の幽霊は、悪意だけで動いているので本当に質が悪い。 「軋む部屋」 1泊2日の会社の勉強会。勉強会といっても、上司がついてくる堅苦しい研修のようなものでなく、宿泊施設でただ勉強をするための物だった。当然、真面目に一日中勉強するはずもなく、数時間行っただけであとは、風呂に入ったり、ご飯を食べたりしていた。そのうち、夜になって宴会が始まり、途中でなぜか怪談話を披露する会になっていた。一人一つずつの割合で、怪談を話していると、不意にその場の雰囲気が変わる。よくない空気が漂い始め、大きな音と奇妙な音が聞こえ始める。戦々恐々としていた語り手達であるが、恐怖心を紛らわすため浴びるように酒を飲んでいると、酔いが強くなってきてだんだん気が大きくなってくる。恐怖心が紛れてきた語り手達は、原因を探るため携帯のカメラで部屋の様々なところを撮影し始めるのだが……。 これは話も怖かったが、挿絵にやられた。今まではイラストレーターが書いたイラストだったのだが、なんと本物の写真。しかも心霊写真だ。できればワンクッション置くとか、注意書きが欲しかったものだ……。私は写真だと思わず随分リアルなイラストだなと凝視してしまった。まあ、合成だろうと思いなおしたが、話を読む限り本物かも、という考えが頭をよぎる。( 話をもとに合成したものという可能性にかけたい) この話は、その場でも怖いことが起こりぞっとし、後日更に真相がわかりぞっとするという、一話で二度おいしい話。話を読んでいる途中までは音の正体が全然ぴんと来なかったが、挿絵を見たことによってすべてが線でつながった。その部屋でかつて何があったのかは分からないが、道理で宿代が安いわけである。事故物件は告知義務があるが、宿はないのでこういう目に合う可能性は無きにしもあらず。 恐ろしくてもう二度と挿絵は見れないし、夜に読むなら要注意である。 「踊り場のない怪談」 とある家に引っ越したN岡一家。引っ越した先は二階建ての家だったが、どういう訳か家の中に階段がない。二階に上がるには玄関から出てすぐの階段を使うしかないというなんとも不便なつくりであった。二階はワンルームで広々としている。N岡はダメもとで二階を自分の部屋にしたいと申し出たところ、両親は快諾。一階と二階が完全に独立しているため、一人暮らしの様で素晴らしい。用事があるときやごはん時だけ両親が厳顔をノックして知らせてくれるという、優雅なひと時を過ごしていたN岡であったが、そのうち身の回りで奇妙なことが起き始めた。 これも挿絵が怖かった。挿絵も怖かったし、話も怖かった。絵があることによって、状況が想像しやすいので倍ぐらい怖くなってしまった。踊り場のない一直線の怪談は霊道になりやすいという事だが、ここに現れた者はその霊道にいた者なのか? それにしては何度も現れて、怪奇現象を起こしていくが、もしかしたらこの場所に因果があるのかも? この家は作りも奇妙だし、何か変なことがあったのかもしれない。 それにしても、繰り返し繰り返し現れて同じ行動をするのはなぜなのだろう。何か訴えたいことがあるのか、はたまた誰でもいいという状態になってしまっていうのか。 真相は闇の中であるが、幽霊が見えないっていうのは幸せなんだなと思った。 「何階から乗りましたか?」 近所で有名な幽霊マンションに住む佐藤。この佐藤という男がなかなかに変な男で、自ら望んでこの幽霊マンションに住まいを構えている。理由は心霊現象に遭遇してみたいからというなかなかの理由である。 お望み通り、様々なポルターガイスト現象などに遭遇している佐藤は、慣れた様子でその心霊現象の中で普通に生活をしていた。 様々な怪奇現象が起こっても、ひょうひょうと過ごしていた佐藤だが、ふとある日起こった恐怖体験をぽつぽつと語り始めたのであった。 マンションに備え付けられたエレベーターで起った怪異。正直これがぶっちぎりで怖かった。 何となく嫌な挙動をするエレベーターが一階につき乗り込む語り手。そこから、ただならぬ雰囲気が緊張感をもってにじり寄ってくる。いや、にじり寄ってくるという生易しい物でなく、一気に駆け寄ってくる。 まるでホラー映画の鬼気迫るワンシーンの様であった。あまりに現実離れしており、読んでいて、なんだこれ、こんな怖いことが現代に本当に起こったの??と思うぐらい怖かった。夢であれ。という感じであったが、語り手は本当にあったことだと確信している様子。どうして言い切れるのかと著者が尋ねるが本能で本当にあったことだと理解しているようだ。 語り手はいまだにこのマンションに住んでいるとのことだが、その豪胆さには感服。私だったら恐怖のあまり発狂しそうだ。 この他にも、「声色」、「墓荒らし」、「お香」そして、この本のタイトルにもなっている「闇夜の訪問者」が恐ろしかった。自業自得の話もあったが、とにかく全部不気味で怖かった。 この本は結構ホラー度が高めなので、夜に読むことはお勧めしない。続きを読む
投稿日:2022.04.04
nue1103
北海道の怪談バー「スリラーナイト」で怪談を披露する本職の語り手さんです。 怖い話、不思議な話、不気味な話、ちょっと笑ってしまうような話とバラエティ豊かです。 中には読んでいて背筋が寒くなるような話も収…録されており、引き込まれて読み進められます。 個人的に興味深かったのは「共有」「軋む部屋」「踊り場のない階段」。 そして「闇夜の訪問者」は読んでいて思わずゾクリと震えてしまいました。 非常に読みやすい文体で、怖い話好きには是非とも手にとって頂きたい1冊です。続きを読む
投稿日:2016.06.27
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