【感想】ユルスナールの靴

須賀敦子 / 河出文庫
(29件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 茉志

    茉志

    スウェーデンの鉄道の中で読んだ。
    ユルスナールと、ハドリアヌスと、須賀敦子
    静かに人生が流れていく時間。自分もぴったりのお気に入りの靴を履いて、それで足跡をつけていきたい
    誰か一人でも、その足跡に気づいてくれたら嬉しい続きを読む

    投稿日:2024.04.02

  • リンネ

    リンネ

    ヨーロッパに渡り長いこと暮らした須賀敦子だからこそ書ける文学案内。ユルスナールの大著『ハドリアヌス帝の回想』の紹介がメイン。自らとユルスナールとさらにはハドリアヌス帝の、それぞれの「霊魂の闇」の深さを重ね合わせ、静かにそこに降りていく文学的な語り口には感嘆のため息しか出ません。

    マルグリット・ユルスナール。
    学生時代の一時期、サンドやデュラスと並んで惹きつけられた女性作家です。彼女はフランスを離れ女性秘書とともにアメリカで暮らし執筆しました。言葉を生業とするものにとって、ネイティブな言語が通じない環境に暮らすとはどんなだったのか、ひとり暮らしの私とも重ね合わせるところがありました。それゆえ今回この本を手にとってみたわけです。

    「靴」は、須賀敦子がユルスナールに覚える親しみのアイコンだと思います。修道女となり夭逝した仲良しのようちゃんも、そのきれいな足にペタペタ鳴らす靴を履いていました。親しみと、距離と、須賀敦子がユルスナールに惹き付けられたのは、その相反した二つの感覚でした。
    読み終えると、頑丈な農婦みたいなマルグリットのいかめしい顔が、幼女のような笑顔を見せたような気がしました。
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    投稿日:2023.01.14

  • そ

    ユルスナールを読んだことがないのでどうかしらと思いつつ、美しい日本語と情感あふれる描写に引き込まれる。

    投稿日:2020.04.21

  • udonko

    udonko

    著者最期の作品。須賀敦子のや特徴である柔らかなふくらみのある文章をこれ以上に無く味わうことができる。
    ユルスナールという女性作家の作品と人生を辿りつつ、同時に自らの人生を絶妙に織り込んで自然と語りきってしまうその手腕は円熟というに他無いと思う。
    筆者が作中最後にユルスナールが最晩年まで過ごした部屋を訪ねるシーンがあるが、私たち読者もこの作品を通して、筆者の人生の節目節目を、一つずつ部屋を訪ねるようにそっと垣間見ることができる。
    私の中の白眉は、幼少期の親友・ようちゃんとの別れを語った、「一九二九年」の章である。相変わらず涙腺に来るのである。
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    投稿日:2020.03.22

  • 深川ふらふら遊覧記

    深川ふらふら遊覧記

    マルグリット・ユルスナールとその著作、そして著者須賀敦子自身のエピソードを交錯させながら、見事に独自の世界を気づきあげています。改めて、須賀敦子の力量に感嘆します。

    投稿日:2019.06.20

  • kawabatat

    kawabatat

    イタリア文学者でエッセイストの須賀敦子さんの『ユルスナールの靴』を読む。
    マルグリット・ユルスナールはフランスの女流作家で、出口治明さんが激賞された『ハドリアヌス帝の回想』の作者。
    生まれてすぐ母を亡くし、父が亡くなった20代半ば以降、パリ、ローマ、ヴェネツィア、アテネと旅に過ごした人です。第二次大戦の難を避けて恋人の女性と渡米した後は、生涯ヨーロッパに戻ることなく、アメリカ東北部メイン州のデザートアイランド島の小さな白い家で人生を終えました。

    このユルスナールという、私たちにはあまり馴染みのない作家の人生を須賀さんは追っていきます。
    「きっちり足にあった靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ」という言葉を胸に、須賀さんもまた20代のころパリに渡り、ミラノで結婚され、夫の死後に帰国、と生涯を旅に過ごしました。
    本作は一章ごとに、ユルスナールの足跡に自らの人生を重ねていきます。二千年前に生きたハドリアヌスの行跡を通奏低音として響かせ、三つの異なる旋律を重ねて一つの音楽に昇華させていく作業。
    『ミラノ霧の風景』や『ヴェネツィアの宿』でも発揮された須賀さんの、しっとりと洗練された文章にのって、私たちは、ユルスナールの霊魂の闇や、ハドリアヌスの情熱、須賀さんの思索のそれぞれがうねり、互いに絡んでいく瞬間を追体験することができます。

    作品の中で何か劇的な事件が起きるわけではありません。
    あたかも、日曜の午後、親戚のおばさんのお家にお邪魔して、紅茶を飲みながら、おばさんの「どこまで話したっけ」という言葉で始まる昔語りに耳を傾けるような、ごくありふれた日常の風景。でも、後から振り返ると自分の人生にとって、すごく大切な時間だったと認識するような体験。
    須賀さんの思索に自らを投影して読み進める喜びを感じつつ、しかし、物語が終わりに近づくのが惜しい。そんな貴重な本に出会うことができました。
    続きを読む

    投稿日:2018.10.10

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