【感想】大脱出――健康、お金、格差の起原

アンガス・ディートン, 松本裕 / みすず書房
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
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ブクログレビュー

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  • rafmon

    rafmon

    ノーベル経済学賞受賞のアンガスディートンによる著作。所得の成長が健康改善の主たる要因ではなく、制度の違いや知識の差が重要。富裕国では障害が減っているし、知能指数は時代とともに上昇している。平均身長も世界の大半の地域で高くなってきた。貧困国にトリクルダウンさせていく上での課題は何か。

    アンガスディートンは、開発援助は害を及ぼしうると主張。開発援助を受けた被援助国の政府は、自国民よりも援助国に対する説明責任を重んじ、政府と市民との間の社会契約関係が弱まり、公的制度の強化や持続可能な発展に必要な改革を行うインセンティブが低下。大体、政府が機能不全であれば資金援助した所で権力に資金を与えて強化する事で、それが必ずしも分配され、国民のためになるという保証がない。

    心血管疾患に関しては利尿薬が重要なイノベーションとなった。利尿薬は効果的な降圧剤でもある。心臓病の主なリスク要因である高い血圧を下げる作用があると言うことだ。

    事実、興味深いのは、冷戦以降援助が削減されてからアフリカは経済成長しており民主主義の割合も大きく増加している。援助によって民主主義が阻害されていたと考えられると言うことだ。

    他方、海外援助は貧困国で何百人もの命を救ってきた。抗生物質やワクチンにより乳幼児死亡率を引き下げた。天然痘は撲滅されたしポリオに対しても同様の努力が実を結びつつある。

    アンガスディートンをネットで検索すると、富裕国における絶望死を語っていた。所得や制度、知識や格差に対する認知という意味で深く考えさせられる一冊だ。
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    投稿日:2023.02.10

  • aya00226

    aya00226

    人類最大の大脱出は、貧困と死からの脱出。
    対数目盛にすると、一人当たりGDPと平均寿命はリニアになる。
    お金も大脱出したが、大分岐によって貧富の差は拡大している。それが底上げを妨げている。

    投稿日:2019.07.26

  • koyama1026

    koyama1026

    15/10/13 WBS

    きょう発表されたノーベル経済学賞。アメリカ・プリンストン大学のアンガス・ディートン氏に決まりました。ディートン氏は公共経済学の研究で知られ、「消費と貧困 福祉の分析」が受賞対象となりました。ディートン氏の研究で有名なのは、収入と幸福感の関係を解き明かしたことです。年収に合わせ幸福感は上がりますが、年収7万5,000ドル(約900万円)を超えると幸福の感じ方が鈍くなるといいます。アメリカでは決済サービスの会社のCEOが、この研究をもとに自身の年収を100万ドルから7万ドルに引き下げ、従業員の年収を同じ7万ドルに引き上げたことで知られています。ディートン氏の著作は、日本でも今年、翻訳出版され、話題を呼びました。ディートン氏の理論は日本経済にも影響を与えるのでしょうか?続きを読む

    投稿日:2019.05.31

  • izusaku

    izusaku

     世界全体では貧困や健康は改善している。生活水準や健康状態はこの100年で劇的に改善してきた。お金については富裕国はますます豊かになり、一方、貧困国は、中国とインド以外は目立った改善が見られず、富裕国との差が広がっている。しかし、富裕国でさえ発展の速度が停滞している。
     富裕国の貧困国に対する支援は、富裕国の思惑により、必ずしも効率的かつ効果的な支援となっていない。
     著者は多くの文献を引き丁寧に説明している。経済学に限らず国際関係学に興味がある人にも読んでもらいたい。
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    投稿日:2019.05.19

  • ちぃ

    ちぃ

    KennyのGetting Betterと論展開は似てるけど、こちらの方が開発のネガティブな点とか援助の失敗例/実害みたいなことを書いている。

    投稿日:2018.04.07

  • 甘味処

    甘味処

    近年の貧困研究についての状況が丁寧に書かれている。
    解決策が明確になってるわけでなく、考える切っ掛けとなる本。

    第一部 生と死、死亡率や病気、身長といったモノがどう変わってきたのか
    第二部 お金、所得格差の状況や変化について
    第三部 助け 様々な格差にどう立ち向かうのか

    様々なデータを紹介しつつ著者の考えが述べられている。

    世界がどう変わってきたのかを多くのデータから推考しながら今後どうあるべきかを考えさせられる。
    よくある国際比較や貧しい国といったことだけでなく、死や病気などからの「大脱出」は先進国でも起きているといった話や、貧困にあえぐ人の中には「知識」が広まると解決するであろう事があるが、なぜ「知識」が広まらないのか、貧困への援助は本当に貧困に立ち向かう武器になっているのか、むしろ逆効果ではないのかというデータもあったりでボリュームがある一冊。
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    投稿日:2016.07.26

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