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日向唯稀 / CROSS NOVELS (1件のレビュー)
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yukiserigaya
入荷先:目黒区立八雲中央図書館 日向は本書をもって、「郁美&隆生シリーズ」(愛称:東急バス淡島営業所の憂鬱)の終焉と位置づけている。最初の『マイ・ファア・ボーイ』から約9年、舞台となる渋谷の町も大き…く様変わりをしていることは言うまでもないだろう。 一言で考えるならば「Before Markcity」だった(オープンは刊行した翌月である)このシリーズは終わってみれば、東京メトロ副都心線が開業し、渋谷マークシティは街開きをし、そして移ろう街角は大量の人々を吐き出しては流していった。 という「渋谷街語り」みたいなことをついつい行ってしまいたくなるほど、本書で写し取られる渋谷の町は表象的な一面(渋谷区道玄坂・宇田川町エリア)ではなく、渋谷区桜丘町14番地や渋谷区松涛32番地、目黒区上目黒2丁目や目黒区青葉台1丁目といった若干離れたエリアの目線がきちんと織り込まれていることでもある。 ただしながら、結果として課題もまた残ってしまったことも悔やまれる。 まず、明白ではないにせよカリスマという存在をめぐって一種盲目的に陥ることの危険性をはらんだものという見方が日向の意識においてできてしまっているがゆえに、そうした意識と作品の整合性を無理にでも掛け合わそうとしてムチャをした側面があることだ。本書でも「今は亡き男性」をめぐる情景にそうしたものを感じ取れなくはないだろう。 二つ目には、不払い労働の側面が見え隠れしてしまっていることがあげられる。 そして三つ目には、どこまでがプライベートな関係でどこまでが仕事上の関係になっているのかが不明瞭になっていることで、その不明瞭さが―作品のコントラストを彩っていることはわかってはいるが―危うさやもろさを滲み出してしまっていることにあるだろうか。 昨日も今日も、そしておそらく明日も。東急バスが走る風景が続くようにこの風景も続くのだろう。続きを読む
投稿日:2009.04.06
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