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福永武彦 / 新潮文庫 (156件のレビュー)
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総合評価:
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マチルダ
このレビューはネタバレを含みます
サナトリウムでの汐見の振る舞い。彼が遺した2冊のノオトには、純粋な愛と頑然な孤独が記されていた。 藤木が汐見を遠ざけていたように見えたが、違うのだろうか。藤木との別れが千枝子への愛にも影響を及ぼす。更に基督教の考え方の違いと戦争によって汐見の孤独は増す。 愛するが故に結ばれない愛。自分に厳しすぎる人達だったなあ。
投稿日:2024.03.09
りょー
福永武彦自身の体験がもとになった私小説の雰囲気漂う、著者の中では数少ない作品の一つである。主人公の汐見の純粋すぎるがゆえに、後輩の藤木やその妹の千枝子との恋愛感情をこじらせている様は、非常に胸が痛んだ…。ひねくれた性格によってこじらせる場合もあるが、純粋すぎる性格によってこじらせる場合もあることをこの作品で認識することができた。 自分はここまでの純粋な気持ちを持っていないので、なぜここまで汐見が戦争や孤独、恋愛に対して深く考え、潔癖であろうとするのか、理解に苦しむ部分もあった。戦中の時代だからこその感情なのかもしれないが、当時の若者とは少し違う感性、考え方を持っているがために、自分を苦しめてしまっているのだろうか。そうなのではないかと思いながら読み進めていたため、自分も辛くなってしまう場面がいくつかあった。ここまでの長文を手記として綴った汐見の文章力には脱帽である。続きを読む
投稿日:2024.03.04
planets13
何とかたくなで、潔癖というか頭でっかちなのだろう。自分のほうを向いているようでいて、自分を透かしてさらに先を見詰められてしまったら、立場ないでしょうよ。汐見もつらかったかもしれないけれど、千枝子もまた…つらかっただろうと、思わずにいられない。続きを読む
投稿日:2023.12.24
カフェオレの精
儚くも純粋な愛を知りすぎるほど知ってしまった主人公。何にも勝ることなく孤独と向き合う。 どの会話も心地よく読めた。美しい。
投稿日:2023.11.26
綺羅安
今から50年程前の高校生の頃読んだ作品だが 本当にこの時期に出会えて良かった。この現代で初めて読む人達には色メガネをかけずに読めるのだろうか? 自由が不自由の内の自由から 自由を飛び越え過ぎ 多様化…で自由の名の不自由な現代で このプラトニックな愛情を 人に紹介はできないのか?一生大事にしたい作品である。続きを読む
投稿日:2023.08.27
taroh
・汐見が書いた手紙を「私」が読む、という構造が最初はまどろっこしく感じたが、第三者視点になることで、彼の孤独や心境については(本人ではないので)結局わからない、という絶妙な距離感を生み出す効果があるなと読後に感じた ・男の青春あるある、物事を頭でっかちに捉えてまくしたてる感じが、自分の若い頃(今もかも)を思い出して共感性羞恥… もうちょっと地に足を着けて、柔軟に、年上の余裕をもって千枝子に接することができていたら、と考えてしまわなくもない ・理想を夢見る汐見に藤木が苦痛を感じ、さらに千代子がそこに兄の聡明さも期待され、重みを感じてしまうのはもっともだと理解できる一方、自分も若い頃は(今もかも)他者に対して、汐見と同じようなふるまいを無邪気にしていただろうなという心当たりを発見し、苦しくなった ・聡明な汐見の、自分が愛した2人が自分を愛していないと思い込んでいるところは、幼稚さや未熟さを感じた ・「孤独」と「純潔」を結びつける描写、作者の言語感覚の深さに恐れ入った 汐見が千枝子を受け入れなかった感覚、心理状態、思想を的確に表現していると感じる →藤木の死後守り続けた自分の”孤独”に対して、千枝子は「内部への闖入者」に思われた?(別の人の考察より) ・またしても(個人的に)好きな感じのラスト というか世の中の映画や本って、自分が浅くて無知なだけで、意外とこういう終わり方が多いのかも ・一瞬しか出てこないくせに、めちゃくちゃ正論を言い放つ春日パイセン 「真の孤独というものは、もう何によっても傷つけられることのないぎりぎりのもの、どんな苦しい愛にでも耐えられるものだと思うね。(中略)たとえ傷ついても、常に相手より靭く愛する立場に立つべきなのだ。人から愛されるということは、生ぬるい日向水に涵っているようなもので、そこには何の孤独もないのだ。」 ・喫茶店で読んでいたところ、出征やショパンのあたりでちょうど店内のBGMで「別れの曲」が流れ、演出がすぎるなと少し笑ってしまった
投稿日:2023.06.20
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