【感想】正義の偽装(新潮新書)

佐伯啓思 / 新潮新書
(11件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • パンダの眼は何かたくらんでる

    パンダの眼は何かたくらんでる

    このレビューはネタバレを含みます

    ただの時事評論にあらず。重厚な思考の形跡を伺わせるような評論です。(本来そういうものなのかな)。
    時事の出来事に併せるように顕現してくるものは
    かつて見た光景・・・ヒトは進歩というものがないらしい。
    すべてに於いて「既視感」を覚えるのか。
    いまさら追加執筆が求められるのは、大衆が健忘症を煩っているからだ。
    そして売れる・・・。
    既に古典内でしつこいくらいに語られている。
    その引用と現実の事象を照合させるだけだ。
    筆者はため息をつきながら執筆しているのだ。
    また、資本主義の本質について納得させるものがある。
    嘗ての著書「資本・欲望・なんだっけ」でも詳しく解説されていましたが
    改めてアベノミクスとの対比の中でなんていうか得心がいったというか。
    彼の中ではもう既に結論がでているのだろうとペシミスティックにならんで
    欲しいですよ。ああ、もうニヒリズムは卒業した先生であられるのかな

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    投稿日:2018.01.31

  • rafmon

    rafmon

    佐伯先生の語り口や切り口は面白い。本著もキャッチーなポイントから民主主義について論理的解説を試み、そういう考えもあるか、という着想を多く与えてくれる。残念なのは、テーマ一つ一つの掘り下げが深まる前に、話が進行してしまう事。新潮45への寄稿を纏めたものとの事で、その点は仕方ないのか、テレビショーの感。

    山本七平が言っていた民衆を操作する空気について、民主主義における民意について。日本国憲法の有効性。石原慎太郎の考察、などなど。面白テーマずらり。雑誌寄りか、と思えば合点がいくのだが勿体無い。それなりに、である。
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    投稿日:2016.09.22

  • コナン.O.

    コナン.O.

    経済学者・思想家である佐伯啓思が、月刊『新潮45』の連載「反・幸福論」の2012年7月~2013年6月発表分をまとめたもの。同連載の新書化は、『反・幸福論』(2012年1月刊)、『日本の宿命』(2013年1月刊)に次いで3冊目。
    連載の時期は、民主党政権の末期から第二次安倍政権への移行を挟んでいるが、時論に留まらずに、著者が「まえがき」で「ひょこひょこと時々の状況に応じてムードが変わること自体が問題というほかありません。そして、それこそがまさに今日の民主政治の姿なのです。・・・私には今日の日本の政治の動揺は、「民主主義」や「国民主権」や「個人の自由」なる言葉をさしたる吟味もなく「正義」と祭り上げ、この「正義」の観点からもっぱら「改革」が唱えられた点にあると思われます」と述べる通りに、現象の根底にある、民主主義、日本国憲法、国民主権、天皇制等のテーマに踏み込んで論じている。
    もともと雑誌の連載ということもあり、整然とした論理展開により結論が提示されているわけではないが、本書の政治面での主張を極めてシンプルに整理すると概ね以下のようなものと考えられる。
    ◆日本には責任の所在を明確にしない「空気の支配」が存在し、石原慎太郎も維新の会もそうした空気により支持されたものである。
    ◆ルソーが唱えた民主主義の出発点は、「共同防衛」と「憲法(根本的規範)の制定」であり、日本が民主主義を標榜する限り、他国に防衛を任せることは矛盾するし、主権者ではないGHQが作った日本国憲法は、内容云々以前に無効である。
    ◆「国民主権」の民主主義は、主権者と統治者が同一の国民という根本的な矛盾を孕んでいる。「共和主義」の伝統のない日本には向かない。
    ◆日本は、権威としての形式上の主権が天皇にあるという形をとるほかはない。
    現代日本の問題を考える上で、多くの視点やヒントを与えてくれる。
    (2014年6月了)
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    投稿日:2016.01.11

  • みみめめ

    みみめめ

    佐伯先生、憲法に対する無知と、論理のひどさはやばいな。。自分より極端な論理に共感しつつ、「ここまでは私も言いませんよ」と中庸かのように装う。笑 そこは素直にうまいなと笑った
    二章の、丸山眞男の批判したものは、丸山眞男のエピゴーネンによって維持、補強されたって話はやや同意。
    最も物笑いなのは、歴史主義を語るくせに、目前の歴史(もはや戦後は「60年以上」続いている)を「無視」するか、「無効」と叫ぶ。戦後に色々問題点はあろうが、その歴史をスルーして、文脈や伝統、歴史を語れるほど短い期間ではない。佐伯先生の本は好きだが、戦後を語ると、特有の情念が出てくるのは問題だ。保守とは、ゆるやかな変化を志向するものであるはず。バーキアンとして、そこは見過ごせない。
    佐伯先生自身の言葉を、佐伯先生は裏切っている。
    「社会秩序を大きく変えないで、少しずつ変えていくというのが保守の立場です」(『学問の力』)
    目的のためなら、目の前の現実を無視してもいいというのが保守なわけないだろう。保守は常に変化についていけない人々に寄り添う立場であるはずなのに。

    ほとんど自民党シンパになっている。どうしてしまったんだろうか、佐伯先生は。
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    投稿日:2014.12.16

  • さぬきうどん人

    さぬきうどん人

    日本の「正義」を考えると、民主主義とか民意とか、国民の多数が考えて述べることが適当なのかもしれない。その結果、かつての民主党政権やアベノミクスは「正義」となった。しかし、ちょっと考えると民意を唱えるのは国民の多数ではなく、民主党や自民党だ。

    木に止まったセミのごとく、ひたすら「ミンイ、ミンイ」と鳴いていれば「民主主義」ができあがる。実は独裁者こそが民意を語り、国民を代表することができる。それが著者の言う「正義の偽装」だ。

    こうした欠陥をはらんでいる民主主義ではあるが、現状ではその体制を選択するしかない。それもまた、大きな矛盾。

    「正義」とは考えれば考えるほど、ループしてしまうものなのだ。
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    投稿日:2014.07.25

  • sazuka

    sazuka

    世の中のふやけた正義の味方の皆さんを斬る本、かと勝手に想像していたら、そうでもなかった。民主主義という正義が本当に機能しているのか。そもそも民主主義はいいものなのか。そういう話。「民意」を「ミンイ」と書くことで、この本の言いたいことはかなり表せるのではないかと思う。「日本」を「ニッポン」と書くと急にわかったようなわからないようなナショナリズムが喚起されるのと同じだ。「専門家」への依存や不信も社会の不正義を助長しているが、そもそもexpertのpertとは、「小生意気な」とか「でしゃばり」、つまりexにpertするとは「外へ向かってしゃしゃりでる小生意気な者」だと。言われてみれば、本当にその腕や知識で飯を食っている人のことを専門家という風には認識できないなあ。他にも石原慎太郎の話やら、部分的に溜飲が下がるところはあるが、なんだか思い出に残りにくい本であった。続きを読む

    投稿日:2014.04.06

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