【感想】スミヤキストQの冒険

倉橋由美子 / 講談社文芸文庫
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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ブクログレビュー

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  • ばあチャル

    ばあチャル

    スミヤキストとは「炭焼き党」から連想される革命を起こすのが目的のある団体から、ある他の団体にスパイ&工作のため派遣された「Q」さんの物語。「Q」とはクエスチョンからきています。

    書かれたのが昭和44年(1969年)ですからなにがなし全共闘が暴れた時代を彷彿させますが、そんなことは今となっては懐かしい昭和の時代の懐古調です。しかし、この小説は歴史的な詮索は関係なく「正義と信じたものを引っ提げて、硬直した集団の中でのひとり活動はコッケイでもあり、勇ましくもあり、果たして本人が信じているものがいいことなのか?とあれやこれや悩むのが人間というものだ、という落ちになるのでしょう。

    とにかくこれぞ文学的だと文学好きが満足する小説でありました。
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    投稿日:2020.02.12

  • hy343

    hy343

    本来なら35年くらい前に読んでても不思議ではない本。
    (読んだ気もしたけど読んでなかった(^^;))

    もっとも、当時読んでも猟奇系サイドカルチャー小説くらいにしか思わなかったかも知れないので、結局本というのは「読んだ時が旬」でいいんじゃろうね。

    1970年の安保闘争の前年、國民(年若い学生が主だったろうが)がまだ政府フザケルナと怒る根性を持っていた頃に書かれた小説。

    スミヤキ党の「密命」を帯びてある島に降り立ち、その島にある「感化院」に潜入したスミヤキストQ、の冒険譚、である。

    密命とは、その島での低層階級である「雑役夫」や「院児」を組織して「院長」ら権力層を殲滅することらしいのだが、Qが自己の劣情や奇怪な登場人物たちに絡め取られ、モタモタしているうちに、却って自身が殲滅されそうになるという話である。

    閉塞状況の中で行き場を失うということではカフカの「城」とか安部公房の「砂の女」などを思い出すが(ちゃんとは思い出せないが(^^;))、あちらの(確か)静謐と諦観の漂っていた世界とは異なって、こちらの世界はエネルギッシュに飛散する言葉の横溢で埋め尽くされている。饒舌なのだ。

    その閉塞状況の中の闘いで描かれるのは、宗教であり、セックスであり、食人であり、差別であり、文学であり、ギャンブルであり、そして(虐げられた者のハケ口としての)革命的思想であり…といった人間の最暗部にうごめくドロドロしたもの、要するに現代社会の似姿なのである。

    その頃…高度成長期の國民の心のありさまを映しとり、当時人気を博した(というより物議を醸した)小説のひとつであろうけれども、社会が本質的に内包する「閉塞状況」を描き出したという点では(舞台設定も登場人物たちの思考も基本的にはピンと来ないが)、今に通じる普遍性は持っているように思われた。

    …なんつーことを考えていたら、他者による評論の形を借りたあとがきで著者に、

    この物語からなんらかの意味を読み取ろうとするのは「旧人類インテリの悪い癖」

    と、バシっと言われてぎゃふんとなるのだが、一方その著者にして、

    本作は「ドン・キホーテ(Don Quixote)」や19世紀ヨーロッパの革命的秘密結社「カルボナーリ(炭焼党)」をモチーフとしている

    とも記述しており、著者自身の風刺精神と問題意識は明確なのである。
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    投稿日:2019.06.13

  • rinkotobabel

    rinkotobabel

    ある意味ダークホラー、暗黒小説。グロテスクな世界観が圧倒的な筆力で描かれていて、読み切るまで陰鬱な気持ちになりました。ドグラマグラより精神蝕まれる作品じゃないかと思いました。設定されている世界観や話の構成がパーフェクトなので、なんとか最後まで読みましたが、かなりキツかったです。好きな人にはハマる小説かもしれませんが、私は☆3つの評価が最高得点です。続きを読む

    投稿日:2014.05.27

  • lunary

    lunary

    主人公が超のつくポジティブ至高。
    それか単にマゾヒストなのか。
    結構グロいけどどことなく笑えて楽しかった。

    投稿日:2012.06.15

  • itou++

    itou++

    これは革命党派の活動を皮肉たっぷりに戯画的に描いた作品。作者あとがきでさらっとそのことを否定はしてあるけど。
    現実の革命党の活動との対比などとは無関係に純粋に小説として楽しんでも勿論面白いが、やはり某政治思想との関係において読んでいくと更に面白い。
    作者自身が語っている通り、これは「アマノン国往還記」などと同じく、異世界に行った主人公が不思議体験をするという体裁の物語で、現実世界の某かをちょっと変質させて描いているところが何とも面白い。アマノン国同様に「それを風刺の対象にしちゃまずいだろ」というものを大胆に戯画化している。
    「パルタイ」などを読めば、この人が革命党派の思想と行動を斜めに見ているのがわかると思うが、この小説では更におしすすめている。
    今時の人には何をどう戯画化しているのかもわからないかもしれないが・・・。
    続きを読む

    投稿日:2012.06.10

  • homogeneity

    homogeneity

    『聖少女』、『暗い旅』と来て、『人間のない神』の次にこの一冊。あんまり難しいことを考えずに読みたいが…。この後は『夢の浮橋』、『アマノン国往還記』の予定。今年はしばらく倉橋由美子祭りでいきます。

    投稿日:2012.02.18

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