【感想】日本の財政 再建の道筋と予算制度

田中秀明 / 中公新書
(12件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • japapizza

    japapizza

    日本の財政問題といえば、増税の問題に単純化される傾向があるが、本書は、増税は必要としつつも、予算制度や公務員制度に焦点を当て論じている。
    予算制度の問題として、マクロ面からは、
    ?赤字ルール/景気変動に対応して安定的に財政運営を行うためのメカニズムが欠如している。
    ?支出ルール/シーリングが一般会計当初予算を対象とするため当初予算偏重、一般会計偏重、単年度偏重の問題を生じさせている。
    ?中期財政フレーム/単なる見通しであり支出を拘束せず、ベースラインがない。
    ?透明性/透明性が低く、会計上の操作を抑止できない。
    ?意思決定システム/首相・財務大臣が政府の内外に存在する拒否権プレーヤーを制御できない。
    ミクロ面では、予算を効率的・効果的に使うことを促す仕組みやインセンティブが乏しい
    ことをあげている。
    一方、財政再建に成功した国の特徴として、
    ?財政ルールを踏まえ、内閣主導のトップダウンで支出の総額、そして省庁別の支出の上限額などを複数年にわたり決定し、事実上固定する。
    ?こうした省庁ごとに設定された支出上限の枠のなかでの資源配分は省庁に裁量を与える。
    ?予算編成での査定では、細かい事前規制を行うのではなく、ペイアズユーゴー原則などのルールを導入し、予算制約のなかで資源の再配分に重点を置く。
    ?会計検査院や省庁自ら行う政策評価などを活用して、調達などの予算の執行面、プログラムの実施面で改善を行い、予算の効率化を図る。
    ?人口高齢化に対応して、より長期的視野を予算編成に取り入れる。
    といった共通点をあげている。
    この20年の財政悪化の政治プロセスの振り返りも参考になった。
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    投稿日:2018.10.08

  • 天パ太郎

    天パ太郎

    誰しもが思う日本の財政赤字について、元官僚&元民主党のブレーンの立場から論じた作品。
    諸外国の財政赤字の歴史や状況についても書かれていて、財政赤字のことを概観できる。


    逆にここまで書かれていて、なぜ民主党で財政改革が出来なかったのか、どうしたら切り込めるのかについて、今後は書いて欲しいなぁと思った。続きを読む

    投稿日:2018.10.08

  • kumasank

    kumasank

    これは良書です。元財務官僚が財政について相当な問題意識を持って書いています。政治、官僚それぞれの問題を指摘したうえで、政治家のコミットとその前提となる国民のコンセンサス醸成の重要性と、テクノクラートとしての公務員の専門性向上が期待され、予算制度、財政責任法、公務員制度改革が提言されています。問題は
    根深いですね。
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    投稿日:2016.02.03

  • horinagaumezo

    horinagaumezo

    日本の財政悪化の軌跡、財政赤字についての理論、先進各国の財政再建策などがよくまとまっており、そのうえで、財政責任法の制定など日本の財政再建に向けての処方箋を提示している。
    財政再建に向けては、プレーヤーのコミットメントが重要という指摘が印象に残った。本書では地方財政についてはほとんど触れていないが、本書を読んで、地方自治体におけるプレーヤーの財政健全化へのコミットメントを確保するような仕組みとして、財政運営基本条例の制定が有効なのではないかという示唆を得ることができた。続きを読む

    投稿日:2014.08.30

  • karma_fukai

    karma_fukai

    現代版の昭和史みたいな。読むごとに暗澹たる気持ちになる。拒否権プレイヤーが多すぎて決められずまずい方向にずるずると進んでいく。諸外国はなぜうまくいったのかもみっちり書かれておるし、それらの国々の中でうまく行った方は結構短い期間で立ち直ってることが数少ない救い。続きを読む

    投稿日:2014.08.18

  • nfujishima

    nfujishima

    「ダイヤモンド」のWeb記事で、著者がインタビューされているものを読んだのがきっかけで、前々から関心を持っていたテーマだったので、著書の方も読んでみることにしました。
    自分自身の体験からも、日本の財政再建がうまくいかないのは予算編成の方法にあり、予算編成の方法を変えることができないのは、個々の政治家や公務員の資質や意識の問題というよりも、根っこには日本の政治・行政システムの問題であることは強く感じていましたが、そのことを実に明快にまとめてくれていました。
    また、とはいえこれを解きほぐすのは並大抵のことではなく、現実にそれが果たして可能なのかとも思っていましたが、オーストラリアやスウェーデンなど、実際に予算編成システムを抜本的に改革して財政再建を成功させた先進国の例があることを知り、非常に意を強くしました。
    この本で、著者は解決のための具体的方策を提案してくれており、それは非常に納得のいくもので、これを実現することは、実現の意思さえあれば可能なように思います。現在までのところは、政治的状況がまだまだ政治的リーダーたちにその意思を持ってもらうには至っていないということのようで、歯がゆい状況ではありますが、日本に残されている時間はもうそれほど多くないように思いますので、1日も早く実現に舵を切ってもらいたいものだと強く感じました。
    続きを読む

    投稿日:2014.02.18

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