【感想】経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには

大竹文雄 / 中公新書
(56件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
18
17
15
3
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • deki

    deki

    「お金がない人を助けるにはどうしたら良いですか?」
    運や努力や能力によって様々な格差や不平等が生じます。
    小学5年生の質問が大人に深く刺さります。
    僕は福祉の世界からこの問題を見ていますが経済学からの視点を示唆してくれる本です。

    マリッジプレミアム
    「マトモな男は絶対結婚している」
    のではなく
    「結婚によって男は仕事ができるようになる」
    良い男は結婚しているのではなく結婚して良い男になると神学論争に決着がついたように思います(笑)

    著者の調査によると
    日本人の7割を超える人が
    「十分な格差がないと人々は努力しない」
    過半数が
    「所得は各人の選択や努力によって決まる」
    と考えるとのこと
    日本人の支持を得るためには
    「努力しているにもかかわらず運が悪い人を広く救う制度に変える」
    ことが必要とのこと。
    低所得者への再分配だけでは支持は得られないとのことです。
    確かに生活保護制度への風当たりの強さはその裏返しなのかもしれません。
    ただ運が悪かった人を見つけるのは大変なんですよねσ^_^;
    続きを読む

    投稿日:2020.02.11

  • ますく555

    ますく555

    このレビューはネタバレを含みます

    行動をうながすためのインセンティブを見ていったり設計したり、また、統計データから相関しているものをどう読み解くか、その因果関係への着眼点の持ち方、それらが、本書のタイトルになりテーマとなっている「経済学的思考のセンス」になる。本書は2005年刊行の本ですが、すでに行動経済学の考え方が取り入れられていたり、格差や不平等に関する着眼点や論考にも先見の明があり、現在でも通用する内容になっています。最初は、イイ男ははやく結婚しているものなのか、それとも、はやく結婚して守るものができたため、あるいは妻に育てられたため、などによってイイ男になったのか、といったおもしろトピックをとりあげて、経済学的な視点といったものに慣れていく感覚ですすんでいきます。それは、プロ野球監督の能力とはなにか、だとか、オリンピックの国別メダル獲得予測に関するものだとか、週刊誌の見出し的なトピックのものが多い。中盤から最後までは年金問題や格差問題を正面から扱い、不平等というものにドスンとぶつかっていく硬めの論考になっていきます。それは大まかに見ていくというのとおは逆で、ミクロな部分を仕分けしていくように、そして、本書の前半部分で親しんできた経済学的な着眼点と思考を用いての分析になっていきます。低所得者は怠惰であるからそうなった、つまり努力が足りないからだ、と考える日本人は多いそうで、さらにはアメリカ人的な考え方でもあるようです。ヨーロッパのほうでは、幸運や持って生まれた才能に大きく左右されるものだと考える向きが強いそう。これは、努力も幸運も才能も、どれもが低所得や高所得に影響するもので、どれか一つというわけでもなければ、どれが一番というものでもないのかもしれない。また、努力が足りないから低所得なのだ、と考える向きの強いアメリカでは、「今は低所得だけど、転職によって高所得を得られる可能性はずっとある」というように、所得階層間での移動率が高い。幸運や持って生まれた才能が大きく関係すると考えるヨーロッパでは、所得階層は固定的。日本はどちらなのかといえば、所得階層間の移動率は低いのに、考え方は努力が足りなからだ、というもので、なんだか組み合わせが悪いものになっている。努力しても所得階層間の移動率が低いので、努力が報われない可能性が比較的高いのに、それでも努力が大事でな要素であって、運・不運や持って生まれた才能は努力よりも影響は小さいと考える。よく日本人は「自己責任」という考え方をするので、そういった場面での冷たさが指摘されることがあります。こういう、社会の構造と心理のアンバランスさがそういった日本人の意識を醸成しているのだろうなあと思いました。アメリカ人のいう自己責任と日本人のいう自己責任ははっきり違ってきますからね。努力すれば報われるアメリカンドリームの世界を前提とした自己責任と、せいぜい大学入学までの努力が比較的報われて、それ以降の努力は報われない世界を前提にした自己責任と、まったく違いますよね。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2019.06.22

  • 板橋区民

    板橋区民

    大竹先生の著書はもう3冊目になるので、書かれている内容はすんなり理解できた。競争万歳の経済学者なのに、その必然的な帰結である格差について否定的なのは意外だった。
    最後に経済学的思考とはインセンティブと因果関係の正しい理解であると大胆に総括されていたが、大竹先生の専攻分野は広い経済学の極一部分であり、さすがにそんな狭い定義に経済学は収まらないだろうと思われる。続きを読む

    投稿日:2018.11.27

  • aya00226

    aya00226

    調理時間の短縮が肥満増加の原因=時間非整合性の問題。
    「善きサマリア人のジレンマ」=支援が依存を生み、社会全体としてよくない方向に進むこと。
    人間は目標があると死期をずらすことがある。
    金銭的インセンティブが重要。死亡時期さえ変化させる。

    製品が高いと売れなくなる。高速道路の料金を下げれば通行量は増える。
    不十分な金銭的インセンティブは非金銭的インセンティブを弱めてやる気を失わせる結果になる。

    ルイスシュメリングの逆説=プロスポーツは対戦相手が拮抗していないと成り立たない。一人勝ちでは、儲からない。結果が予測できないときに興行が最大になる。一人勝ちが生じるフリーエージェントやドラフトではなく、参入や売買が制限されているから。
    マスメディアによって、一流選手と二流選手の年俸の差が開いた。マスメディアによって多くの人に見せられるから。

    どのような仕事をすれば成果がでるかがわからないため、成果主義を導入した。
    学問の自由は何もしない自由を生む。
    大学教授を任期制にすべきか。

    プロスポーツは経済学の仮説を検証する自然の実験室、と呼ばれる。

    企業年金の未積立債務の存在は、企業年金がネズミ講で運営されている証し。

    年功賃金の崩壊の理由=技術革新と陳腐化、インセンティブ理論、適職探し理論、生計費理論、
    贅沢になれると戻れないから、それを防ぐためという理論もある。

    賃金のタイプ=アメリカタイプとイタリアタイプ。日本はイタリアに近い。好景気の時に就職した世代は生涯賃金が高い。

    政府支出のGDPに占める割合は、日本とアメリカは小さい。35~37%。OECDの平均は41%。
    続きを読む

    投稿日:2018.06.11

  • うれい

    うれい

    『ヤバイ経済学』をちょっと固くした感じ。取り扱う内容は経済学とは本来関係なさそうな分野が多く、よんで興味を持つ人も多いと思う。

    時間をおいて再読したい

    投稿日:2016.12.14

  • pikec3

    pikec3

    身近な事例から経済学的な考え方を学ぶことができる。
    自分に経済学的思考が備わっていないためか、途中読みにくい部分があった。
    経済学についてもう少し学んでから再読したい。

    投稿日:2016.07.03

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。