【感想】世界図絵

コメニウス, 井ノ口淳三 / 平凡社ライブラリー
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
3
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ブクログレビュー

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  • hazel8483

    hazel8483

    世界で初めての
    「子供のための絵入り教科書」なんだそうです。
    感じとしては「絵図鑑」に近いけど
    添えられた文章がなんとなく
    キリスト教的価値観に基づいた解説なので
    「教科書」要素もあるのかな。

    文庫サイズのコンパクト版なので
    ちょっと振られた番号がつぶれて
    わかんない箇所があったのが難点ですが
    当時の風俗を知るためにもおもしろいし
    図解だから「これ、そんな名前なの」って
    思うものもあったりして楽しい。
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    投稿日:2023.11.30

  • かとのひも

    かとのひも

    このレビューはネタバレを含みます

    〇基本、見開きで左に絵、右に解説
     17世紀のもので当時の子どもに教えられる「一般」が興味深い
    〇根本的なところで、今にも受け継がれているものがある
    〇戦火で荒廃した世界で生まれた、次世代に希望を託す教科書

    ※「世界ではじめて出版された、子どものための「絵本」「絵入り教科書」17世紀当時の世界観に基づくさまざまな事物を素朴な木版画とやさしい文章でときあかす。教育史・思想史における不朽の古典」

    ◎読者への序言
     無知にとっての薬は学識です。
     人生の塩 SAL
      …Sapere 認識すること
      …Agere   行うこと
      …Iogui   話すこと
    ・世界における主要な事物のすべてと、人生における人間の諸活動を絵で表し、命名する
    ・事物に向けられる注意力をかきたて、それをいっそう鋭くすることに役立てる
    ・子ども達はそれらに誘われ引き寄せられ、世界の主要な事物の知識を遊びたわむれるようなやり方で与えられる
    ・この本は『前庭』および『言語の扉』をいっそう愉快に使用するのに役立つでしょう
    ・容易に読むことを学ぶための工夫がされています
    ・才能の拷問、つまり退屈な綴字法は用いません
    ・それぞれの国で翻訳されるならば、母国語全体を土台から完全に習得できるでしょう
    ・母国語の翻訳がラテン語の学習を素早く愉しいものにするでしょう
    ・生徒の最初の課題はわずかで簡単であるべき
    ・絵を見ることで子ども達は喜びます
     家庭でも親しませることができます
    ・繰り返し学べます
    ・学んだことを身のまわりの実物で示せます
    ・絵を模写し、観察の目、手の器用さを練習します
    ・言葉に事物を提示することの大切さ
    ・理性の学校への序幕

    ※気になった項目
    ・カラスはアーアー鳴きます(Aa)から始まるアルファベット
     ←アルファベット絵本に出来そう
    ・「天空」天は回転しています
     ←コメニウスは天動説?
    ・「空気」地下の風は地震を引き起こし
     ←地震は気象だった?
    ・「家禽」こうもり(翼のあるねずみ)
     ←哺乳類とはみなされていた?
    ・「爬虫類」バシリスクは眼で、さそりは毒のある尾で殺します
     ←バシリスクとさそりを並べている。サソリも爬虫類?
    ・「両棲類」ビーバー、かわうそ、ワニ、カメも両棲類で紹介されている
    ・「川と湖の魚」ザリガニ、ひる
     ←水に住む生きもの?
    ・「人間」アダムとイブ
     ←キリスト圏
    ・「人間の魂」
    ・衣食住の項目は、当時の文化や技術が見れて面白い
    ・「浴場」チェコ、14世紀に牢に閉じこめられたヴァーツラフ王が浴場の湯女によって逃亡を助けられたという故事がある
     ←坂本龍馬ぽい
    ・「理髪店」時おり血管を小刀で切り、血を出します。
     ←理髪師も外科的な治療をしていた
    ・「旅人」街道や一夜を過ごす宿屋でも追いはぎから用心せねばなりません
     ←!!
    ・「本」
    ・「学校」別の生徒はおしゃべりをし、その上ふざけて不真面目です。これらの生徒はむち(棒)や杖で罰せられます。
     ←!!!
    ・「楽器」
    ・「惑星の位置」
    ・「月の状態」
    ・「倫理学」左の広い道は悪徳の道であり、右の狭い道は徳の道です。どんなにとげだらけであっても、右側の道を進みなさい。徳を探しあてられない道はけっしてありません。前進し、最後までやりとげなさい。
    ・「英知」
    ・「勤勉」
    ・「節制」
     …女性…;
    ・「勇気」勇気は逆境の中でライオンのように勇敢で大胆です。
    ・「忍耐」
     ←復讐は美徳ではないようだ
    ・「嫉妬」嫉妬は、他人の不幸を願い、自分をやつれ衰えさせるものです。
    ・「正義」ゆるぎないもの。目隠し、左の耳をふさぐ、右に剣と手綱、功績と報酬を置いた天秤
    ・「寛大」
    ・「結婚」相互の援助と人類の繁殖、男性は富か職業か学問。男性が女性を選ぶ。女性の容姿や持参金でなく、徳性や品位を。
     ←当時のヨーロッパをしのべる
    ・「両親」
    ・「犯罪者の身体刑」魔女(吸血鬼)は火刑場で焼かれます
     ←魔女狩りの時代、コメニウスほどの科学者でも
    ・「商売」定価は無かったみたい
    ・軍事の項目がそれなりにある
    ・「都市包囲」破城木馬、光滑機
     ←調べる
    ・「宗教」四大宗教
     異教、ユダヤ教、キリスト教、マホメット教
    ・結び
     そしてラテン語(ドイツ語)の主要な言葉を学んだのです。
     ←( )の中は、日本だと日本語

    ・コメニウスの生涯
    ・『世界図絵』の意義
     ★子どものための絵本としての評価
     …ゲーテ大絶賛・刊行後100年
      『世界図絵』以外に子どものための本が無かった
     …ヒューリマン
      「コメニウスから現代の絵本まで」『子どもの本の世界』
      絵本の父と讃えている
      この本はどのような精神から生まれたものか?
     ・30年戦争の戦火に荒らされた国々の見捨てられた子どもたち、そして抽象的な学問をぎっしり詰め込まれる上流階級の子どもたち
     …フィーバー
      最初に意図的に作られた子どもの本
     …ベンヤミン
      視覚にうったえる辞典
     …ホグベン 
      「連載漫画からコメニウスまで」『洞窟絵画から連載漫画へ』
      子どもむきの一冊の書物として、当時の一般知識のあらましを、人類の普通の生活や日常の仕事にいきいきと接触させる
      かれは、視覚教育の最初の組織的な計画をたてた人ということからも注目されるべきであろう

     ・日本では1979年に英訳を版が復刻、「世界の絵本館」オズボーン・コレクションの最初の館として収録

    ・多木浩二「書物と読者」『本』
      一般に言われているようにコメニウスの『オルビス・ピクトゥス』から今日の児童書の繁栄にいたる流れがはじまったのてあるが、それは子どもがはじめて『読者』として社会化されたことである。

    ・延藤安弘(建築学者)『こんな家に住みたいナ 絵本にみる住宅と都市』
      実は、コメニウスの『世界図絵』は、絵本一般の起源であるばかりでなく、住宅や町を取り上げた絵本としても最初のものなのです。

    ・教育学以外の分野の人の関心←挿し絵
     アルト:コメニウス研究者
      すなわち、『世界図絵』のさし絵の図柄が中世の書物に見られる同様の題材のものとくらべて、はるかに写実的であり、実際の自然観察に基づいたものである。
      最初の絵入り本ではないとしても、自然と社会の実際現象に忠実なさし絵への転換をはかったと主張

    ・絵本とはなんであろうか
     『世界図絵』はさし絵として絵が添えられており、「絵本」の範疇に含めるか否か 
     絵本の系譜
     「ヨーロッパで発生した、子どものための絵入り本から出発している」松本猛『絵本論』
     コメニウスの制作の意図は?

    ★視覚に訴える教科書
     各国で翻訳され、18世紀には聖書に次ぐベストセラー
     教科書に興味を持つ研究者は必ず触れる
     『教科書』山住正己,岩波書店
     ・視覚表象の教育的意味をあきらかにしたのは十七世紀のコメニウスである。かれが図表や絵をつかって編んだ教科書『世界図絵』は、教科書のありかたをかえるのに成功した。
     ・ヨーロッパでは、このあと二百年ほどのあいだコメニウスの『世界図絵』をこえるほどの教科書があらわれなかったし、日本でもその事情に変わりなかった

     コメニウス教科書三原則
     1:学校を喜びと感じられるようなところにすること
     2:注意を事物にむけさせるのに役立つこと
     3:世界の基本的な知識を喜びをもって吸収できるようにしていくこと

     柴田義松『教科書』有ひ閣
     教科書が教師の仕事を助け、教師の機能を一部代行さえするという彼の考えは、後世にうけつがれ、そのような教科書の教授機能は、その後ますます緻密さを加え、発展してきているといえよう

     杉山明男『どの子ものびる』部落問題研究所
     コメニウスは、子どもたちが概念を形成するのは、コトバからではなく、文字からでもなく、事実から、事実をもとにして、でなくてはならないと考え、このために『絵』を利用したのです。

    ・250種の『世界図絵』の異本版はすべてラテン語との対訳の形で構成されている

    ・『世界図絵』はコメニウスが、ハンガリーのサーロシュ・パタクに招かれ、領主ラコーツィ家こ求めに応じて構想した新しい学校のための著作
     ←これまでの言語教授法を批判、新しい教授法の確立を求めた

     シャラー(コメニウス研究第一人者)
     最初の日本語訳について言及

     1739年に『世界図絵』が知られていた

     1728年薩摩を出帆した速行丸がカムチャッカに漂着、当時11歳のゴンザ(権左)はソーザと共にペテルブルクに連れて行かれる
     ロシア科学アカデミー賞・アジア諸民族研究所でロシア語を学び、日本語を教えた
     アカデミー司書補のアンドレイ・ボグダーノフは『世界図絵』をラテン語からロシア語に翻訳した文を教材として、ゴンザにロシア語を教える。ゴンザは、ロシア語から自分で翻訳した日本語文をもとにして、ボグダーノフおよび二名のロシア少年に日本語を教えた
     ←ただし、薩摩方言による逐語訳に近いもの、ロシア語からの重訳
      ダガ オイヲ スヨ ニ オソエヤロカ
      (誰が 俺を すべてに 教えるだろうか)
     …全訳が出来た1739年にゴンザは22歳で亡くなる
     …村山氏が紹介するまでは、存在も知られなかった 村山七郎「コメニウスの著作の最初の日本語訳」『教育と医学』慶応通信
     …現物はサンクトペテルブルクに保管、一般公開はされていない

    ★バラ十字団の隠喩
     「子ども」の存在と「教育的配慮」
     …112節制の酩酊 好色の箇所
      125犯罪者の身体刑 残酷な刑罰・処刑
      ←コメニウスには教育的配慮が希薄?
      ←36人間の七つの年齢段階
       赤ん坊、少年、若年、青年、壮年、初老、晩年…明確に時期区分している、が、教育的配慮に頓着していない…過渡期の段階

     中世では、七歳くらいになると大人たちと一緒にされ、成人の共同体に入り、仕事や遊戯を共有していた
     …近世初頭に教育的配慮が再び出現した

     コメニウスは『世界図絵』の内容を「子ども」のことだけを念頭において執筆したのか?
     ←読者対象年齢の上限を引きあげるべきという考え
     ←バラ十字団の隠喩があるという憶測
      コメニウスはバラ十字団の主要メンバーだった?
      読者へのあいさつの中のアンドレーエはバラ十字団を組織した中心人物
     ←絵と文字に夜象徴的思考は、カバラ学者や錬金術師たちが真理を託した神秘的な象徴記号の顕在化であり、この学習書はそれの一般への開放であった。秘匿から開示へ。これが薔薇十字の神秘伝達技法の方向であった。荒俣宏・編『世界神秘学事典』平河出版社

     それでも、コメニウス自身が明言している通り越す「子ども」を対象にしたものであろう
     
     今江祥智『子どもと生きる』創元社
     児童文学においてタブー視されていたもの
     …死、老年、貧困、戦争、嫉妬、差別
      ←『世界図絵』にはすべて出ている

    ★汎知学の全体像を示した著作
     自然と人間と神についてのスベテヲ網羅する統一的な知識体系をまとめあげようとする思想
     コメニウス的には
      汎知の計画は、百科事典的断片から統一的知識体系に至る道を提供するもの

    ★『世界図絵』の重要な意義
     コメニウス二大思想である教授学と汎知学の相互透入関係を具体的に表現した著作
     

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    投稿日:2023.02.21

  • アワヒニビブリオバトル

    アワヒニビブリオバトル

    第27回アワヒニビブリオバトル「心に残る絵本」で発表された本です。
    チャンプ本
    2017.07.04

    投稿日:2022.11.03

  • Yu Kino

    Yu Kino

    恥ずかしながらコメニウスのことも知らず、本当にたまたま書棚で目について、タイトルからしていきなりピンときた。即購入。

    コメニウスの汎知学の視点から、世界のあらゆる事象を子供向けの絵本として、教科書として整理した本。しかし、それは350年前の世界への案内役として抜群の役割を果たしてくれる。
    350年前の世界観を想像するにあたって、これほど具体的にしかも絵によっていとも容易く現前させてくれる本が他にあるだろうか。文字だけならスラスラとあっという間に読み終われるが、基本的にはテキストの解説に挿絵があるというよりも、挿絵の解説にテキストがある、と読んだほうがワクワクできる。これだけ細かい註釈の添えられたイメージはなかなかない。アレゴリーを読んでいくように350年の時差を解くのが楽しい。
    そういう意味でも残念なのは、挿絵が文庫本だからなのか質が悪く、十分に解読できないところだ。

    高山宏が解説を書いており、そして、その中でコメニウスにはじまり、18世紀に別の形で現れた「視覚による啓蒙」への注目者、紹介者としてバーバラ・スタフォードの「アートフルサイエンス」を紹介しているところで、自分がピンときたものが既にお見通しのものであったと知って悔しくなる。
    ここ数年をかけて、読みにくさではなかなかのレベルに達している高山宏によるスタフォードの邦訳作品5冊を読んだのだから、このタイトル、この挿絵にピンときたのは、既に仕組まれていた罠だったわけだ。
    しかし、罠にちゃんとはまれることは割と大事だ。
    良い罠だった。
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    投稿日:2018.11.18

  • kivune

    kivune

    なま温かさを感じる。
    世界を文字と絵で説明したいという欲求。
    子供に世界を説明したいという欲求。

    きっと本書の前に類書は少なかったろう。
    ゆえに書の成り立ちに明確な人の意思を感じる。
    人の体温を感じる。続きを読む

    投稿日:2013.08.21

  • bookochimi

    bookochimi

    すべての出来事、世の中のことを こどもにもわかるように。
    という精神からつくられた本。

    大学時代はこの本を教材に社会学を学ぶ機会がありました。

    図鑑とは違って・・・・なんといえばよいのか・・・
    だ、娘達にも見せたい。
    と思える一冊です。

    世界のことはすべて絵で表せる。
    続きを読む

    投稿日:2008.05.15

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