【感想】「自閉的」といわれる子どもたち : その理解と指導の実際

石井葉 / 鈴木出版
(1件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
0
1
0
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • コロスケ

    コロスケ

    良書だと思う。自閉症児のこだわり等を「生まれつきだから治ることはない」「否定せず全面的に受け入れる」と説く書が多い中で、「自閉症児のコミュニケーション能力も彼らなりに成長する」という確信の基に、0歳から発達段階に合わせてその時々にどういった関わりをしていけばいいのか、「コミュニケーション」「運動」「身の回りのこと」について、具体的に示してくれる。
    特に共感・納得した部分を、以下に抜粋する。
    -(自閉症児に)働きかける側の気持ちをきっぱり決めること。「子どもは必ず成長できる」と子どもの可能性を信じて向き合うことです。
    -自閉的で多動な子どもたちのむだな動きをきちんと止めていくこと。「抑えるのはかわいそうかしら」「パニックになるのでやりたいようにさせておこう」などと考えずに、きっぱりした態度で、向き合って、やるべきことをしていくこと。
    -子どもたちは、働きかける側が毅然として向き合っていくと、かならずわかっていくのです。子どもの今も将来も大切に思う気持ちと、根気のよい働きかけで、さまざまな困難を抱えた子どもたちは、脱皮し、育っていきます。自閉症児は人嫌いでもなく、人を拒否しているわけでもなく、人から学び、育っていける子です。
    -クラスの担任だけが関わるのではなく、全職員が同じ認識をもって対応すること。-中略-どの職員も同じ態度で臨まないと、きまりやこだわりがつきやすい自閉症児は、人によってやったりやらなかったりします。子どもたちが混乱しないように、家庭でも園でもどの人も「いけない行動」にはきっぱりと対応し、よい行動は認めてあげると、少しずつ学んでいきます。
    -ハンディのある子に大切なことは、他の子どもたちにも大切です。どの子も手塩にかけた接し方をして、子ども集団全体を安定したものにしていくと、子どもたちはさまざまな力を出して、ハンディのある子を仲間として受け入れていきます。
    -いつも大人がそばについて、声をかけ手を貸してやるよりも、少し離れたところから見守ったほうが、本人がやる気を起こすこともあります。また、そばについているときにも、指示を出すからわかっていくというやり方ではなく、黙って手を取って具体的に教えてあげたほうが伝わることが案外に多いものです。子どもが援助を必要としているのか、自分で切り抜けていけそうか、見極めながら接し方を工夫してください。
    -また、泣いたり、騒いだりすることに対しても、根気よく話をしてあげたり、いろいろな経験を繰り返すなかで、かならずわかっていきます。また、そういう場面で、その子への接し方やことばかけを、まわりの子どもたちも見ていますし、聞いています。「わからない子なんだから、泣かせてはかわいそう、泣いてうるさいけれど、みんなもがまんしてね」というような対応をしていると、まわりの子どもたちもそういうものだと思い、障害を持つ子どもを特別な存在だと学ぶことになってしまいます。-中略-ほかの子どもたちに「いけない」とか「おかしいよ」と言っていることを、この子達にも言ってあげることが、「ぼくだけが特別ではない」「仲間の一員である」という気持ちを、どの子にも育てることになります。
    -担任が、新任の先生だったりすると、先生の指導力を心配される人が多いと思います。しかし、新人の先生はどうしたらよいのかわからないので、保護者から話を聞こうとすることが多いと思います。むしろベテランの先生は、自分のやり方に自信があり、保護者の話をよく聞かず、自分のやり方を押しつけてくることがあります。こんな先生と決めつけず、話せるところから話していくようにしましょう。また話すだけよりも、子どもを実際に動かして見せることも理解してもらうには効果的です。
    -自傷の理由や原因はさまざまです。①かんしゃくを起こすような「いやな感覚」を自傷によって弱めようとしている②注意を引くため③痛みによって出される脳内の化学物質が快感をもたらす④自傷による脳の中のスイッチが切り替わりで、意識レベルを調節するため等①の場合は、いやなことの適切な避け方を教えたり、少しずつ慣らしていく、見通しを伝えるなどの対応が求められます。②の場合は、その子のことをきちんと見ているよということを伝えるような働きかけを配慮する必要があるでしょう。③の場合は、今の発達に見合った刺激が足りないと言えるので、発達に合った課題や刺激を工夫します。④の場合は、あまり長く続かないことが多いようですが、他人から驚かれないような、あまり目立たないものに替えていくことを、本人と話し合ったりしながら見つけていくとよいでしょう。
    -自閉症の人の場合の社会参加できるための要件としては、「感情の安定」が第一に重要のように思います。知的障害が重い人も、アスペルガー症候群のように知的障害がないとされる人も、このことは同じです。仕事をしながら、怒ったり泣いたり騒いだりするのは、まわりの人たちを不安定にして、問題になります。こういうことがなければ、理解力が不十分でも、記憶できたり、身体機能にはあまり問題のない自閉的な人たちは、社会の中で充分に役立つことができます。この感情の安定ですが、いろいろなタイプがあり、またそれに合わせた対応があろうかと思います。なかでも生活リズムの安定が、感情の安定に大きく影響することは確かです。-中略-また、家のなかでやるべき役割があるのも、気持ちの安定をうながします。お手伝いなど自分でできること、やるべきことがないと、問題行動を起こしたりします。-略-周りからの評価を気にする子もいます。こういう子の姿を見ると、感じ方などは一般的な発達と同じだと感じます。とくに、自分が役立っているという意識が、人格の形成や感情の安定に役立つことは確かだと思います。
    続きを読む

    投稿日:2012.09.25

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。