【感想】荒天の武学

内田樹, 光岡英稔 / 集英社新書
(27件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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ブクログレビュー

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  • やまたく

    やまたく

    武道的な力とは、端的に言えば、一個の生き物としてあらゆる状況を生き延びることができる能力。自分自身が愉快に、気分良く生き続けられるために心身の能力を向上させること。
    ただ、自分ひとり愉快であればよいというものではなく、社会格差のせいで苦しんでいる人がいれば、自分も楽しくなくなる。だからこそ、武道家としての自分であれば、そういう問題も何とか解決するように努力する。自分自身の心身の能力の開発を阻害するすべてのファクターを「敵」だと考えて、どうやってその敵を無力化していくのか、それを工夫する。
    内田老師はそう述べた上で、現在の武道がある種無菌状態の中で競技化されているものは、晴れた日の武道=晴天型の武道であり、本質的に重要であるのは、あらゆる足場も崩れた上で、荒れ狂う初期条件の中でいかにふるまうかという荒天の武道であるとする。
    荒天型の武道家は、まず自分が置かれている状況を大づかみな歴史的な文脈でとらえるところから始まる。政治も経済も社会問題も宗教も学術も、自分が投じられている状況の変化に関するさまざまな因子については、できる限り情報を集め、それぞれの知見を深める。

    主体的に受け身を取る。武道では、常いかなる状況でも「場を主宰する」人間であらねばならない。それはつまり、先手を取るということである。攻撃されたではなく、攻撃させたという地点から物事を考える。武道では後手に回ったと思った瞬間に、人間は絶対的に遅れてしまう。相手が提示した状況に応じるための最適行動を直ちに選らばなければならないという形になる。相手に出された問題に正解を迫られるという状況は全く武道的ではない。そう考えると、受け身という受動的な行動に見えるものすらも、主体的に実施している状態としなければならない。これは、自分自身仕事をしているときも感じる。状況に先手を取られている時にパフォーマンスは低い。常に、状況よりも先手を取り、場を主宰する。現代的に言えば自分のペースで仕事をできるように、努力する、準備する、行動するということが重要である。

    武道のみならず、仏語でも「随処に主となれば、立処皆真なり」という言葉もある。常に、場の主人公であれ、そうすれば、そこが正しい立ち位置となる。仕事では、多くのMTGやPJTが進行する中で、状況に先手を取られ、MTGも無目的になんの発言もせずに終わってしまうことも最悪のケースとしてある。もちろん、船頭多くして船山に上るではあるが、常に自分自身がその場の主人公であるという自覚をもって主体的に立ち向かうことが重要である。
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    投稿日:2023.11.26

  • nksntks0922

    nksntks0922

    「荒天の武学 内田樹 光岡英稔著」読了。理解できない内容でなかった。自分の住んでる世界とあまりにも違うので、理解でなく誤解しているのかもしれない。首狩族の話も出てくるが、単なる野蛮人でなく、その人達のそれなりの倫理感で生きていると知った。男の荒々しい世界に見えてワクワクするが、女の人はどのように見るのかと思った。続きを読む

    投稿日:2022.01.12

  • ありえへん

    ありえへん

    武道家が少なくなっている。武道家以外には無関係なことに思えるが、間違いないなく世の中に影響はある。そのことをもっと考えるべきだと思う。

    投稿日:2015.12.15

  • bax

    bax

    [ 内容 ]
    現代思想家・内田樹は合気道七段の武道家でもある。
    その内田が注目するのが中国武術韓氏意拳の光岡英稔。
    光岡は十一年にわたるハワイでの武術指導歴を持ち、きれい事ではない争闘の世界を歩いてきた。
    本書はふたりの対話を通じ、護身、闘争という狭い枠にとどまらない、武術に秘められた荒天の時代を生きぬくための知恵を提示する。

    [ 目次 ]
    序章 武運ということ(出会いの話;ハワイの道場ではいきなり金的を蹴ってくる ほか)
    第1章 荒天を生きるための武術(非日常を経験する文化;他者、道具と感応する古の武術 ほか)
    第2章 荒天型武術の学び方(生きている力が萎えるようなものから遠ざかりたい;脳が影響している身体が鈍感 ほか)
    第3章 達人はフレームワークを信じない(武術は想定内のフレームをつくると後れをとる;自分のわがままの通用しない状況がスタート ほか)
    第4章 荒天を進む覚悟(争いを調停する島の文化;自分がいちばん嫌いなヤツと仲良くなること ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]
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    投稿日:2014.10.26

  • harinezuminami

    harinezuminami

    5/10うてなの先生が貸してくださった。

    内田せんせいが光岡先生の話を聞いて「分かりません」と言うところが2カ所くらいある。
    分かりませんと言えるせんせいを見習いたい。

    さて、前半はあまり印象に残らなかったのだが、後半、引き込まれる。
    日本は「知識基盤社会」を提唱しているが、数値化されパッケージされた知識や情報を社会活動のベースにするのは危険だと。知識や情報が重んじられ過ぎると、潜在的な感覚で「これはまずい」と感じたことがだんだんぼやかされてしまう。と内田せんせい。

    この流れで、光岡先生が知識や情報は過去知だから、未来の確定にはつながらない、感覚のみが一寸先を読むものだ、という話をされる。おっしゃりたいことは分かるが、この意見にはちょっと同意できない。
    これはまずいんじゃない、と感じたときに、過去知をどう使うか、だと思うのだ。

    まあ、この対談の主眼ではない部分。
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    投稿日:2014.05.10

  • Yoshiki

    Yoshiki

    内田先生のお話は、基本的にいつもといっしょです。
    そして話の相手によって切り口が変わるので、それが面白くて読んでるわけです。

    今回の相手はは、甲野先生をして
    「相撲のルールで白鵬が勝てるかどうか―」と言わしめた光岡先生。
    あまり詳しく韓氏意拳について知らなかったので、とても面白く読めました。

    真理を追究する道は数々あれど、身体的なものを置き去りにして、
    脳の新皮質ばかりで考えてると結局遠周りなんだな、と。
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    投稿日:2013.11.02

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