【感想】アメリカのデモクラシー 第二巻(下)

トクヴィル, 松本礼二 / 岩波文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 勤労読書人

    勤労読書人

    全4巻の最終巻である本巻では、自由と平等についてのトクヴィルの省察が理論的に深められるが、その核心的なエッセンスを列挙すれば以下の如くである。

    ★平等な社会は人々の境遇を不安定にし、虚栄心を蔓延させる。
    「デモクラシーにおいては、境遇の変化が大きいので、人々の特典はほとんど常に獲得して間もないものである。・・・そのような特典はいつ何時失われるかも知れないので、彼らは警戒を怠らず、特典をまだ有していることを見せびらかそうとする。・・・民主的国民の執拗であくなき虚栄心はこのように境遇が平等で壊れやすいことに由来する」(p114)

    ★平等が進展すればするほど、些細な不平等に人は敏感になる。
    「人々が特権に向ける憎悪の念は特権が稀になり、小さくなればなるほど増大する・・・境遇がすべて不平等である時には、どんなに大きな不平等も目障りではないが、すべてが斉一な中では最小の差異も衝撃的に見える。・・・平等への愛は、これが満たされるにつれてまた大きくなる。」(p222)

    ★自由は平等の確立を援けるが、平等の確立は自由の存続を危うくする。
    「市民は刻々行政の統制の手に落ち・・・新たに得た個人の独立のなにがしかを毎日行政に差し出すに至っている。」(p250)
    「平等の勝利が確実になるにつれて彼らは最初こそ平等になれるように自由であらんと欲したが、自由の援けを得て平等が確立するにつれて、平等は彼らが自由を保持することを一層困難にした。」(p251)

    最初の二つは物事の両面であり、平等意識と格差意識の淫靡な共犯関係を語り尽くして余すところがないが、最後に示されたように、それが結果的に平等の護持者としての国家権力の肥大化を招き、ひいては個人の自由を侵食するというのがトクヴィルの最終的なメッセージと言えるだろう。
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    投稿日:2023.12.29

  • pedarun

    pedarun

    このレビューはネタバレを含みます

    平等化・脱階級化のもたらす、家庭・個人レベルでの変化、軍隊の傾向、革命と平等化の関係性…と総まとめ。
    平等の思想が広がり実現化していく社会が生む弊害や課題について考察しており、民主主義社会の求めるもの、自由、そして国家の在り方とはどうあるべきなのか、という今日にも通づる重要な問いについて考える機会になる。

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    投稿日:2019.12.31

  • nt

    nt

    第1巻を刊行した1835年の5年後に、トクヴィルはこの第2巻を出した。
    アメリカ合衆国のイメージは彼の中で煮詰まり、この巻では「自由」「平等」などの概念をめぐって延々と思索が続く。
    特に「平等」概念を、ヨーロッパ文化にとっても重大な歴史的転回点としてとらえており、単に賞賛するのではなく、その危険性をも含めて考えを深めている。
    19世紀前半のトクヴィルの思考は、ただちに現在の「民主社会」に適用できるわけでもなく、彼の予測は外れている面もある。それでも、「民主主義とは何か」を考える上で、本書は多くの示唆を含んでいる。
    しかしこの本の要点を抜き出し、その思想の骨格を明確にする作業は、一読しただけではなかなか難しいだろう。
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    投稿日:2013.03.23

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