【感想】川の名前

川端裕人 / 早川書房
(22件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
4
10
6
1
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • kovalsky

    kovalsky

    このレビューはネタバレを含みます

    とんでもないことをしでかす小学5年生がいたもんだ。
    あまりに危険で、あまりに常識はずれだが、羨ましさを感じるところもある。一つの川の近くに暮らす人々、それを取り巻く人々。あるものは、ペンギンを保護しようとする。あるものは、ペンギンをお茶の間の話題のタネにショービジネスのネタにする。また、あるものは保護するでもネタにするでもなく、真剣に向き合い、自分の生まれや未来について、世界について思いを馳せる。
    川は同じなようで刻一刻と変わり続けている。そして、自然の中に生きる人間もそうである。ペンギンという小さな存在が、人生を大きく変えていく。
    世界に出ようとするということは、自分の足元を固めることでもある。この本に出会えて、自分の足元をしっかりと見つめることの、大切さを知った。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.10.15

  • わた

    わた

    このレビューはネタバレを含みます

    【動機】
    川端裕人さんにて未読だったため

    【内容】
    小学五年生の少年たちの川をめぐる一夏の冒険。
    鳳凰池にやってきたペンギンの家族たちを中心に巻き起こる様々なできごとと、少年たちのアイデンティティの話。

    【所見・まとめ】
    この作者の小説が大好きで、当時大学の学部を決めたのも『リスクテイカー』という小説を読んだことがきっかけ。
    本小説もとても面白かった。

    ドキッとしたのはタイトルにもなっている「川の名前」の概念。
    自分がどこに立っているのか、どこから来てどこへ行くのか、そしてどこに帰るのか、そんなことを考えたことは一度もなかった。
    普段使用している住所が人間が作ったもので、街とか番地でしか自分の居場所を表現できないとか、気にしたこともなかった。いわんや、自分がどの川の流域にいるなんて、をや。
    自分がいかに好奇心が欠如しているかわかる。考えているつもりでも、欠けている。自分のことについても、周りの環境についても。

    川は海となり、世界へつながる。
    自分がどこのカワガキなのか、わからない。わからないまま旅をしているのかもしれない。
    これまで獲得したと思っていたアイデンティティと居場所は本物か?自然か?そんなことを考えてしまう小説だった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2020.02.24

  • 大吉堂

    大吉堂

    夏休みの自由研究に野生のペンギンの観察をする。それだけ聞くと荒唐無稽ですが、そこにリアリティという説得力を持って来るのがこの作者のすごいところでしょうか。
    夏と少年の物語。少年たちはそれぞれ家庭の事情があり、越えるべきものを抱えている。重苦しくなく軽やかに、それぞれの挫折と成長が書かれています。子どもだからできないこと、子どもだからこそできること。大人の関わりは干渉となり手助けとなり。はじめ小学5年生という設定はこの物語のテーマに対して幼いのではないかと思いましたが、その幼さがもつ無茶が起爆剤として素敵に作用していました。
    物語の内容についてはここでは書きません。何故なら読んで欲しいから。作品のタイトル『川の名前』は実にこの物語を表わす言葉なのですが、なかなか手に取ってもらいにくいだろうなとも思います。少年たちの煌めきに共鳴できる、そんな作品だから大人にも子どもたちにも読んで欲しい一冊です。
    続きを読む

    投稿日:2017.09.19

  • hs19501112

    hs19501112

    川端裕人の初読み。
    児童文学かと思いながら手にとってみた一冊。

    冒頭。
    恐竜を発見?うん、やはり、ファンタジーだね・・・と思いきや、読み進めるとすぐに、そうではないと分かる。

    青春モノ・・・と呼ぶには登場人物たちは幼いし、少年達の冒険譚と言い切るには、リアリティもあるしテーマ性も深く感じる。
    ・・・と言いつつも、この物語を一言で表すならやっぱり、「少年達のあるひと夏の冒険」ということになるのだけれど(笑)。

    子を持つ親としてはありえない冒険だけれど・・・・最後の大冒険はやっぱり「トンデモ」に違いは無いけれど、そのバックボーンとなる事前設定は示されているので、そんな「トンデモ」な展開にもそうそう大きな違和感はなく物語に没頭できる。少年期特有の悩みと、友情、苦悩からの脱皮など、忘れかけていたような懐かしい気持ちをたくさん蘇らせてくれるこの本を、声を大にして「名作だ」と呼びたい。

    大人にも子どもにも読んでほしいと思える一冊。
    活字の苦手な子どもでも楽しめるように、映画かアニメかになって、より多くの人の目に触れてほしいと思った作品。

    ★4つ、9ポイント。
    2016.11.07.図。

    ※夏休み終盤の風物詩となっている(?)皆が紫のTシャツを着込んで24時間生中継する番組って・・・(笑)。

    ※カルガモ親子の行進、矢ガモ、玉川のアザラシ・・・現実世界でも似たような騒動は何度か目にしてきたが、その裏でも実は、本作で描かれたような報道モラルを問われかねない問題が勃発していたのかもしれない、と思ってみた。


    ※自分の「川の名前」は、何だろう?
    「寝子屋川」かな、「荒川」かな。
    続きを読む

    投稿日:2016.11.07

  • O-bake

    O-bake

    小学5年の夏休み。たぶん子ども時代の最高峰。
    この黄金の時間を、川を切り口にしつつ、個性的な男子3人組+優等生+奇妙な爺さんを軸にして、オカルトもファンタジーも一切ぬきで奇跡的な物語に仕立て上げた作者すばらしい。
    自然の描写、川というものに関する深い考察、カヤック競争の様子、美味しいネタをハゲタカのように漁るマスコミ陣のありさま、いずれも膨大な資料や知識を元にしていると思われ、たいへん好感が持てた。
    子どもたちの内面も丁寧に描かれていて、やはり良い感じ。5年生といえば、ちょうど自我が主張を始める頃で、自分の「こうありたい」気持ちと周囲からの視線との齟齬に気づき、いろいろ悩むものなのだ。
    面白くて魅力的な男子がそろっているが、なかでも鳳凰池の主っぽい風格を持つ「河童」くん、最高。
    続きを読む

    投稿日:2016.09.28

  • ありんこゆういち

    ありんこゆういち

    多摩川の支流の支流の小さな保護池でひっそりと暮らすペンギンの夫婦を発見した少年達が、夏休みの自由研究で彼らの観察をする事を思いつく。平和に思われた日々もある時にエサを探して狩りに出た雄ペンギンを見た人からマスコミに漏れ、一大騒動に発展するのだった。

    少年たちが輝いてい過ぎて、自分の青春とはかけ離れていますがそれでも川に惹かれて、自分たちの居場所と自然をリンクさせて飛び込むあたりは自分の中にもあるものだったので共感しました。野田知佑氏の提唱するカワガキを増やす運動にまさに通じる所があり、自然の未来を明るくするためには、自然を好きな大人を養成していくしか方法は無いんだと思います。

    この本はある意味物語性よりもその辺りの啓蒙要素が多い気がします。僕は好きですが人によっては説教臭く感じるかなあ。
    続きを読む

    投稿日:2016.06.29

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。