【感想】キノコの教え

小川眞 / 岩波新書
(11件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • kiwi

    kiwi

    第X次キノコブーム中。キノコ図鑑を図書館で借りるついでに、隣にあったキノコタイトルの本を適当に借りてきた。新書だし、特に期待していなかったのだが、これが大当たり。一読後、購入して手元に置いておくことにした。

    以前から「菌根」というものに興味を持っていた。キノコ本を読んでいると時々出てくる言葉で、「植物の根にキノコがついて共生しているもの、または状態をいう」そうだ。キノコの中には「菌根菌」と呼ばれるタイプのものがいて、彼らは植物と共生しているらしい。え、それってどういうこと? キノコ何してんの? と思うのだが、キノコの説明文中に「菌根を作る」としれっと書いてあるか、せいぜい数行の補足説明があるだけで、素人のこっちはなんのことやらわからないのだ。なんかすごく大事なことのように思えるので、「菌根」で参考になりそうな本を検索までしたが見つからない。それが思いがけず本書に詳しい説明があったのだ。

    本書はキノコの進化やら、生態やら、キノコ研究の歴史やら、新書によくあるよもやま話のように見えるし、最初はそのつもりで読んでいたのだが、実はキノコを含む菌類と森の共生がメインテーマだ。その重要な要素として菌根が登場する。正直びっくり。森がこんな精妙なしくみになっているとは初めて知った。これは人間が生半可な知識で介入してもうまくはいかないだろう。マツタケの人工栽培が未だに成功しないのも無理はない。植物学者、菌類学者によっては常識なのかもしれないけれど、もっと早く教えてよもー、という気分になった。

    著者も言うように、菌類と木々の関係に見られるような絶妙なバランス(それは共生に限らない)は、海で、陸地で、菌類と植物だけでなく、昆虫や細菌や動物といったすべての生き物の間で成り立っているのだろう。ぼくらはまだその一端しか知らないのだ。

    本書ではさらっと書いているけれど、著者は世界中を飛び回って森の再生に尽力している人らしい。どんな人なんだろうといろいろ検索していたら、つい最近亡くなったことを知った。ショックだが、遺志を継ぐ人たちはいるようだし、書いた本も残っている。他の本も読んでみようと思う。
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    投稿日:2021.10.10

  • 信州大学農学部図書館

    信州大学農学部図書館

    農学部図書館の学生アルバイトの方に、おススメの電子ブックを推薦いただきました。

    ☆推薦コメント☆
    本書は森林総合研究所土壌微生物研究室長、同きのこ科長を務められた小川眞先生によって2012年に書かれたものです。本書ではキノコとは何者なのか、キノコは私たちの生活とどのようなかかわりがあるのか、キノコは環境に対してどのような役割を果たしているのか、キノコを取り巻く環境は今どうなっているのか、キノコから私たちが学べることは何か、というようにキノコの話題を中心として、それを取り巻く環境や我々の生活についても考えています。

    キノコについてとてもわかりやすく、そして詳しく書いてあるため、キノコにあまり馴染みのない方でも読みやすい本となっており、キノコについての雑学的な部分にも多く触れているので、親しみやすいと思います。

    ところで、日頃我々の食卓によく上がる割にはキノコについてあまりご存じない方が多いのではないかと思います。じつは、学術的にも近年までキノコはあまり相手にされていなかったことにも本書は触れています。ついつい見過ごされがちなキノコの強かな生態を、この機会に覗いてみてはいかがでしょうか。

    ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです(電子ブックで利用できます)☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/NB00164803

    ※学外から利用する際は、こちら↓のリモートアクセスをご利用ください
    https://www.shinshu-u.ac.jp/institution/library/find/r-access.html
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    投稿日:2020.12.08

  • ちょこ兵士

    ちょこ兵士

    文系素人には少々専門的過ぎました。植物学や生物学の基礎的な理解があればもっと楽しめたんだろうと思います。それくらいのレベルの本。

    投稿日:2016.02.04

  • nekohoumu

    nekohoumu

    きのこにまつわるトピックを総花的に取り上げて解説した本。随所にきのこを擬人化する表現が用いられて、著者のきのこへの愛情が感じられるとともに、わかりやすい解説となっていると思われた。
    なんだか不思議な生き物なんだなあというのが読了後の第一印象。これまであまりきのこが好きでなかったものだから、、、食べてみたいような気持ちも湧きつつといった印象。続きを読む

    投稿日:2015.05.02

  • kohamatk

    kohamatk

    菌糸の細胞膜はキチンが主成分。卵菌類やツボカビ類は水の中で藻類や原生動物に寄生していた。生物が陸上に上がると、接合菌が現れた。子嚢菌の祖先がシアノバクテリアを取り込んで共生し、地衣類を形成した。担子菌が増え始めたのは、針葉樹が現れるジュラ紀の頃と思われるが、キノコの化石が出てくるのは白亜紀以降。子嚢菌は腐りやすいものにつくものが多く、動物の寄生菌も多い。担子菌のほとんどは腐生菌と共生菌。

    葉の表面が白くなるのは、細菌や酵母、カビの軟腐によるもの。リグニンまで完全に分解できるのは、担子菌のハラタケ目や腹菌類のみ。針葉樹材はセルロースだけを分解する褐色腐朽になりやすく、広葉樹材はリグニンも分解する白色腐朽しやすい。倒木が褐色腐朽した場所は他の微生物が暮らせず種子が育ちやすいため、倒木更新しやすい。白色腐朽する広葉樹は倒木更新できない。

    マツ類が先駆植物として、乾燥した養分の少ない土地でも育つことができるのは、菌根菌の菌糸が広がって水やミネラルを植物に送るため。スギ、ヒノキ、サクラ、カエデ、タケなどは、グロムス門のカビとアーバスキュラー菌根をつくって共生している。樹木の中で外生菌根をつくるのは風媒花に限られ、虫媒花の植物にはない。ランやツツジなどの第三紀以降に現れた植物は、カビやキノコの菌糸を根の細胞に取り込んで内生菌根をつくっている。

    大気汚染によって枯れたマツ科やブナ科の樹木は、キノコと菌根をつくるものばかりで、菌根菌の種類や量は減っている。雪の多い地域で枯れだしたのは、汚染物質を含んだ大気が雪になって降り積もり、春になって融けると、pHは4以下まで下がって根などに傷害を与えるため。

    菌根菌が大気汚染による樹木の枯れと関わっているとは、目から鱗の思いだった。菌類の世界は複雑でわからないことが多いと感じた。最終章で、生物は寄生から腐生、共生へと向かうという著者の自然観を提示しているが、植物のように自ら栄養をつくることができない従属栄養生物にとっては宿命かもしれない。環境の持続可能性の概念とも似ていて、興味深い。
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    投稿日:2014.04.05

  • ftsumori

    ftsumori

    キノコが木や森にとってどのような役割を持っているか,あまり知られていないのではないだろうか.菌根菌と樹木との共生関係等,興味深く読むことができた.

    投稿日:2014.01.13

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