【感想】石橋湛山 リベラリストの真髄

増田弘 / 中公新書
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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ブクログレビュー

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  • オカフクロウモドキ

    オカフクロウモドキ

    このレビューはネタバレを含みます

    ※ここでは本書の根幹ではあるが石橋本人の思想自体は論評しない。
    石橋湛山の生涯を包括的に取り扱った新書。石橋の主張の源泉とその遍歴が世界史的な事件に対応して時系列に沿って記述されている。概して事件に対して石橋が取った行動とその裏付けが石橋自身が記した記事を元に取られており、自由主義者としての彼の生涯が俯瞰できるようになっている。評価をやや低く設定したのは内容が度々中立性に欠けたものとなっており、とりわけ戦前の情勢を遺却し戦後の視点、世界システムから石橋の擁護を図っている点がやや目立っていたためである。そういった意味では後書きにあるように著者自身の思想の追認に使われたとも言いうるかもしれない。(最も不遇の人物に対する評伝とはしばしばそういった色彩が現れるもので著者のみがとりわけ恣意的な記述をしているわけではない。)

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    投稿日:2021.07.19

  • yoshidamasakazu

    yoshidamasakazu

    昭和31年 内閣総理大臣になった 政治家 石橋湛山 のリベラルな政治思想をまとめた本。

    敗戦直後に「更生日本の門出。前途は実に洋々たり」として 日本再建案を発表。「今後の日本は 世界平和の戦士として 全力を尽くすことに 更生日本の使命がある」とした

    石橋湛山の政治思想
    *自由主義〜既存の社会制度、伝統的価値から自由
    *個人主義〜自由を求めることは 個人が権利、責任、義務を持つ
    *合理主義〜列強による植民地支配、大東亜共栄圏、日中戦争、戦後の東西冷戦 は非合理的
    *戦争は禺にして無益とする戦争観

    「問題の根本的解決策は 相互の理解しかなく〜彼等に罪があるなら〜我れは 飽くまで正しき道理の上に行動してこそ 日本たる立場あり」
    *排日問題は人種の相違による感情問題である
    *解決策は 相互理解しかなく、戦争に訴えるのは無益

    小日本主義→大アジア主義への批判
    *領土拡張、保護政策に反対
    *内治改善、個人の自由により国民福祉を増進させる主義
    *軍国主義、全体主義、統制主義から 民主主義、自由主義、平和主義へ
    *日本の安全と発展のために 日中米ソの多角的安定が必要

    「人間の無限の欲望は 社会の進歩と発展の原動力である」
    *政治、経済、法制、国家は 人間社会に奉仕すべき存在

    「人間の幸福が最後の目的である点では 資本主義も共産主義も同様である」

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    投稿日:2019.12.04

  • キじばと。。

    キじばと。。

    石橋湛山の生涯と思想を解説しているコンパクトな評伝です。

    著者は「はじめに」で、本書の目的を二つ掲げています。一つめの目的は、言論人としての湛山の思想にせまること、二つめの目的は、政治家としての湛山の全体像をえがき出すことです。本書の前半では、湛山の言論活動に注目し、日本近代史のあゆみのなかで彼の思想がどのようなしかたで表明されていたのかを明らかにし、後半では政治家に転身した湛山の、主として対外政策および外交活動に焦点をあてて解説がなされています。第一の目的にそった先行研究には姜克實の著作が、第二の目的にそった先行研究には筒井清忠や石田博英らの著作があげられていますが、本書ではこの二つの湛山研究の視点をあわせて湛山の全体像をえがき出そうとしています。

    そうした意味では、湛山の前半生と後半をえがく著者の視点が異なっているのですが、言論活動と政治的実践を舞台とした湛山の思想の全体像を知るためには、適切な方法なのではないかと考えます。
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    投稿日:2019.11.09

  • sasha89

    sasha89

    大日本帝国憲法下では普通選挙権の必要性を説き、軍備拡大に
    向かう大正末期からは一貫してその危険性を指摘する。

    湛山の筆は日本国内の政治動向だけではなく、欧米列強の動き
    にも鋭く反応する。

    第二次世界大戦敗戦後、GHQはエコノミストとしての湛山の先見性を
    見込んで日本の経済復興顧問とする。そして、第1次吉田内閣に蔵相
    として入閣する。

    崩壊した日本の経済を立て直すにはどうすべきなのか。交通機関の
    燃料となる石炭増産を筆頭に、湛山はいくつかの経済対策を打ち出す。

    その中に盛り込まれたGHQに掛る費用の削減が占領軍の怒りを買い、
    まったく根拠もなく公職追放の憂き目に遭う。

    それでも湛山は自分の主張を変えることはない。岸内閣が日米安全
    保障条約の締結を準備すれば、アメリカ1国だけと条約を結べば中国・
    ソ連との関係回復は望めないと批判。「日中米ソ四国平和条約」構想を
    打ち出す。

    歴史に「もし…」は禁物ではあるが、湛山が病に倒れわずか2ヶ月で
    首相退陣を余儀なくされなかったならば、現在のアメリカ寄りの日本の
    政策はなかったのかも知れぬ。

    近年、乱発されている行間スカスカ・内容薄っぺらの新書とは違い、
    内容ぎっしり。湛山の論評の引用多数。また、首相退陣後の湛山の
    動向までを追った良書である。

    こんな良書が古本屋で50円で買えるのも嬉しい。

    「自分の信ずるところに従って行動するというだいじな点を忘れ、
    まるで他人の道具になりさがってしまっている人が多い。政治の
    堕落といわれるものの大部分は、これに起因する」

    「政治家にだいじなことは、まず自分に忠実であること、自分を
    いつわらないことである。……政治家になったからには、自分の
    利益とか、選挙区の世話よりも、まず、国家・国民の利益を念頭に
    おいて考え、行動してほしい。国民も、言論機関も、このような
    政治家を育て上げることに、もっと強い関心をよせてほしい」

    湛山晩年に記した「政治家にのぞむ」の一文である。国会議員を
    はじめとした、政治家センセイたちには、是非とも湛山の論評集を
    必読の書にしてもらいたい。
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    投稿日:2017.08.16

  • rafmon

    rafmon

    リベラリスト。どういう事か。戦前の軍部独走、対英米気運、満州権益保護といった日本において、小日本主義を提唱し、領土を手離す事を論壇から訴えた。徹底的な平和主義者であり、筋の通った批評家。のみならず、結果論だが、戦後の国の動きを透徹した視点で正確に見抜いている。国の感情を捉え、行動が何を引き起こすかを予測し、その発言に濁りが無い。中々真似できない代物である。

    さて。その時代において、正しい事を言っていたか否かは、その後の歴史が判断材料となる。仮に正しい風の事であっても、実践が伴わなければ、実存としての意義を持たない。つまり、批評が素晴らしいなんていう褒め言葉は意味を為さないのである。批評や言葉が意味を持つのは、行動を伴う場合か、あるいは、影響を与え、行動を伴わせた場合だ。では、石橋湛山はいずれだろうか。少なくとも、戦前においては、「新報」により、影響を行使した。しかし、一番重要なポリシーにおいて、事象を変えられぬのであれば、やはりただの思想家である。

    戦後の首相就任期においても、結局は健康を理由に志半ばでリタイヤ。まるで鳩山由紀夫のように、その後、中国への訪問を繰り返し、日中米ソ平和同盟を迫るのである。リベラリストというのは、左でも右でもない。つまり、「正しい発言」をし易いポジションなのだが、関係や立場に飲まれていない代わりに、政治的力学を行使するには、脆弱である。これらを考慮し、石橋湛山をどう評価するか、ここから何を学ぶかという結論を導くのはこの本一冊では、難しい。
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    投稿日:2014.05.24

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