【感想】阿片の中国史

タン・ロミ / 新潮新書
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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ブクログレビュー

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  • riodejaneiro

    riodejaneiro

    このレビューはネタバレを含みます

    香港本から派生していつの間にか連続的に阿片の本を読み漁る今日この頃。
    先に読破した陳舜臣氏の実録アヘン戦争と同時期についての歴史解釈、というより書き口が違うためにだいぶ違う印象を受けるのが興味深い。またアヘン戦争のみならず、その後の革命家の資金源として党に関係なく、ある種の通貨として存在し続けたこと、日本も大陸侵攻のときは阿片を売って大儲けしたなど知らなかったことが多い。西側への憎悪も加わって共産党政権になってから一気に禁止令を出し、禁止できたとといのも興味深い。

    日本に阿片が流行らなかった理由を陳舜臣氏は、厭世の清朝末期にダウナー系ドラッグがよくハマったが、日本は明治維新に向けて希望に溢れていたのでハマる人が少なかったと分析していたが、アメリカが日米修好通商条約を結んだ際に、阿片禁止が盛り込まれており、イギリスはそれを雛形として日英修好通商条約を結んだとのこと。陳舜臣氏がこういった事実を知らなかったとは思えないが、それについて触れていなかった事が少し気になる。まあ禁止の有無にかかわらず、ハマる時はハマってしまうのでそれほど意味があったとは思っていなかったということなのだろうか。

    P.62
    イギリスがやったのは、単なる阿片の輸出などではなかった。イギリスは産業革命以後の技術開発力を結集し、総力をあげて「新商品」を生み出したのである。

    P.90
    「妖花」ーー妖鬼の花。
    ケシの花を、中国の人々はそう呼んだ。人間に食らいついて肉体を蝕み、精神を狂わせ、死ぬまでいたぶりつづける邪悪で淫靡な花だ。

    P.106(林則徐が阿片を押収し、処分した件について)
    一九四九年に中華人民共和国が誕生すると、虎門の阿片処分の勇姿は「歴史的偉業」として高く評価された。北京の天安門広場にある人民英雄記念碑には、「虎門の銷烟」のモチーフが刻まれている。

    P.171
    禁令とは、すなわち商売繁盛だ--。
    そう言ったのは、アメリカのギャングのボス、アル・カポネだそうだ。
    アメリカで一九二〇年に制定された「禁酒法」が、この言葉を生んだのだ。政府が酒類の醸造と販売を禁止したことで、シカゴを縄張りにしたアル・カポネのギャング団が密造酒を裏取引し、暗黒街の犯罪が急上昇してしまったのである。
    時期も同じ一九二〇年、中国で阿片が禁止され、同じような事態が生じていた。阿片の密輸に火がつき、以前よりも却って大量の阿片が出回る事態になったのだ。

    P.182
    中国の近代は革命のオンパレードだと言ってもよいのである。
    孫文が清朝を倒して国民政府を打ち立てたのも革命だし、蒋介石が国民革命軍を率いて全国統一を目指したのも、たとえ個人的な野望が強かったとしても、一応は革命だろう。無論、中国共産党が国民党を倒し、一九四九年に中華人民共和国を誕生させたのは、革命の最たるものだった。
    歴史の教科書などに描かれる当時の革命は、まるで崇高な政治思想の対立ばかりのようだが、実際には、暴力と奪取と破壊によって社会秩序は乱れ、経済は破綻し、行政も機能しない「無法時代」である。
    革命家は、いくら口で理想や理念を叫んでも、収入がなければ戦えない。いきおい軍資金を求めて、手近な阿片へ走ることになる。

    P.214
    私の父は中国人で、母や日本人である。(中略)父と祖父は日中戦争の矢面に立って戦った敵同士である。(中略)日本と中国の間に、そんな時代がなかったらどんなに良かっただろうと思わない日はない。もしも中国を侵略したのが欧米列強だけで、日本が加わらなかったら、中国は早々と内戦を終結して、平和な国に順調に発展していただろうか。
    残念ながら、そうはならなかっただろう。国民党と共産党のいがみあいは、外敵・日本に対するよりも、さらに激しく執拗だった。日本が侵攻した後も、両者は日本をほったらかしにして戦った。そして日本が大陸の奥深くまで進行し、国家存亡の危機が叫ばれるようになったとき、ようやく手を取り合って「国共合作」を実現し、抗日戦争がはじまったのだ。その意味では、日本は国民党と共産党を結びつける「接着剤」の役目を果たしたことになる。現に、日本が敗戦して共通の敵を失ったとき、国民党と共産党は再び半目し合い、前にも増して激しい戦いを演じてみせたのだ。日本がいてもいなくても、中国の内戦は行き着くところまで行かなければ終わらなかったのである。(中略)ただ、日本にとって不幸だったのは、列強諸国に出遅れて、最後に単独で、かつ内陸部まで侵略したことである。最後の敵は、以前の敵より記憶に新しい。直接接した中国人が多ければ、鮮明な記憶も数多く残る。日本ばかりが未だに中国から目の仇にされる理由は、どうもこの辺にあるのではないだろうか。

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    投稿日:2022.09.23

  • polyhedron

    polyhedron

     中国の近代を,阿片を軸に見つめていく。コンセプトは興味深かったのだが,内容はかなり淡々としていていまいちぐっとくるものがなかった。阿片戦争の戦況推移とかあんまりいらなかったような気も…。
     しかし中国は阿片で酷い目にあってきたよね…。異教徒と見下され押し付けられた阿片は貴賤を問わず大流行。弛禁論・厳禁論の争いは,結局外圧(阿片戦争)で,厳禁論の完全敗北。軍閥や日帝や蔣介石も重要な財源とし,阿片が根絶されたのは中華人民共和国成立後のことだった。
     中共の阿片追放キャンペーンは功を奏したわけだけど,どうも内戦当時は共産党も阿片で軍資金を作ってた節があるそうだ。確証はないと言っているけども。しかし1950年からの禁煙キャンペーン期間中は,2年で800人以上も密売で死刑になったとか。やっぱりよほど強権的にやらないとダメなのね…。
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    投稿日:2012.07.03

  • bax

    bax

    [ 内容 ]
    阿片戦争から中華人民共和国成立までの約百年間の中国近代史は、阿片抜きには語れない。
    阿片という麻薬に、これほど蹂躙された国は、世界史の中でも例がない。
    中国人が麻薬としての阿片を知ったのはいつのことか。
    最初はどこから入ってきたのか。
    なぜ、超大国・清がいとも簡単に阿片に侵されてしまったのか。
    そして共産党と阿片の知られざる関係とは―。
    中国と阿片の長い歴史をひもとく。

    [ 目次 ]
    序章 煙館
    第1章 ケシの到来
    第2章 尼さんの阿片
    第3章 「新商品」に生まれ変わった阿片
    第4章 小説と現実の阿片商人
    第5章 千トンの白煙
    第6章 阿片戦争
    第7章 日本にはなぜ蔓延しなかったのか
    第8章 悪魔の密約
    最終章 毛沢東と阿片

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    [ おすすめ度 ]

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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]
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    投稿日:2011.05.22

  • ガネーシャ

    ガネーシャ

    アヘンは、アヘン戦争以前から吸われていたし、主に薬用として利用されていた
    李時珍の「本草綱目」にも漢方薬として登場する
    蒋介石や毛沢東また関東軍もアヘンを利用して資金を稼いでいた。
    アヘン流入のきっかけは、イギリスがどうしても茶がほしかったから
    林則徐がアヘンを全部燃やすのに30日間かかった
    関東軍も予算の25%はアヘンで賄っていた
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    投稿日:2009.08.09

  • ise

    ise

    阿片がどのように中国に入り、中国の歴史にいかに悪影響を与えたかを簡便に著した作品。簡便なため、深い追及はされてないが、軽く中国の歴史を知る上ではよい。

    投稿日:2005.09.28

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